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 早く平常業務に戻したいところだが、今度は原発のご機嫌がよろしくないときた。
 取引先でもほとんどの会社が15日以降は自宅待機を指示しており、さすがに各社とも放射能相手に無茶はできないようだ。なんせどう展開が転ぶのか一般人ではとても判断できるものではないし、起こってからでは遅いということで、勤務先でも早々に自宅待機を決定。
 それでも急ぎの仕事を片付けなければならない者もいるので、立場上それにつきあって全員退社の確認をしてからこちらも帰宅する。それが15日の夜10時頃。びっくりしたのは昨日の電車が部分停電の影響で殺人的ラッシュだったのに、その日はガラガラだったこと。日中から車や人通りも少なかったし、閉まっている店も多く、首都圏がかなりゴースト化しているのは間違いない。
 停電ぐらいなんぼでも協力するから、原発の脅威だけは一刻も早くくい止めてほしいものだ。


 というわけで本日は、自宅にてときどき会社の業務連絡やらなんやらをやりながら、久々に本の感想を書いてみる。
 ものは『宮原龍雄探偵小説選』。おなじみ論創ミステリ叢書からの一冊。

 宮原龍雄は戦後の探偵小説誌『宝石』でデビューし、その緊密なプロットとトリックによって、非常に印象的な本格探偵小説を著した作家である。ただ、活躍した時期が短いこともあって、残念ながらこれまでまとまった著書がなく(一部の同人誌を除いて)、わずかに読めるのはアンソロジー等に収められた短編数作といった状況であった。
 今回、こうして論創ミステリでまとめられるのは誠に慶賀の至りである。やれうれしや。

 宮原龍雄探偵小説選

創作篇
「三つの樽」
「新納の棺」
「不知火」
「ニッポン・海鷹」
「南泉斬猫」
「瓢と鯰」
「髭のある自画像」
「雪のなかの標的」
「世木氏・最後の旅」
「ある密室の設定」

評論・随筆篇
「『動機のない動機』の魅力」
「本格派の文学理論」
「惨殺された本格派」
「“伝奇”は虚構ではない―探偵小説の構成に関する一考察」
「新・本格派への待望―芭蕉は一人だけで沢山だ」
「本格派の陰謀―戦後派の探偵小説観」
「乱歩・文学の非文学」

 収録作は以上。目次だけ見るとずいぶん評論・随筆篇の割合が多いように思えるけれど、ページ数としては少なく、ほぼ短編集と思ってよい。このなかで比較的最近のアンソロジーにも採られ、知られている作品となると、「三つの樽」「新納の棺」あたりだろう。あとは鮎川哲也監修・芦辺拓編で光文社文庫から出た『絢爛たる殺人』に収められた「ニッポン・海鷹」ぐらいか。
 で、あらためて読んだ感想はというと、思った以上の幅の広さ。
 これまでは「三つの樽」や「新納の棺」の影響で、マニアの書いたガチガチの本格としてのイメージしかなかったのだが、その他の作品は思いのほかローカル色が強く、ものによっては伝奇小説的な雰囲気すら漂わせるものもある。しっかりと世界観を構築しているなという印象。また、メロドラマというと聞こえは悪いが、意外にドロドロした人間関係を背景にしたものもあり、それが動機となっている事件も少なくない。
 得てして本格マニアが描く作品はそれらの点を疎かにしがちである。だが宮原龍雄はそういうところにも注力しているのが好感度大で、結果として、それがバラエティ豊かな作品群につながっているのであろう。宮原作品はまとめて読んだ方が楽しめると感じた次第だ。

 ただ、もともと理詰めでいくタイプである。プロットやロジックはきっちりしていても、それらが味つけとしっくり馴染んでいない場合も多い。盛り込みすぎ、という部分もあるのだろうか。作品によってはチグハグな印象を受けるのもまた確かなのである。
 あと、これは個人的な好みという前置き付きで、刑事や検事が、有名な推理小説のトリックやネタを普通に話しながら捜査を進めるのは、さすがに興醒めなので止めてほしかった。というか、単なる読者迷惑だろ。

 というように欠点も決して少なくはないのだが、とりあえず探偵小説好きには堪えられない一冊。今後は日本の探偵小説を語る上でも外してほしくないと思うし、この圧倒的ボリューム感を一度は体験しておくべきだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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