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 論叢海外ミステリからちょっと古めの一冊。エラリー・クイーンのパスティーシュやパロディ作品をまとめたアンソロジー『エラリー・クイーンの災難』を読む。編者はエラリー・クイーン研究家として知られ、エラリー・クイーンファンクラブ会長も務める飯城勇三氏。
 まずは収録作から。

【第一部 贋作篇】
F・M・ネヴィンズ・ジュニア「生存者への公開状」Open Letter to Survivors
エドワード・D・ホック「インクの輪」The Circle of Ink
エドワード・D・ホック「ライツヴィルのカーニバル」The Wrightsville Carnival
馬天「日本鎧の謎」日本木制鎧甲之謎
デイル・C・アンドリュース&カート・セルク「本の事件」The Book Case

【第二部 パロディ篇】
J・N・ウィリアムスン「十ヶ月間の不首尾」The Months' Blunder
アーサー・ポージス「イギリス寒村の謎」The English Village Mystery
リーイン・ラクーエ「ダイイング・メッセージ」Dying Message
ジョン・L・ブリーン「CIA:キューン捜査帖〈漂窃課〉 画期なき男」C. I. A.: CUNE'S INVESTIGATORY ARCHIVES PLAGARISM DEPARTMENT The Idea Man
デヴィッド・ピール「壁に書かれた目録」The Cataloging on the Wall
J・P・サタイヤ「フーダニット」WHODUNIT?

【第三部 オマージュ篇】
ベイナード・ケンドリック&クレイトン・ロースン「どもりの六分儀の事件」The Case of the Stuttering Sextant
ジェイムズ・ホールディングアフリカ川魚の謎」The African Fish Mystery
マージ・ジャクソン「拝啓、クイーン編集長さま」Dear Mr. Queen, Editor
ジョシュ・パークター「E・Q・グリフェン第二の事件」E. Q. Griffen's Second Case
スティーヴン・クイーン「ドルリー」DRURY

 エラリー・クイーンの災難

 世界初のクイーン・パスティーシュ集という触れ込みなので、それはいいのだけれど、いかんせんホームズのパスティーシュほど作品数が多くないせいか、粒揃いの作品集とはいかなかったようだ。正直、出来不出来の差はけっこうある。

 そんな中で健闘しているのが、第一部の贋作篇。真面目にクイーンの作風をなぞっており、どれも楽しめた。
 トップを飾るのはクイーンの伝記評論が翻訳刊行されたばかりのネヴィンズ・ジュニア による「生存者への公開状」。事件のメイントリックよりもネタの落としどころが面白い。
 クイーンの代作経験もあるホックは二作収録されているが、オススメは「インクの輪」。連続殺人の謎を追ういわゆるミッシング・リンクものだが、長篇にできるぐらいの魅力と謎をそなえた佳作。パスティーシュでここまでやるのは少々もったいない気もするが(苦笑)。
 珍しや中国からの作品は馬天「日本鎧の謎」。着想は悪くないのだが、ここまでいくと同人っぽいというか少々やりすぎで、個人的には入り込めない。
 「本の事件」もなかなかいい。老いたクイーンが、なんとジューナの子供たちが巻き込まれた事件の謎を解く。クイーン自身の著作をトリックにしていたり、パスティーシュゆえの魅力や仕掛けがふんだんに盛り込まれた佳作。ただ、ジューナ一族の扱いが酷くて、クイーンファンの一人としてはそこが不満。

 第一部に比べ、第二部のパロディ篇はそうとうきつい。単純にパロディやミステリとしてつまらないものが多く、ほとんどが言葉遊びに終始する作品ばかりである。海外作家のクイーンに対する印象が垣間見えて、そこだけは興味深い。
 ただし、J・P・サタイヤの「フーダニット」だけは例外。なんとスタートレックにクイーン父子が乗り込んで殺人事件を解決するというもので、その設定だけでも十分面白いのだが、冒頭からそれをさらに上回る仕掛けが施されていたことに唸らされた。
 とはいえ、これは逆にスタートレックファンが怒るんじゃないか(苦笑)。

 第三部のオマージュ篇も第二部と似たり寄ったり。しかし、こちらも最後に収録されているスティーヴン・クイーン「ドルリー」については別格でよくできている。
 本作は著者名やタイトル名からもわかるように、クイーンのオマージュであると同時にスティーブン・キング『ミザリー』のパロディにもなっている。しかも『ミザリー』の世界観に恐ろしいぐらい見事にクイーン自身やドルリー・レーンというキャラクターをはめこんでいる。
 そもそも元がホラーなのでミステリとしては大した作品ではないのだけれど、いやいや、パロディとしてはなかなかお見事である。
 ちなみに解説では、作者の正体についてはぐらかされているが、『ミザリー』以降の時代であれば作者不詳などということもないだろうから、これはおそらく日本人、それこそエラリー・クイーンファンクラブの誰かが書いたものではないかな。

 ということで、そこそこクイーンを読みこんでいないと楽しめない作品ばかり、おまけに収録作の出来の差も激しいけれど、クイーンのファンなら楽しめる一冊といってよいだろう。
 マイフェイヴァリットは「インクの輪」、「本の事件」、「フーダニット」、「ドルリー」といったところで。


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 論創ミステリ叢書から『戦前探偵小説四人集』を読む。五十巻目の本書を機に、論叢ミステリ叢書はひとまずのピリオドを打ったのは、まだ記憶に新しいところ。
 しかしながら、まだまだ紹介していない作家はいるし、ここまできたのなら乱歩の巻だって出してほしい。ぜひ、いつの日か復活を願いつつ……などと書くまでもなく、つい先日に判型を変えて論創ミステリ叢書が再スタートを切ったのは皆様ご存じのとおりである。既に『守友恒探偵小説選』『大下宇陀児探偵小説選I』と順調すぎるペースで刊行中。やれ嬉しや。

 とまあ、そんなわけで一度は最終巻を迎えた論創ミステリ叢書。その区切りの五十巻目は『戦前探偵小説四人集』という思い切ったラインナップであった。
 収録されている作家は、羽志主水・星田三平・水上呂理・米田三星の四名。戦前ミステリのアンソロジーではちょくちょくお目にかかる名前ばかり、そのくせ一人では一冊にまとまらない程度しか作品が残っていないというマニア泣かせの方々で、当然これまで独立した著書はない。それならってんで四人の著作をまとめた形にしたのが本書。なんと四人分の全集なのである。
 もう戦前探偵小説好きには堪らない一冊。出ただけで十分ありがたいわけで、ここで本日はお終いにしてもいいのだが、それではこのブログのはかない意義もますますはかなくなってしまうゆえ、以下、収録作と感想などを記す。

 戦前探偵小説四人集

■羽志主水
「蠅の足」
「監獄部屋」
「越後獅子」
「天佑」
「処女作について」(随筆)
「雁釣り」(随筆)
「唯灸」(随筆)
「涙香の思出」(随筆)
「マイクロフォン」(随筆)

■水上呂理
「精神分析」
「蹠の衝動」
「犬の芸当」
「麻痺性痴呆患者の犯罪工作」
「驚き盤」
「石は語らず」
「処女作の思ひ出」(随筆)
「お問合せ」(随筆)
「燃えない焔」(随筆)

■星田三平
「せんとらる地球市建設記録」
「探偵殺害事件」
「落下傘嬢殺害事件」
「ヱル・ベチヨオ」
「米国の戦慄」
「もだん・しんごう」
「偽視界」

■米田三星
「生きてゐる皮膚」
「蜘蛛」
「告げ口心臓」
「血劇」
「児を産む死人」(随筆)
「森下雨村さんと私」(随筆)

 頭からざっくりいくと、羽志主水は「監獄部屋」と「越後獅子」のみアンソロジーで既読。とにかく探偵小説としては実に珍しい、プロレタリアート的内容の「監獄部屋」の印象が強くて、ほぼそれだけのイメージしかなかったのだが、再読してもやはり「監獄部屋」強しである。探偵小説的なのはオチの部分ぐらいだが、思想を探偵小説にはめたかなり早い例だと思うし、それだけでも評価してしかるべきだろう。

 水上呂理は昔からペンネームのインパクトだけで憶えていた作家。本名をもじったものらしいのだが、今では非常に誤解を招きやすい名前である(笑)。
 まあ、それはさておき。実はこの四人の中では、これまで一番作品の印象が弱かったのだが、改めて読むとこんなに心理学や精神分析などを用いた作家だったのかと驚く。そっち系のネタだと木々高太郎とかぶる部分は多いわけだが、なんとデビューは木々より八年ほど早いと知り、二度ビックリ。ただ、どうしても内容的な今更感があるのは辛いところだ。

 今回、もっとも気に入ったのが星田三平。SF的でもあり冒険小説的でもありハードボイルドチックな雰囲気も漂わせた「せんとらる地球市建設記録」はもともと好きだったのだが、他の作品を読むと、けっこういろいろなタイプにチャレンジしているのが素晴らしい。
 なかには「米国の戦慄」なんていうトンデモ小説まであって、これはヴァン・ダインの生んだ名探偵ファイロ・ヴァンスとアメリカ裏社会を牛耳っていたアル・カポネを対決させた物語。これらの設定やニューヨークテロというテーマは派手だが、双方が持っている魅力や特徴をまったく用いず、内容もグダグダという超企画倒れの一篇である。ただ、話のタネだけのために読んでおいても損はない(笑)。
 ちなみに書き溜めしてあった原稿が、戦災でほとんど焼失したらしく、まったく残念このうえない。

 ラストは米田三星。意外なことに、まとめて読むと明らかに本書中の他の作家とはレベルが違う。戦前探偵小説というフィルター抜きで、普通に小説が巧いと感じられる作家なのである。文章もしっかりしているし雰囲気も十分。米田三星ならたとえ誘われたとしても、間違ってもファイロ・ヴァンスのパスティーシュなどは書かないだろう(笑)。いや、ファイロ・ヴァンスのパスティーシュも、それはそれで戦前探偵小説的ではあるのだが。

 さてさて、こうやって褒めてはみたけれど、むろん今の探偵小説と比較するべきではない。同時代とはいえ、乱歩や正史はものが違うのだ。その他の作家など、決して期待するべきではないのである。
 それでも「実はこんなミステリがあるんだけどね」とオススメしたい衝動にかられてしまう、そんな魅力がこの時代の作家にはあるんだよなぁ。当時の探偵小説に免疫がない人にぜひ読んでもらって、感想を聞いてみたいものだ。


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 週の頭に任天堂のゲーム機Wiiを購入する。リモコンを振って操作するというのが最大の特徴なのだが、実はニュースやら天気予報、投票、伝言板、インターネット、ゲームのダウンロードなど、家庭の中心に置かれるセンターとしての機能に大変気を遣っていることがわかる。ゲームの前にそっちでしばらく時間をつぶせるぐらいである。当分これで楽しめそうだが、読書の敵ではあるな(笑)。

 シャーロキアンとして有名な北原尚彦氏が編訳した『シャーロック・ホームズの栄冠』を読む。もちろん本物のホームズ譚などではなく、100パーセント紛い物のパスティーシュ&パロディ集だ。
 ただ、正直な話、パスティーシュの類はあまり積極的に読もうとは思わない。原典ですら読みこんでいる自信もないのに何をわざわざ、という気持ちがあるからで、本作も論創海外ミステリの一冊でなかったら恐らくスルーしていたところだ。
 ただ買ってみて驚いたのは、その顔ぶれ。さすがに目利きのセレクトだけあって半端ではない。ちょっと挙げるだけでもロナルド・A・ノックスに始まってE・C・ベントリー、アントニー・バウチャー、アントニー・バークリー、A・A・ミルン、ロバート・バー、ロス・マクドナルド、アーサー・ポージスなどなど。古典のアンソロジーでも組んだのかと思うほどの面子である。ここに加えてシャーロキアンの世界では有名な方々の作品が入るのだから、これは最強。
 だが、だからといって作品の質が高いとは限らない。ジャンルが特殊すぎるせいか、やはり傑作の絶対数はそれほど多くないのだろう。あまり期待しすぎると肩すかしを食うので念のため。とりわけロスマクが高校生のときに書いたという作品はひどい(笑)。肩肘張らずに楽しめる一冊だが、愛がないと厳しいかも。


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