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 1979年に講談社文庫から刊行されたアンソロジー 『世界鉄道推理傑作選1』を読む。タイトルどおり鉄道に絡んだ海外ミステリを集めたものだが、これがなかなか魅力的な一冊だった。
 まずは収録作。

M・M・ボドキン「ステッキのキズは?」
V・L・ホワイトチャーチ「ロンドン中北鉄道の惨劇」
V・L・ホワイトチャーチ「盗まれたネックレース」
作者不詳「モアハンプトンの怪事件」
R・オースティン・フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」
エドマンド・クリスピン「列車に御用心」

 世界鉄道推理傑作選1

 まず、このラインナップがお見事。「オスカー・ブロズキー事件」はともかく、その他の作品は当時、これでしか読めないレア作品ばかり。今でこそホワイトチャーチやクリスピンは論創海外ミステリから『ソープ・ヘイズルの事件簿』『列車に御用心』という短編集が出たおかげで苦労なく読めるようになったけれど、それでもまだいくつかのレア短編が残っている。

 特に「ステッキのキズは?」は、女探偵ドーラ・マールが登場するシリーズ作品なのだが、ドーラ・マールの翻訳作品はいまだにこれ一作しかない。
 著者のM・M・ボドキン(M・マクドネル・ボドキン)はポール・ベックという探偵が活躍する作品でも知られているが、こちらだってハヤカワ文庫の『シャーロック・ホームズのライヴァルたち①』、光文社文庫の『クイーンの定員Ⅰ』というアンソロジーぐらいでしか読めない作家である。
 「ステッキのキズは?」はドーラの直感がちょっと強引すぎるかなとは思うが、アイデア自体は面白く、キャラクターも嫌味がなく好感が持てる作品。こうなると他の作品もやはり読みたたくなるわけで、これは論創社さんあたりの守備範囲になるのかな。

 もうひとつのレア作品は探偵セクストン・ブレイクものの「モアハンプトンの怪事件」。作者不詳とあるけれども、これは多くの作家がセクストン・ブレイクの物語を書き継いでいったため、現在では誰が何を書いたのかわからなくなってしまったということらしい。
 詳細は不明だが、こういう形式で進められたのは、おそらく作家のアイデアではなく、出版社主動・編集主動の結果だろう。確認されているかぎりでは、関わった作家が二百人、書かれた作品は四千作にのぼり、それ専用の雑誌まであった。
 こちらはあまり食指が動かないけれども(苦笑)、それでもセクストン傑作選が出るのであれば一冊は読んでみたいものだ。

 本書は作品もいいのだが、忘れちゃいけないのが編者・小池氏による充実した解説。収録した作者、作品の紹介は当然として、とにかく鉄道に関する解説が濃い(笑)。
 実は本書に収録された作品はすべて英国ミステリということもあって、当時の英国鉄道の歴史や運営、車両の構造にいたるまで、挿絵なども使ってまあ盛りだくさんである。感心すると同時に、この鉄道愛がなんとも微笑ましい。

 今では古書でしか読めない一冊だが、先ほどの事情もあってかちょっと価格も下がっており、現状は比較的安価で買うことができる。興味をお持ちの方はぜひ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本は長田順行氏の編纂による『ワンダー暗号ランド』。暗号をテーマにしたミステリのアンソロジーである。
 まずは収録作から。

甲賀三郎「琥珀のパイプ」
斎藤栄「三色の告発」
泡坂妻夫「掘出された童話」
樹下太郎「貨車引込線」
佐野洋「あるエイプリル・フール」
幾瀬勝彬「死句発句」
戸板康二「立女形失踪事件」
木々高太郎「詩と暗号」
江戸川乱歩「黒手組」
小栗虫太郎「源内焼六術和尚」

 暗号とミステリは一見相性が良さそうだが、これだけの暗号小説をまとめて読んでみると意外にそうでもないのかな、というのが第一印象。昔から言われるように、謎を論理的に解くところに本格探偵小説の肝があるのだとしたら、暗号を解くという行為はまさにぴったりのはず。
 だがこれも昔から言われることだが、それを突き詰めてしまうと、小説ではなくパズルを解いていればよいということになってしまう。

 そこで重要になるのが、小説としても面白く、謎解きとしても優れているという、絶妙なバランスである。
 とりわけ暗号をテーマにした場合、普通の本格ミステリよりさらにその度合いが要求されるべきだ。でないと本当に暗号パズルで終わってしまう。少なくとも私はパズルを解きたいためにミステリを読むわけではないので、いくら暗号自体が魅力的でもそれだけではつまらない。その暗号を解く過程や暗号が使われる状況なども説得力をもつものにしてほしいし、事件そのものも魅力的であってほしい。まあ、要は小説として面白ければいいのである。

 そういう観点で本書を読んだ場合、泡坂妻夫の「掘出された童話」は暗号を使いつつも作品を覆う叙情的な雰囲気がよく、本書中のベストではないかと思う。
 また、こういうものも書くのかとびっくりしたのが幾瀬勝彬の「死句発句」。この渋さは悪くなく、惹かれるものがある。
 ちなみに甲賀三郎「琥珀のパイプ」、木々高太郎「詩と暗号」、江戸川乱歩「黒手組」などは今までに何度も読んでいるし、個人的に別格扱い。


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