ラリー・バインハートの『図書館員』、下巻も読了。
合衆国大統領選に絡む陰謀、そしてそれに巻き込まれた図書館員の活躍を描いた作品だが、バインハートのこれまでの作品同様、バランスの悪さが気になる作品であった。
上巻の読了時には、下巻でどこまで巻き返せるか、なんてことも書いたのだが、残念なことに低調なまま終了。

まあ、バランスの悪さ、というだけでもアレなので、いくつか例を挙げておくと。
ひとつは主人公である図書館員の一人称と三人称を併用していること。それぞれのいいとこ取りを狙ったのだろうが、結果的には読みにくいうえにサスペンスも削がれ、まったくもってデメリットしかない。
また、キャラクター造型がけっこう適当。特に目立つのは、劇画化が極端すぎること。元々ペーパーバックだから派手にキャラクターを作るのはわかるし、ある程度ステレオタイプなのは仕方ないとしても、現職大統領をここまでひどく書くのはどうかと思うし、国家安全保障局の局員も、汚れ仕事専門とはいえ、サイコキラー真っ青の殺人狂に仕立てたり、なんか現実離れしすぎている。
そのくせ主人公は他の登場人物に比べるとかなり影が薄い。せっかく図書館員という職業をセレクトしたのだから、もう少し専門知識を活かした活躍をさせてもいいだろうに、これが恐ろしいくらいしょぼい役回り。
ストーリー展開も御都合主義がひどい。要所要所で主人公を助ける人々がこぞって登場してくるし、アマチュアであるはずの主人公たちも、捜査&殺しのプロを相手に健闘しすぎ。そして本書のメインの仕掛けともいえる大統領選に隠された陰謀だが、これがまた相当に無茶なネタを披露してくれる。
ちなみに後味も決して良いとはいえず、いやあ、翻訳物でここまでダメダメな本も久しぶりに読んだ気がする。