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 ジョン・J・ラムのおしどり探偵シリーズ『偽りのアンティークベア事件』を読む。
 怪我のために強盗殺人課を引退した元刑事ブラッドリー・ライオン。テディベア作家の妻アシュリー。こよなくテディベアを愛する二人が、レメルケンプという架空の町を舞台に活躍する様を描くミステリー。他にもシングルマザーの保安官ティナや元ソ連のスパイという経歴をもつ飲み屋の主人セルゲイなど魅力的なレギュラーを揃え、基本的にはキャラクターで読ませるタイプのシリーズである。

 本作では二人の家に泥棒が入るところから幕を開ける。泥棒は貴重なアンティークベアを盗んで逃走したが、大した手がかりもなく数週間が過ぎていった。
 そんなときレメルケンプに日本のヤクザが現れる。ブラッドリーはたまたまヤクザが地元の歴史博物館を訪ねていくことを知り、不審に思ってあとをつける。そして博物館で見たものは、巨大な食器戸棚の下敷きになった館長の姿であった……。

 偽りのアンティークベア事件

 上で書いたように、本シリーズの魅力はキャラクターによるところが大きい。本作でもレギュラー陣以外に、日本人ヤクザがいい味を出している。なんせこのヤクザ、趣味がテディベア収集であり、手下には投資のためと偽ってせっせとテディベアを買い集める。ブラッドリーと対決するまもなくベア談議に花が咲くところは何ともいえない可笑しみがある。テディベア蘊蓄も日本に関係したネタが多く、テディベアファンには嬉しいところだろう。
 一方のレギュラー陣ではティナとセルゲイのロマンスが生まれそうな気配があったり、シリーズファンへのサービスも忘れてはいない。

 もちろん事件の骨子が頼りなくては、いくらキャラクターが良くてもオススメしにくいのだが、本作ではオーソドックスな警察小説のスタイルをきちんと踏まえており、ミステリとしての破綻はない。これでもう少しサプライズの要素が強ければと思うのだが、まあ、この手のミステリにそれを望んでも仕方ないか。
 とりあえず前作『天使のテディベア事件』がいまひとつだっただけにひと安心。ただ気になるのは次作がサンフランシスコを舞台にしているところだ。前作もそうだったのだが、せっかくのシリーズの流れを分断するような展開はどうなんだろう。ちょっともったいないね。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ジョン・J・ラムの『天使のテディベア事件』を読む。
 元サンフランシスコ市警強盗殺人課の刑事ブラッドリー・ライオンと、その妻でテディベア作家のアシュリーが活躍する「おしどり探偵」のシリーズ第二弾。
 コージーの範疇ではあるが、主人公ブラッドリーがマッチョタイプなうえに軽口もたたき、加えて下ネタも意外に多いので、ノリとしては軽ハードボイルドっぽいイメージ。個人的には全然OKだけれど、女性ファンはひいてしまうかもなぁ(苦笑)。まあ、その辺も含めてキャラクターたちのやりとりが読みどころといえるシリーズである。

 本作は二人の地元ヴァーニニア州ではなく、お隣メリーランド州にあるボルチモアが舞台。テディベア・ショーに参加するためやってきた二人が、御当地で事件に遭遇する。
 ことの起こりは、有名なテディベア作家の夫婦喧嘩。夫婦喧嘩にしては度を超している、その場に居合わせたブラッドリーはついつい止めに入ったが、夫にはひどく逆恨みを受けてしまう。やがてその作家夫婦を盗作で告発する女性も現れ、ますます不穏な気配が。そして案の定、悲劇は降りかかり、挙げ句はブラッドリーが容疑者に……。

 天使のテテ#12441;ィヘ#12441;ア事件

 上で書いたように、読みどころはブラッドリーとアシュリーはじめとする登場人物たちのやりとり。アメリカのコメディドラマによくあるような、ジョークをジョークで返す台詞のラリーが楽しいわけで、オヤジギャグレベルが多いのはご愛嬌。
 本作では前作と舞台が変わっているので、前作でレギュラー確定かと思われた人たちがいきなり欠席しているのは残念だけれど、マルヴェイニーという偏屈女性警部補や、ブラッドリーに激しく迫る審査員リーサなど、強烈な面々が脇を固めている。

 あとはもう少しミステリとしての充実を期待したいところだが、世の中そう上手くはいかない。
 前作はミステリ部分もそれなりに力が入っていたように思うのだが、本作はずいぶんと謎も浅めだ。事件の真相についても、捜査で判明するのではなく、関係者から延々と話を聞くことで明らかになったりするのは困りもの。
 あと、主人公ブラッドリーが警察に協力するのはいいとして、指揮まで取るのはまずいよなぁ(笑)。警察にしても捜査が杜撰すぎるとか強引すぎるとかリアリティ無視しすぎ。場面場面の面白さを優先するあまり、いろいろなものを犠牲にしているのが残念だ。

 ううむ、シリーズ一作目『嘆きのテディベア事件』のレベルを維持してくれればいいのだが、これではいかんなぁ。
 とりあえず次作では日本人ヤクザが登場したり、レギュラー陣も復活するということなので、面白そうは面白そうなのだが、やはり不安はミステリ要素。次が正念場かな。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ジョン・J・ラムの『嘆きのテディベア事件』を読む。
 普段はコージーミステリのようなほのぼのとした路線の話はあまり読まないのだけれど、これはテディベアをネタにした作品ということで興味をもった一冊。
 というのも、実は管理人の嫁さんがそちらの趣味(集める方も作る方も)にどっぷり浸かっていて、その影響で管理人までテディベアについては少々うるさくなってしまったからである。そう、要は本作の主人公、ブラッドリー・ライオンとその奥方アシュリーと同じパターンである。

 こんな話。主人公は元殺人課の腕利き刑事ブラッドリー・ライオン。だがある事件で足を撃たれ、その怪我の影響で刑事を続けることができなくなり警察を退職。今はテディベア作家の妻アシュリーと、妻の実家がある田舎町でのんびり暮らす毎日だ。
 だが、そんな平和そうな田舎町にも事件は起こる。テディベア・フェスティバルに出店するため準備を進めていた二人の家で、死体が発見されたのだ。ブラッドリーはいくつかの状況から殺人と判断したが、なぜか保安官は事故と断定。さらにはブラッドリーに対して圧力や警告が発せられるに至り、ブラッドリーはアシュリーと共に捜査に乗り出してゆく。

 嘆きのテテ#12441;ィヘ#12441;ア事件

 いわゆるコージーとは違い主人公がマッチョ系の男性、しかもハードボイルド風な語り口と展開なので、最初に警戒(苦笑)していたよりは思いのほか馴染みやすく、それなりに楽しめる一冊だった。
 ハードボイルド風と書いたが、実際、謎解き要素は薄く、関係者への聞き込みから様々な事情や事実が浮かび上がってくるという展開。良くも悪くも登場人物たちの掛け合いで読ませるといった感じである。推理ドラマというよりは人情派刑事ドラマと思っていただければわかりやすい。
 ただし、登場人物たちの肉づけや掘り下げにそれほどの深みがあるわけではない。あくまで軽い読み物としてのレベルである。悪い奴は悪そうに、いい人はあくまで善人に描写する。とはいえ、だからこそ魅力的に思えるキャラクターが多いのも事実。主人公などは元刑事だけあってかなりタフな言動も多いのだが、同時に奥さんには今でもメロメロの甘々であり、このギャップが楽しい。
 
 なお、謎解き要素は薄いけれど、推理や捜査はきちんと理詰めで進めていくし、警察捜査に関する蘊蓄なども十分盛り込まれており、そういう意味では下手な警察小説よりよほどしっかりしている。
 基本はそれでもコージーだとは思うけれど、ハードボイルドや警察小説のテイストがあったり、しかもネタはテディベアというような、こういうアンバランス加減が、この作者の個性なのかなとも思った次第。ただ、解説を読むと作者自身が元警察官で、かつ奥さんがテディベアマニアということだから、これはそういう線を狙っているというより、作者自身の体験や知識を素で出しているだけっぽいけれど(笑)。


 最後に野暮を承知で重箱の隅を突いておくと……。
 本書に採り上げられている「嘆きのテディベア」というのは実在するのだが、その最大の特徴は、黒目の縁が――本来なら白目の部分――これが赤くなっていることにある。このテディベアはタイタニック号の犠牲者追悼のために作られたもので、その犠牲者を思って泣きはらしたために目が赤くなっているという設定。だから本書のカバー絵のクマの目が、黒目に黄色い縁というのは大きな間違いである。
 もうひとつ。206ページで、ブラッドリーが帰宅すると愛犬のキッチがボディスラムで出迎えてくれるという記述。「ボディスラム」はプロレスの技で、相手を抱えこむようにして持ちあげて投げるという技。だから犬がこの技で主人公を迎えるというのは流石にない(笑)。おそらく犬が喜んで体ごと飛び込んできたという意味だろうから、これは「ボディアタック」あたりが正解だろう。これは原文が間違っている可能性もあるかも。


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