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 ミステリは結局のところ大衆文学であり、学問的・文学的には顧みられることのほとんどなかったジャンルである。ところが時代は変わるもので、最近では大学でのミステリ研究も盛んになりつつあるらしい。まあ立教大学の乱歩研究等はよく知られている方だろうが、横溝正史の遺品等をどかっと●ン千万円で購入した二松学舎大学もまた、そういうムーヴメントを起こした大学のひとつであり、記憶にも新しいところだ。
 本日の読了本『横溝正史研究 創刊号』は、その二松学舎大学文学部教授の江藤茂博氏や山口直孝氏が中心となって発刊した、文字どおり横溝正史の研究書である。以下は目次。

浜田知明「金田一耕助の変遷」
「インタビュー 俳優 古谷一行」
〈論考〉
谷口 基 「金田一耕助の恋愛」
山本幸正 「金田一耕助の食生活」
生方智子 「金田一耕助のアメリカ」
中澤千磨夫「金田一耕助の探索」
栗田 卓 「金田一耕助の金銭感覚」
浜田知明 「金田一耕助の探偵事務所」
小松史生子「金田一耕助のパトロン」
廣澤吉泰 「金田一耕助の語り手」
小嶋知善 「金田一耕助の戦争体験」
山前 譲 「金田一耕助の探偵方法」
鷲田小弥太・中澤千磨夫・江藤茂博「鼎談・観てから読む横溝正史」第一回『三本指の男』『本陣殺人事件』
二松学舎大学所蔵・横溝正史旧蔵資料紹介「『悪霊島』取材ノート」
「横溝正史ネットワーク」第1回 佐々木重喜氏
「横溝正史年譜事典〈1902―1921〉」
「横溝正史著書目録」
「横溝正史参考文献目録」

 溝正史研究創刊号

 とりあえずは「創刊号」は「金田一耕助特集」ということで、さまざまな切り口・テーマで金田一耕助に対するアプローチが為されている。年譜や著書目録、参考文献目録といった資料類も充実しており、まずは十分な内容ではなかろうか。おそらくは探偵小説研究家として知られる浜田知明氏がかなりサポートしているのだろう。
 このほか目次からではわからないが、実は横溝正史が十四歳の頃に書いた雑誌投稿の作文「宿題を怠った日」が、年譜事典に載っているのは要チェック。ファンならずとも気になるでしょう、これは。

 ただ、少し注文をつけさせてもらうと、二松学舎大学があえて音頭をとるからには、既存とは違った文学的・社会学的なアプローチがもっとほしかったところだ。
 例えば〈論考〉という名のエッセイ群。いや、内容は十分楽しいし、テーマに沿って多くの著書をあたり、裏をとってまとめあげるのが大変なのはわかっている。わかっちゃいるんだが、ううむ、こういう企画だと一般のミステリ関連書籍でもできるわけで。
 また、古谷一行へのインタビューや「鼎談・観てから読む横溝正史」も記事自体は別に悪くはないが、わざわざ原典を離れて二義的な映像媒体の話を載せる必要があるのかという疑問。せめて載せるなら、ビジュアライズ特集と銘打った次号ではないのか。
 これが普通のミステリ評論書ならここまで注文はつけないのだが、大学の研究誌を一般にも公開するという、しっかりした出版意図がある本なのである。変に読者ウケなど考えず、これまでにないきっちりした研究内容で勝負してもらいたいものである。>いったい何様(笑)

テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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