先日の人間ドックでコレステロールの数値があまり良くなかったため(といってもここ数年ずっとなんだけど)、ついにジョギングを始めることにする。とりあえず一日3kmぐらいのペースでスタート。あまり続く自信はないのだけれど、ここで宣言しておけば少しは続くかな(苦笑)。
J・B・プリーストリーの『夜の来訪者』を読む。
プリーストリーはイギリスの劇作家で、本作も戯曲。本国はもとより日本でも度々上演されるぐらい有名な作品である。ベースは社会派のドラマであり、左翼的思想が色濃く出てはいる。しかしながら、それを表現するために彼がとったのは非常にミステリ的な手法であり、味つけだった。
舞台は裕福な実業家の屋敷。経営者とその妻、娘、息子、そして娘の婚約者が揃って食事をとっている。今夜は娘の婚約を祝う場であったが、そこへ警部を名乗る男が訪ねてきた。彼は今夜、一人の貧しい娘が自殺したことを告げ、そして家族の一人一人が、その死に深く関わっていたことを暴いてゆく……。

おお、予想以上にいいな、これ。
そこらのミステリ以上にミステリらしいとは聞いていたのだが、まさかここまでのものだとは。一家を訪ねてきたグール警部(これも意味深な名前)が家族を一人ずつ追い詰めていくシーンは、ドキドキ感と知的なカタルシスの両方を同時に充たしてくれる。
著者としては、社会主義的な部分をこそ感じ取ってほしいのだろうが、これだけ面白いとかえってそれは難しかろう。むしろ人間の心の奥底に横たわる闇の部分、エゴといってもよいだろうが、その描き方が非常に興味深かった。警部が去った後で、逆に警部の追求を論破し、なかったことにしようとする家族たち。このシーンがあることで、本作はよりミステリ的になり、しかもドラマとしての深みが増してくる。何よりラストが活きる。
警部の正体は果たして何であったのか……。オススメ。