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 本日の読了本はA・フィールディング『停まった足音』。かつてヴァン・ダインが英国ミステリ・ベスト11に選び、日本では幾度となく刊行予定がなされながら、結局現在に至るまで翻訳されることの無かった幻の名作である。論創社は本当によくやっている、うん。

 屋敷の一室で、イスに腰掛けたまま死んでいるタンジ夫人が発見された。傍らには拳銃が転がり、弾丸は心臓を貫いていた。争った形跡がないことなどから、警察は当初、事故か自殺と考えていたが、関係者の行動に不審な点が見られたことから、ロンドン警視庁のポインター警部が事件に乗り出すこととなった。

 黄金時代の作品らしい、極めてオーソドックスな作りの本格探偵小説。確かにヴァン・ダインが好みそうな緻密な構成で、犯人の意外性も十分である。
 特に面白く感じたのは、捜査の中心となる警視庁のポインター警部、地元警察のハヴィランド署長、新聞記者ウィルモットの三人のやりとり。普通ならこの組み合わせだと、名探偵役は一般人の記者がやりそうなところだが、(クイーンやファイロ・ヴァンスの役どころですな)著者はそれを警察側の人間すなわちポインター警部に割り振っている。保険会社からの依頼もあって強固に自殺説を主張するウィルモットに対し、ポインター警部がどのようにそれを反駁していくか、肝はほぼその点にあるといってよい。
 だが、逆にそのせいで物語全体の半分以上が推理や議論に費やされ、どうしても地味な印象は抱かざるを得ない。加えて探偵役のポインター警部ももうひとつ華に欠けるのが残念だ。終盤の大きな動きはなかなかスリリングだし、サプライズも十分なので、そこまでを退屈させずに読ませる工夫があればよかったのにと思う。惜しい。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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