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 サイモン・カーニックの『ノンストップ!』を読む。
 主人公は平凡なサラリーマンのトム・メロン。大学講師の妻、そして二人の子宝にも恵まれ、幸せに暮らしている。そんなある日の午後、彼の元へ1本の電話がかかってきた。声の主は、久しく会っていない親友のジャック。だが、会話するひまもなく、電話の向こうからはジャックの悲鳴が聞こえてくる。やがて、トムの住所を告げるジャックのかすかな声。そして静寂。ジャックの家はここから車で十五分の距離。ただならぬ気配を感じたトムは子供を連れ、急いで家を出るが……。

 ノンストッフ#12442;

 昨年の年末ベストテンも賑わせた話題作。タイトルどおり読み出したら止まらないというスピード感が売りの一冊。
 だが、実際に本書を読み終えて、いわゆるスピード感、疾走感が本書のセールスポイントなのかというと、それは少々違うのではないかと感じた。
 例えば、本書は珍しいことに、主人公の一人称と、三人称のパートが交互に語られるスタイルをとっている。視点が変われば流れは当然そこで途切れてしまうので、多重的に事件を見せてゆく効果はあっても、決してスピード感としてはプラスにはならない。また、暴力に関しては素人の主人公だから、どうしても自ら積極的に動くことはない。あくまで周囲に振り回され、濁流に呑まれて右往左往する展開なのだ。
 というわけで言われるほどのスピード感は、実はそれほど感じなかった。ただし、いくつものエピソードを畳み掛け、広げた風呂敷を力でまとめてしまう手際は見事。スピード感よりはむしろプロットの組み方を評価したいところで、決して退屈するようなことはない。ラストの二転三転も心地よいし、十分に楽しめるエンターテインメントに仕上がっているといえるだろう。

 欲をいえば、背後に潜む黒幕や事件の背景もそのものがけっこう重い割に、さらっと流されているのが残念だった。
 基本的に本書はバリバリのエンターテインメントであり、軽さが身上の読み物である。だからヘビーな背景などを書き込めば、逆にその良さが相殺される可能性もあるので一概にはいえない。いえないのだが、ただ、それならそれでもっとライトな設定でもよかったはずである。あまり軽く扱うネタでもなかったので、余計に気になった次第。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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