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 エミルオンから『コナン・ドイル小説全集第23巻シャーロック・ホームズの回想』が届く。月報(のようなもの)によると、訳者の体調が優れないようで実に心配である。読者としてはもちろん全集を完結してはほしいのだが、倒れてしまっては元も子もない。無理をされず、思い切って半年とか一年とか休んでみてもよいのではないだろうか。くれぐれもご自愛下さい。


 アントニー・レジューンの『ミスター・ディアボロ』を読む。
 著者はこれまで主にサスペンスやスパイ物を中心に書いている作家だ。かつて二見文庫からスパイ物の『シャーマン迎撃戦線』が刊行されているが、日本ではほとんど無名といってよいだろう。そんな著者に唯一の本格ミステリがあり、幻の傑作との触れ込みで先日発売されたのは、まだ記憶に新しいところ。あまり過大な期待をかけても、とんだいっぱい食わせ物の可能性もあるわけだが、訳者はレオ・ブルースの紹介や翻訳等で知られるあの小林晋氏。ついつい期待してしまうのは仕方なかろう。

 ミスター・ディアボロ

 こんな話。
 学会でのディナーの席上、この大学でかつて起こったという不吉なエピソードが披露された。それは大学の裏手を通る<悪魔の小道>で、ある学生がマント姿の怪人と遭遇し、それが原因で首を吊ったというもの。怪人は悪魔を意味する“ミスター・ディアボロ”と名付けられ、この大学での伝説として語り継がれた。
 ところが、そのエピソードが披露された直後、そのミスター・ディアボロと思しき人影が中庭に現れた。唖然とする一同を後に、ミスター・ディアボロは悪魔の小道に飛び込み、忽然と姿を消す。さらにその夜、密室で死体が発見されるに及び……。

 まさにディクスン・カーを彷彿とさせるようなオカルト趣味溢れる本格物。冒頭の怪奇趣味やたたみかける事件、徐々に明らかになる被害者の人間像、中盤の地道な捜査、そしてワトソン役+名探偵の組み合わせなどなど。1960年という微妙な時代にここまでクラシックかつオーソドックスなミステリを、ジャンル違いの作家が残していることにまず驚いた。
 しかも単にクラシックなだけではない。作中の謎を支える二つの密室は、いろいろと前例あれども、雰囲気作りの巧みさもあって、うまく自分のものにしている印象。謎解き関係もしっかりしており、あとで伏線個所をいくつか読み返すとこれがまあ実に丁寧な仕事ぶり。ぶっちゃけオリジナリティという点では弱いし小粒な感もあるのだが、非常にバランス良くまとまっており、素直に楽しめる一冊である。変にドタバタにもっていかない分、カーより好感度大かも(笑)。
 とりあえずカー好きなら読んでおいて損はない。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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