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 最近、寝るときにぼちぼちと読んでいた日本ペンクラブ編集(作品選択は佐野洋)による『最大の殺人』読了。
 先日よんだ山前譲/編『黒い軍旗』が戦争をテーマにしたアンソロジーだったのだが、同書のあとがきで『最大の殺人』もまた同様のテーマだったことを知って読み始めたもの(しかし買ったのは何年も前なのに、今の今まで戦争ミステリのアンソロジーだとはまったく気がつかなかった。目次をパラパラ見て、山田風太郎や樹下太郎、日影丈吉あたりが載っていたので買っただけだもんなぁ)。収録作は以下のとおり。

山田風太郎「黒衣の聖母」
土屋隆夫「絆」
高木彬光「原子病患者」
日影丈吉「月あかり」
樹下太郎「泪ぐむ埴輪」
菊村到「ヒロシマで会った少女」
佐野洋「灰色の絆」
仁木悦子「山のふところに」
西東登「壺の中」
五木寛之「冥府への使者」
森村誠一「紺碧からの音信」
結城昌治「長かった夏」
山村美沙「骨の証言」

 本書は『黒い軍旗』の前に出ているだけに、よりハイレベルな作品が揃っているかと予想したが、特にそんなことはなく、ミステリという観点から見れば『黒い軍旗』の方が上ではないか。それは巻末の対談で選者の佐野洋が語っているように、まず戦争というものに対する啓蒙的な意識が強くあり、それを基準に作品を選んだためであろう。実際、暗い読後感の作品は多いわけだが、ただ、そうかと思うと高木彬光の「原子病患者」のように、けっこう変な作品が採られていたりもするので、決して油断はできない。
 まあ、全体的にはそれほど悪くないアンソロジーで、個人的には五木寛之がめちゃくちゃ懐かしくてよかった。五木寛之というと、私の学生時代では『青春の門』がとにかく流行って、今の村上春樹ぐらい学生はよく読んだものだが、さて今はどうなんだろう? 短編なんかではけっこうハードボイルドタッチの作品も多かったと記憶するが、本書の「冥府への使者」もインテリに憧れる青年のドタバタをなんとも絶妙に描いており、ピカレスクとしても青春小説としても上質である。
 他では山田風太郎の「黒衣の聖母」(これって乱歩の「防空壕」に対するオマージュ? 読むのはもう三回目ぐらいになるが、いつも気になる)、結城昌治の「長かった夏」など、どうしようもない喪失感を感じさせる作品が印象的であった。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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