ADMIN TITLE LIST
Selected category
All entries of this category were displayed below.

 中島河太郎の編纂によるトラベル・ミステリーのアンソロジー、『日本縦断殺人』読了。収録作は以下のとおり。
 
西村京太郎「花冷えの殺意」
辻真先「臼杵2時間52分の危機」
夏樹静子「特急夕月」
梓林太郎「奥又白谷」
鮎川哲也「鎌倉ミステリーガイド」
内田康夫「碓氷峠殺人事件」

 トラベル・ミステリーのアンソロジーとはいっても、それほど確固たるテーマはない。当時、人気のあった(今でもあるんだろうけど)トラベル・ミステリーを流行作家の作品から集めてみました、という軽い読み物である。ただ、出来のバラツキは少ないので、それほどひどい作品集でもないだろう。といって、あらためてミステリファンがとびつく本でもないのだが。
 そんな中、鮎川哲也の「鎌倉ミステリーガイド」だけは、ミステリマニア向けといってもよいほどの内容だ。タイトルどおり鎌倉に縁のあるミステリーについての、ちょっとしたガイドブックの趣である。三番館のバーテンものだが、設定も凝りに凝っていて、本書中ではダントツの楽しさだろう。
 ワーストは辻真先の「臼杵2時間52分の危機」。謎がどうこうより、主人公たちのニックネームや会話がとにかく生理的に受けつけない。本当に著者は、これを読者が喜んで読んでくれると思っているのだろうか。すこぶる疑問。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 終戦記念日が近いからと言うわけでもないが、戦争推理アンソロジーという副題がついた『黒い軍旗』を読む。編者はあの山前氏だが、本が出たのは1995年なので、まだブレイク前の頃である。編者にブレイクという言い方もどうかと思うが。

生島治郎「腹中の敵」
佐野洋「某液体兵器」
結城昌治「紺の彼方」
日影丈吉「焚火」
森村誠一「神風の殉愛」
山田風太郎「狂風図」
膳哲之助「埋葬班長」
石沢英太郎「つるばあ」

 収録作は上のとおり。ミステリとはいえ戦争という重いテーマをもってきたからには、さすがに各著者も覚悟をもって書いているようで(実際はどうか知りませんが)、なかなかの力作揃いだ。

 ただ、著者が「戦争をテーマにしたミステリ」を書こうとしたのか、「ミステリの衣を着た戦争文学」を書こうとしたのかで、読後感は微妙に異なる。
 例えば森村誠一の「神風の殉愛」などは特攻隊に向かう若者たちを描く前半に力が入りすぎていて、ミステリの部分はけっこうとってつけのような気がする。やはりミステリであるからには、読者に対してミステリとして楽しませたうえでそれから戦争についても考えさせる、というのが理想だろう。戦争について訴えたいのであれば、別にミステリではなくてノンフィクションや戦争文学など他にもっとまっとうな手段があるのだから。とはいえミステリという多くの人が気軽に手にとれる形態を通して啓蒙するという方法論は、それはそれで確かに間違ってはいない。

 ちょっと話はそれたが、そんななかでタイプはそれぞれ異なるけれど、生島治郎「腹中の敵」や結城昌治「紺の彼方」、山田風太郎「狂風図」などは実に巧み。手練れの著者たちによる一級品の短編といってよいだろうが、それらを差し置いて最も気に入ったのは、実は膳哲之助の「埋葬班長」である。設定といい展開といい、そして余韻といい、強烈な印象を残す作品で、これを読むだけでも本書の価値はあった。ミステリではマイナー系になるが、ちょっとチェックしておきたい作家である。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 パンチョ伊藤さんが亡くなった。そういえば最近テレビでお目にかかれないと思ったら、体を悪くしてたのか。また、一人惜しい人が亡くなった。合掌。

 山前氏の編集によるアンソロジー『古寺巡礼殺人事件』を読む。これもトラベルミステリーの範疇に入るのだろうが、お題を寺院に絞ったところがミソ。収録作は以下のとおり。

西村京太郎「鳩」
山村美紗「柩の中に藤の花を」
中津文彦「仏像は見ていた」
山村正夫「蛙飛び祭りの死影」
石沢英太郎「仁王幻想」
有明夏夫「白いジャケットの女」
長井彬「花クルスの謎」

 もともとは長井彬や石沢英太郎がちょいと気になったので買った本。あまり期待はしていなかったのだが、悲しいぐらいその予想どおり。特別鋭さがあるわけでもなく、しみじみと味わい深いわけでもない。何とも軽い読み飛ばし専用のような内容。寺院をテーマにする必然性みたいなものはそれなりに感じられるが、本当にそれだけといってよい。
 ところで西村京太郎の作品を読むたびに無性に気になるのだが、氏の文章って、なんであんなに読点が多いのだろうか? 読みやすさを重視しているのだとしても、少し度が過ぎてやしないか。ちょっと凄すぎるぐらい凄いので「鳩」の冒頭一行目を引用しておこう。
「警察には、さまざまな電話が、かかってくる。特に、浅草署に、おもしろい話が多いのは、下町のせいかもしれない。」

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本は山前譲氏の編集によるアンソロジー『真夜中の密室』。失礼ながら飛天文庫という、あまり一般には馴染みのない版元によるものだ。しかし天城一という激レア作家の短編が収録されているので、実はぜひ押さえておきたい一冊でもある。収録作は以下のとおり。

山村美紗「呪われた密室」
高木彬光「影の男」
中町信「動く密室」
泡坂妻夫「ナチ式健脳法」
大谷羊太郎「北の聖夜殺人事件」
天城一「むだ騒ぎ」
島田一男「渋柿事件」
鮎川哲也「妖塔記」

 密室モノは嫌いじゃないが、密室にこだわるあまり物語が本来持つ力を無視したゲーム性の強いモノは個人的に好きではない。せっかくのトリックなのだから、物語にうまく馴染ませ、小説としてのキレや味わいも大切にしてほしいのが本音だ。いくらトリックを工夫していても、例えば動機がとってつけたようにしょぼかったりすると、たちまち読書意欲が失せてしまう。
 そういうトリックと物語の幸福な出会い、ともいうべき観点でこのアンソロジーを読んだ場合、印象に残ったのが高木彬光の「影の男」、中町信「動く密室」、天城一「むだ騒ぎ」、島田一男「渋柿事件」、鮎川哲也「妖塔記」あたりか。ただし、こりゃすごい、というレベルのものはない。先日読んだ『現代怪談集成(上)』あたりと比べる方が無茶なのだが、アンソロジーの場合どうしても期待が高くなるので、これぐらいじゃやっぱり物足りない。まあ、ちょっと変わった設定の密室が多いので、そういう意味では楽しめるのだろうが……。必読ではないが、マニアなら必携、といったところか?

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説