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 先日読んだ『怪人ジキル』はまあとにかく怪書というにふさわしい一冊だったが、とりわけ殺人タンスの存在は衝撃的であった。さらに驚いたことには、この殺人タンスの元ネタがカミのルーフォック・オルメスものの一作であり、しかもその作品が盛林堂ミステリアス文庫で刊行される『ルーフォック・オルメスの事件簿』に収録される予定だと(※当時はまだ刊行予定だった)解説にあるではないか。
 それはさっそく確かめてみなければということで、本日の読了本はカミの『ルーフォック・オルメスの事件簿』。

 ルーフォック・オルメスの事件簿

Le plafond noir「黒い天井」
Le Mystère de Trou-du-pic「トンガリ山の穴奇譚」
Vierge quand même!「処女華受難」

【パスティーシュ】
北原尚彦「宝石泥棒ムササビ男」
横田順彌「東京タワーの潜水夫」

【絵物語】
Vierge quand même!「盗まれた人工処女膜事件」(木村しゅうじ 画)

 収録作は以上。もともと本書は創元推理文庫で刊行された『ルーフォック・オルメスの冒険』の拾遺集的な企画で、純粋なルーフォック・オルメスものは最初の三作である。
 これでは一冊にできないということで、本書の企画者・北原直彦氏がオルメスもののパスティーシュを書き上げ、さらにはオルメスファンだというSF作家の横田順彌氏にもパスティーシュを依頼してできあがったものが本書。付録として「処女華受難」を絵物語にアレンジした!「盗まれた人工処女膜事件」が収録されている。

 「黒い天井」はカフェで起こった奇怪な殺人事件の謎を追う。天井から見えざる手が伸びてきて、カフェにいた人々を絞殺するのである。のっけからカミの妄想大爆発というか、トリックがあまりにもアホすぎて普通に考えると完全正解はほぼ不可能だろう。あ、でもオルメスがカフェの天井を黒く塗れと指示したときは、いやな予感がしたけれども(笑)。

 「トンガリ山の穴奇譚」はホテルの一室から起こる激しい情事の叫びの謎を追う。しかし、その叫びの主の姿はどこにも見えず……。クラシックな怪談調というのが意外といえば意外だが、内容的にはかなり落ちる。

 そして『怪人ジキル』の元ネタ「処女華受難」。さすがカミである。殺人タンスだけではなく、タイトルにもある処女性、早い話が貞操を冷蔵保存することでいくら火遊びしてもいつでも純潔に戻せるという研究とか、もうこの誤った倫理観が最高である。
 肝心の殺人タンスの件りだが、本家のこちらでも後半に登場。パリの街を暴れまわって最後には墜落死する。ううむ、これはまたなんとも。『怪人ジキル』はカミの本作を元ネタにしたどころのレベルではない。オマージュなのかインスパイアされたのか、はたまたパロディ、パスティーシュ。言い方はいろいろあろうが、これはやはりパクリだよなぁ(笑)。

 パスティーシュといえば北原、横田両氏によるパスティーシュも悪くない。ただ、横田氏の方はより自らの個性が出過ぎているのか、再現度は低いように思う。
 片や北原氏の「宝石泥棒ムササビ男」は、カミのパスティーシュというよりカミの翻訳のパスティーシュといったほうが適切な気もするが、それにしてもカミの雰囲気がよく出ている。アホさ加減もいい感じで、これは知らずに読んだら信じてしまうレベルだ。

 ということでボリューム不足はちと感じるもののなかなか楽しめる一冊である。
 ただ、『怪人ジキル』と続けて読むとさすがに食傷気味になったので、次はもう少ししみじみとしたものを読むとしよう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 『ルーフォック・オルメスの冒険』を読む。『エッフェル塔の潜水夫』や『機械探偵クリク・ロボット』で知られるフランスのユーモ作家、ピエール=アンリ・カミが書いた、同時代の名探偵シャーロック・ホームズをネタにしたパロディである。
 まずは収録作。

第一部 Loufock-Holmès contre tous「ルーフォック・オルメス、向かうところ敵なし」
L'Assassinat de l'Accordeur「校正者殺人事件」
La Tragique Affaire des Somnambules「催眠術比べ」
La Main Rouge sur Blanc「白い壁に残された赤い大きな手」
Le Squelette Disparu「骸骨盗難事件」
Le Scaphandrier de Venise「ヴェニスの潜水殺人犯」
L'Assassinat du Commissaire「警官殺人事件」
Un Étrange Suicide「奇妙な自殺」
L'Écuyere Chauve「禿げの女曲馬師」
Un Vrai Flair de Limier「本物の嗅覚」
Étrangleurs de Hernies「証拠を残さぬ殺人」
L'Énigme du Canot Volant「空飛ぶボートの話」
Un Drame Passionnel「愛による殺人」
Les Pirates du Rail, ou l'Attaque du Train 11「列車強盗事件」
Les Mystères de la Rue Saint-Couic「聖ニャンコラン通りの悲劇」
L'Homme aux Deux Profils, ou l'Étrange Assassinat「ふたつの顔を持つ男」
La Villa Isolée「後宮の妻たち」
Réincarnée「生まれ変わり」
Les Mystères de Chicago, ou Cloches Muettes et Oeufs Qui Parlent「シカゴの怪事件-鳴らない鐘とおしゃべりな卵」
Marat, ou le Bain Fatal「ミュージック・ホール殺人事件」

第二部 Spectras contre Loufock-Holmès「ルーフォック・オルメス、怪人スペクトラと闘う」
L'Affaire des Malles Sanglantes「血まみれのトランク事件」
Le Mystère de Trou-du-pic「《とんがり塔》の謎」
Le Trou de Clarinette「〈クラリネットの穴〉盗難事件」
La Mystèrieuse Guillotine「ギロチンの怪」
Les Bandits de l'Atlantique「大西洋の盗賊団」
Le Damier Qui Tue「チェッカーによる殺人」
Le Bébé Rouge「人殺しをする赤ん坊の謎」
Le Secret du Sphinx「スフィンクスの秘密」
Les Escargots de Minuit「真夜中のカタツムリ」
Le Clown Mystérieux「道化師の死」
Le Mystere du Champ de Courses「競馬場の怪」
Les Microbes Sanglants「血まみれの細菌たち」
Le Mystère des Catacombes「地下墓地の謎」
Le Tango de l'Échafaud「死刑台のタンゴ」
Le Retour de l'Incinéré「巨大なインク壺の謎」

 ルーフォック・オルメスの冒険

 いやあ、カミって本当にアホだわ(褒めてます)。
 オルメスのシリーズ作品はいくつか読んだことはあるけれど、単品で読むとあまりのアホさ加減に、これはもしかしたら、こちらの読み方が悪いのかぐらいに思えることもあったのだが、まとめて読むとやはり相当にぶっ飛んだシリーズであることを再認識できた。
 全編これコントか冗談のような話ばかりで、しかもシナリオのようなスタイルで書かれているから、よけいドリフのコントみたいに思えてくる。
 これが先にあげた『エッフェル塔〜』や『機械探偵〜』のような長篇だと、少しは裏テーマや著者のメッセージみたいなものも感じられないこともないのだが、本作の場合はストレートに笑いのみを追求している感じ。

 もう、ホームズとか関係なし。事件、犯人、探偵、論理、科学すべてがくだらなすぎて楽しい。
 例えば管理人お気に入りの一品は「禿げの女曲馬師」。
(以下ネタバレあり、ネタバレというほどのネタでもないけれど)
 アパートの七階から墜落してきた女曲馬師が、その場にあった地球儀に衝突して死亡する。だが死因はなんと溺死。ちょうど大西洋にぶつかったからという推理も出る中、どうやら真相は地球儀の中に水が入っていて、それで窒息したらしい……などという話がてんこ盛りで、もう脱力しまくりである。とにかく一度は騙されたと思って読んでほしい怪作ぞろい。
 訳者は大変だったろうけれど、ノリノリな感じが伝わってきてそちらも◎


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 『エッフェル塔の潜水夫』で知られるフランスのユーモア作家、カミ。そのカミが残した探偵といえば、シャーロック・ホームズのパロディであるルーフォック・オルメスが有名だが、実はもう一人、いやもう一体というべきか、彼は探偵を創出していた。
 本日の読了本は、カミの『機械探偵クリク・ロボット』。

 機械探偵クリク・ロホ#12441;ット

 クリク・ロボットはミステリ史上初のロボット探偵。四角い頭に鋼鉄の身体は無骨なれども、チェックのスーツと小粋なチロリアン・ハットに身を包み、産みの親、ジュール・アルキメデス博士とともに颯爽と事件に乗り出してゆく。
 その最大の武器は、何といっても正確無比なコンピュータである。様々な情報をインプットし、代数学的に謎を解く。〈手がかりキャプチャー〉、〈推理バルブ〉、〈仮説コック〉、〈短絡推理発見センサー〉、〈思考推進プロペラ〉、〈論理タンク〉などという、いかにも本格ミステリな機能が満載である。

 で、実際にミステリとしてはどうよ、となると、いい感じでゆるめである。捜査や推理については、けっこう真面目にミステリっぽくまとめてはいるが、普通の本格や警察小説と比べるのはさすがに無理がある。
  本作はあくまでミステリをネタにしたユーモア小説、あるいはミステリのパロディととらえた方が適切だ。ミステリの要素をコード化したような〈推理バルブ〉、〈仮説コック〉といった機能のネーミング、死んだはずの被害者が普通に証言したり、首を忘れて外に出たクリクにみんなが慌てふためいたり、お馬鹿な世界にどっぷり浸るのが吉。

 また、ポケミスには珍しく挿絵が入っているのだが、なんとカミ自身が描いたもの。これがまたゆる~い感じで、この絵があるだけで本書の魅力30パーセントほどアップといっても過言ではない。それぐらい魅力的。

 ひとつ気になったのは、クリク・ロボットはアルキメデス博士によってリモコン操作されているという設定だ。そして謎解きも博士の役目。いってみれば、クリクは現代のパソコン的な存在なのだろう。そこが物足りないといえば物足りない。
 例えば、もっと減らず口をたたいて、人間をバカにするような生意気なロボットを想像していた人も多いのではないだろうか。あるいは秀才型の委員長タイプでもいい。そんな人間くさい個性をもった存在にしなかったのはなぜだろう。
 クリクはあくまで従順で、人間に使われる存在である。それが当時(1945年頃)の欧米人の意識によるものなのか。あるいはカミの考え方なのか。想像するとなかなか面白い問題ではある。

 ちなみに本書には本格っぽいスタイルの「五つの館の謎」、アクション味が強い「パンテオンの誘拐事件」の二作を収録。クリクの登場作品はこの二作ですべてらしいが、ううむ、もっと読みたかったなぁ。


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