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 ここのところPC系ブログのようなネタが続いているので、久々に読書感想をば。
 ものはマルセル・F・ラントームの『騙し絵』。「第二次大戦末期に、捕虜収容所でフランス人捕虜のミステリ・マニアが書き上げたという本格ミステリ」という紹介文がまず目を惹く。
 ううむ、あのドイツですら、戦時中は捕虜にこれぐらいのことは許していたわけだから、なんとも彼我の差を感じてしまう。日本なんて戦時中はミステリを書くことそのものが禁止されていたんだもんなぁ。文化や民族性の違いと言えばそれまでなんだろうが……ま、それはまた別の機会に。

 過去、幾たびも盗難の危機を乗り越えてきたブイヤンジュ家のダイヤモンド<ケープタウンの星>。その正当なる相続人アリーヌが科学者マクシムと結婚することになり、結婚式の当日、屋敷で来賓に<ケープタウンの星>が公開されることとなった。そのため世界各国の保険会社は自国の警察官を派遣、なんと六カ国の腕利き警官がダイヤの警護にあたった。しかし、その厳重な警備にかかわらず、ダイヤは偽物とすり替えられてしまう。いったい、誰が、どうやって?

 騙し絵

 1946年に発表された幻のミステリ、しかもフランスでは希有な本格派、さらに作者はミステリマニアであり、作中には「読者への挑戦」をも盛り込むという、実に本格ファンの琴線に触れる作品である。
 ま、確かにこれだけ稚気にあふれる作品が書かれていたという事実に、どうしても評価は甘くなってしまいがち。だからといって内容自体が傑作かというと、ううむ、そこまでには至っていないんではなかろうか。
 ダイヤの消失、飛行艇の消失、六人の警官、いかにも怪しげな間取りの屋敷などなど。ミステリマニアの作者に相応しく、くどいぐらいにギミックをぶちこんでくる。確かにインパクトはあるし、文体や構成など、全体的なイメージもフランスミステリっぽいところがなく、かなり英米の本格を研究した節はある。
 だがいかんせん、やりすぎの感は拭えない。
 屋敷や六カ国の警官、某登場人物の秘密など、ネタとしては楽しいが、ひとつずつを吟味すると粗すぎるのである。物理的には可能だけれど、現実味があまりにない。そこで一気に醒めてしまう。フィクションとはいえ、ミステリである以上越えてはならない線があるわけで、作者はそれを理解していないように思えるのだ。

 過剰なまでのサービス精神は見上げたものだが、プロットも含めてもう少し練りこみ必要、絞り込む必要はあったのではないか。Amazon風にいうなら甘めで★★★☆☆。マニアのいい面と悪い面が両方出た作品ともいえるだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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