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 『二流小説家』で一躍人気作家となったデイヴィッド・ゴードンの第二作『ミステリガール』を読む。

 これまで書いたものがさっぱり陽の目を見ることがない、小説家志望のサム・コーンバーグ。それでも妻ララの献身的な愛に支えられてはきたが、勤務先の古書店がつぶれるに至り、ついにはララからも別れ話を切り出されてしまう。焦ったサムはまずは仕事をと、就職活動を始めた。
 その彼を雇ってくれたのは、意外にも私立探偵。しかも自宅に引き籠もって外には一歩も出ないという変人でもあった。訝しむまもなく最初の調査活動に駆り出されるサム。その内容とは、とある女性の監視であった。謎めいたその女性=ミステリガールの動向を探るサムだったが、いつしか事件の渦に巻き込まれてしまう……。

 ミステリガール

 面白いことは面白い。
 序盤はコミカルな軽ハードボイルドといったテイストだが、徐々に物語は破天荒さを増し、エキセントリックなキャラクターの造型も相まって前作以上のハチャメチャさである。ミステリガールが物語の中心には据えられているが、これもどうやら一人を指すのではなく、魅力的?なミステリガールが次々登場。彼女らに引っ張られるように、ストーリーが転ぶ転ぶ。
 最終的な真相だけをとってみればそれほど無茶な話でもないのだが(いや、そうでもないか笑)、とにかくプロットが捻りまくりで、よくぞここまでまとめたよなぁという印象。この着地点を前半で予測できる人はそうそういないだろう。

 とはいえ凝りすぎるのが玉に瑕。基本は主人公サムの一人称だが、これに回想やら何やらで他のキャラクターの一人称も織り込まれる。そしてそれぞれが主義主張から生い立ちに至るまでをだらだら語るので、冗長なイメージは拭えない。
 前作でもわかるように、ただでさえ本編とは関係ない遊びが多い著者である。本作ではとりわけ映画論や映画ネタが豊富に盛り込まれており、それ自体は面白いのだがストーリーへの組み込み方が半端ではないので、興味のない人には辛かろう。
 また、やりすぎ詰め込みすぎの結果として、強引なところが目につく。主人公はともかくその他の主要キャラクターの言動にもあれっと思うところがちらほら。

 とにかく自分の思っていることをすべて詰め込みたくてしょうがないんだろう。前作に比べるとバランスは悪いけれども、デイヴィッド・ゴードンの本領はむしろこっちなのかもしれない。
 ただ、もう少しスッキリとまとめてくれればさらに良くなると思われるだけに、次作も期待したいところである。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本は、デイヴィッド・ゴードンの『二流小説家』。
 題名どおりの二流小説家を主人公にしたミステリ。売れない中年作家のハリーはいくつものペンネームを使い分け、ミステリからSF、ファンタジーにポルノまで書き散らかす毎日。しかし、それでも収入は安定せず、恋人には逃げられ、ついには中学生の家庭教師で食いつなぐ羽目に陥っている。
 そこへ降ってわいたのが、連続殺人で逮捕された囚人ダリアン・グレイからの手紙。今や死刑を待つだけのグレイは、なんとハリーのポルノ小説が気に入ったので、彼の手記を書く許可を与えるというのだ。グレイの犯行にはまだまだ不明な点があり、彼がすべてを話せばベストセラーは間違いない。しかも取り分はフィフティフィフティ。
 ハリーは当然それを引き受けようとするが、ただし、この話にはひとつだけ条件があった。グレイを主人公にしたポルノ小説を書けというのだ……。

 二流小説家

 巧い。これがデビュー作とは思えない技術。
 上の粗筋はほんの触りで、この触りだけでもかなり変な話なのだが、全体の味つけ、ミステリとしての仕掛けも悪くない。少々ハメを外しすぎの嫌いもあるが、まあデビュー作ということで力も入っていたのだろう。だがこれだけ読ませてくれれば十分である。

 ありがちといえば実にありがちなスタイルなのだ。口先だけは達者な文系優柔不断男子が、エピソードを通して一皮むけるというストーリー。典型的な青春小説・成長小説のスタイルを、そのままミステリに用いているのがミソ。
 とはいえミステリにだって、それぐらいのパターンは珍しくも何ともない。本作が面白いのは、主人公を冴えない中年男、しかも小説家にした点だ。ミステリのみならず出版業界や売れない作家の生態、ジャンル小説までもネタにする。蘊蓄も満載。特に主人公ハリーがこれまでの半生をぽつりぽつりと語ってゆく前半は秀逸で、このまま最後までいってもいいんじゃないかと思ったぐらい。語り口も軽妙で、ニコルソン・ベイカーあたりを思い出してしまった。

 何より好感が持てるのは、作者がすごく楽しそうに書いていることだ。
 それが最も表れているのが作中作。ハリーがペンネームを駆使して書いている様々な小説、それこそミステリやSFからポルノに至るまでを、実際に載せているのである。
 初めは何か本筋と密接な関係があるのかと思って読んでいたのだが、どうやらほぼ意味はないようだ。つまりは作者の遊びである。前述した「ハメを外しすぎ」の部分なわけだが、本書全体がまあ壮大なホラ話と言えなくもないので、個人的にはよしとしたい。
 ミステリとしてはやや弱いという意見もあるようだが、ま、これだけサービス精神溢れる話はそうそうないし、ぜひ興味のある向きはご一読を。今後の活躍にも期待したい作家である。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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