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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ロバート・L・フィッシュ『密輸人ケックの華麗な手口』(ハヤカワ文庫)

 本日の読了本は、ロバート・L・フィッシュの『密輸人ケックの華麗な手口』。
 ロバート・L・フィッシュと言えば、何といってもシャーロック・ホームズのパロディであるシュロック・ホームズ・シリーズが有名だが、他にも〈殺人同盟〉やホセ・ダ・シルヴァ警部、クランシー警部補など、バラエティに富んだシリーズを残している。本作もそんなシリーズ作品のひとつで、密輸人ケック・ハウゲンスを主人公とする短編集。
 何を今さらの一冊だが、ま、それはそれとして収録作品から。

Merry Go Round「ふりだしに戻る」
The Wager「一万対一の賭け」
A Matter of Honor「名誉の問題」
Counter Intelligence「カウンターの知恵」
The Collector「コレクター」
Sweet Music「バッハを盗め」
The Hochmann Miniatures「ホフマンの細密画」

 密輸人ケックの華麗な手口

 犯罪者を主人公とする物語は数多いが、ケック・ハウゲンスの専門は密輸というところがちょっと珍しい。
 税関吏が目を光らせるなか、ケックはどのような方法で宝石や美術品などを密輸するのか。読みどころはもちろんそこに尽きるのだが、実はほとんどの作品で、ラストにもう一捻りオチをつけてくれるのがミソ。このオチのつけ方が密輸の方法以上に鮮やかで、いってみればキレで読ませるミステリ。
 特に、頭の方に収録されている「ふりだしに戻る」や「一万対一の賭け」などは、まだこちらがパターンを掴み切れていないこともあって、「あ、そうくるのか」と著者の仕掛けに終始ニヤニヤ。正にページをめくる手が止まらない。
 この感じはエドワード・D・ホックの怪盗ニックを彷彿とさせるが、ユーモア溢れるタッチなども似ているし、ニックのファンであれば本作も十分楽しめるはず。その逆もまた然り。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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