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 早川書房から「現代短編の名手たち」という文庫のシリーズが発表されたとき、アレッと思ったのが、ローラ・リップマンの名前だった。
 失礼ながら他の作家に比べて実力では一枚落ちる感もあったし、そもそもこれまで日本で刊行されたものはすべて長篇。短篇作家というイメージはまったくない(雑誌ではいくつか短編も発表されていたようだが)。
 しかも、これまでの文庫のカバーイラストの雰囲気などから、彼女の作風は女性を主人公にした軽ハードボイルド(例えばジャネット・イヴァノヴィッチあたり)だと勝手に思っていた。要はキャラクターで読ませるタイプであり、よもや”短編の名手”だとはまったく思いもしなかったわけである。

 ところが。当たり前のことではあるが、やっぱり本は読んでみないとわからない。
 このローラ・リップマンの短編集『心から愛するただひとりの人』が実に良いのである。
 表面的にはクライムノベルの雰囲気。主人公は主に女性が多いけれど、年齢も境遇もさまざま。ただ比較的、共通しているのは、彼女たちが人生にあがいているところである。
 その行きつくところをローラ・リップマンは適度なシリアスさと適度なユーモアで語ってみせる。少しばかりお下品な内容だから顔をしかめる向きもあろうが、その描写は実に豊かで、読む者をまったく飽きさせない。

 ただ、これだけの書き手なら他にもまだ候補はいるはずだ。リップマンが良いのは、そういうクライムノベルの体裁をとりつつも、最後はしっかりミステリとして落としてくれるところなのである。そこが大きなポイント。
 若干、作品のバラエティには欠けるきらいもあるが、総じて質も高く、これまで食わず嫌いだった人も、本書は迷わず読むべきである。おすすめ。

 心から愛するただひとりの人

第一部 野放図な女たち
The Crack Cocaine Diet (Or: How to Lose a Lot of Weight and Change Your Life in Just One Weekend)「クラック・コカイン・ダイエット(あるいは、たった一週間で体重を激減させて人生を変える方法)」
What He Needed「彼が必要だったもの」
Dear Penthouse Forum (a First Draft)「拝啓《ペントハウス・フォーラム》さま(第一稿)」
The Babysitter’s Code「ベビーシッターのルール」
Hardly Knew Her「知らない女」
Femme Fatale「魔性の女」
One True Love「心から愛するただひとりの人」

第二部 ほかの街。自分の街ではなく
Pony Girl「ポニーガール」
A. R. M. and the Woman「ARMと女」
The Honor Bar「ミニバー」
A Good Fuck Spoiled「不始末の始末」

第三部 わたしの産んだ子がボルチモアの街を歩く
Easy As A-B-C「お茶の子さいさい」
Black-Eyed Susan「ブラックアイドスーザン」
Ropa Vieja「ロパ・ビエハ」
The Shoeshine Man's Regrets「靴磨き屋の後悔」
The Accidental Detective「偶然の探偵」

第四部 女を怒らせると
Scratch a Woman「女を怒らせると」


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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