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 かつて早川書房の「世界ミステリ全集」に収録されたアンソロジー『37の短篇』。その中から現在では入手して読むことが難しいレアものばかりを集めた本が『天外消失』だったわけだが、本日の読了本『51番目の密室』は、その続刊にあたる。
 とはいえ、本作のレア度は『天外消失』に比べるとかなり落ちる。集める手間はそれなりにかかるだろうが、それでも新刊書店で探せる物もあるし、ネットの古書店を回ればほとんどが簡単に入手できるはずだ。

 ここからは想像だが、おそらく本書は『天外消失』の評判やセールス(もしくはその両方)がよかったための臨時企画。あとは巻末の<座談会>を収録しておきたかったのであろう。
 以前に、某書評家さんのブログで、この<座談会>の必要性を目にしたことがあるのだが、今回、現物を読んで納得。これは当時の短篇の状況を総括しつつ、『37の短篇』というアンソロジーの意義を語り、しかも優れた書評にもなっているという、実にためになる座談会なのである。「優れた短篇」というテーマにとどまらない、編者たちの「意志」をそこに読み取りたい。小鷹さん、いいなあ。

 51番目の密室

 言わずもがなのことだが、収録作のレベルはもちろん高い。内容も本格からサスペンス、おバカな作品も意外に多く、実にバラエティに富んでいて楽しめる。
 おすすめの筆頭はクリスチアナ・ブランドの「ジェミニイ・クリケット事件」。創元の『招かれざる客たちのビュッフェ』に収録されているもの(英版)とはラストが違っていて、個人的には本書に収録されている米版の方が好み。
 他には「51番目の密室」とか「魔の森の家」とかのホラ話系(笑)、「少年の意思」や「燈台」といったホラー、サスペンス系も読み応えアリ。ただ、全体的に既読率が高くなるのは、致し方ないところか。

 最後に収録作を。『37の短篇』から本書に収録されているのは12作。『天外消失』に収録されているのが14作だから、これで計26作がポケミス化されたことになる。ポケミスでも文庫でもいいけど、どうせここまでやるなら、最初から全部オリジナルのまま出せばよかったのに、なんて野暮なことはこの際言うまい(いや、言ってるじゃん)。

クレイグ・ライス「うぶな心が張り裂ける」
ヘレン・マクロイ「燕京綺譚」
カーター・ディクスン「魔の森の家」
ロイ・ヴィカーズ「百万に一つの偶然」
Q・パトリック「少年の意思」
ロバート・アーサー「51番目の密室」
E・A・ポー&ロバート・ブロック「燈台」
コーネル・ウールリッチ「一滴の血」
ロバート・L・フィッシュ「アスコット・タイ事件」
リース・デイヴィス「選ばれた者」
エドワード・D・ホック「長方形の部屋」
クリスチアナ・ブランド「ジェミニイ・クリケット事件」
<座談会>短篇の魅力について

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 天外消失

 ポケミスのアンソロジー『天外消失』を読む。
 その昔、早川書房に「世界ミステリ全集」という全集があった。従来の古典ばかりを収めたものとは異なり、新しい作品も積極的に採り入れたところが大きな魅力である。名著揃いということで、その後も文庫化されるなど、たいていの作品は読むことができたわけだが(と思っていたが改めて見るとフランス・ミステリをはじめ絶版のものもちらほら。ま、この話題はまた別の機会に)、唯一、品切れのまま文庫化もされず、いつしかマニア探求本の一冊となってしまった本がある。それが最終巻として刊行された短編アンソロジーの『37の短篇』であった。
 本日の読了本『天外消失』はその『37の短篇』から、他の本で読めるようなものはできるだけ省き、レアものを中心に14作を抜粋して復刊したものだ。収録作は以下のとおりだが、さすがに粒揃いで、しかもバラエティに富んでいる。初めて読む作品も多く、コストパフォーマンスは抜群にいい。

エドガー・ライス・バロウズ「ジャングル探偵ターザン」
ブレット・ハリディ「死刑前夜」
ジョルジュ・シムノン「殺し屋」
エリック・アンブラー「エメラルド色の空」
フレドリック・ブラウン「後ろを見るな」
クレイトン・ロースン「天外消失」
アーサー・ウイリアムズ「この手で人を殺してから」
ジョン・D・マクドナルド「懐郷病のビュイック」
イーヴリン・ウォー「ラヴデイ氏の短い休暇」
C・B・ギルフォード「探偵作家は天国へ行ける」
フランク・R・ストックトン「女か虎か」
アル・ジェイムズ「白いカーペットの上のごほうび」
ポール・アンダースン「火星のダイヤモンド」
スティーヴン・バー「最後で最高の密室」

 ベストを選ぶとすれば、さてどれになるか。
 ロースンの最高傑作といわれる表題作「天外消失」もいいのだが、個人的には「こんな人がこんなものを」という内容+αの意外性ということで、ブレット・ハリディの「死刑前夜」か。シンプルなハードボイルドだと思っていたので見事な背負い投げを喰らってしまった。
 あとは、アンブラーの本格というだけでも読んでおきたい「エメラルド色の空」。もちろん内容も鮮やか。「探偵作家は天国へ行ける」は設定が絶妙なうえに、ラストシーンがこれまたいい。
 ま、とにかく一家に一冊ぐらいのことはいっていい、ハイレベルなアンソロジー。これは読まなきゃもったいないでしょ。

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