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 飽きもせずぶたぶたシリーズ。シリーズ三作目の『ぶたぶたの休日』を読む。
 本書は、一作目と同様連作短編に戻っているが、ちょっと構成が凝っている。説明するのがちょっと面倒なんだが、まずは目次を見てほしい。

「お父さんの休日1」
「約束の未来」
「お父さんの休日2」
「評判のいい定食屋」
「お父さんの休日3」
「女優志願」
「お父さんの休日4」

 このうち、いわゆる通常の短編は「約束の未来」「評判のいい定食屋」「女優志願」の三作で、それらの作品を「お父さんの休日」という作品がサンドイッチしている形なのだ。で、この「お父さんの休日」という作品が面白い。これはぶたぶたの休日をたまたま目撃したり、偶然にコンタクトしてしまった人たちの視点で語られた、いわばスケッチのような作品。とりたててストーリーなどはなく、本当にぶたぶたの休日がただ第三者の目で述べられているだけなのである。しかし、実をいうとぶたぶたの物語は、この語り部とぶたぶたの間合いこそが味なのである。
 「約束の未来」をはじめとしたしっかりとした作品も確かにいい。だが、ぶたぶたが大活躍してしまっては、それはただのキャラクター頼みのお話であり、ディズニーがとうの昔からやっていることの焼き直しだ。著者の偉いところは、そんなキャラクターの魅力をあえて押し出さず、自然に(ある意味押し殺すようにして)表現しているところなのだ。だから「女優志願」のようにぶたぶたが生き生きとしている作品はお話としてはよくできていても、いまひとつ世界がぶたぶたらしく思えなかったりする。「評判のいい定食屋」のように、ぶたぶたはあくまで脇役っぽい方が似合うのだ(ただ、主人公の夫の言動だけはさすがに理解しがたいものがあるが)。そして、それを突き詰めると、結局は「お父さんの休日」のような作品がベストに感じられるのである。


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 ぶたぶたのイメージが強く残っているうちに、と思い、続編の『刑事ぶたぶた』を読む。
 連作短編集だった『ぶたぶた』とは異なり、本作は何と長編の刑事物、しかも複数の事件が平行して描かれる、いわゆるモジュラー型の構成である。まあ、だからといって本作がミステリというわけではないのだが、著者が警察小説のスタイルをしっかりと押さえていることにまずはニンマリ。こういうミステリのお約束を知っているのといないのとでは、やはり面白さの質も違ってくる。

 さて、肝心の本編だが、語り部を新米刑事の立川青年に据え、配属先でベテラン刑事の山崎ぶたぶたとコンビを組むところからスタートする。刑事物などではお馴染みのシチュエーションだが、ベテラン刑事がくまのぬいぐるみという状況に、当然立川刑事は困惑する一方。しかし、ぶたぶたの活躍を目の当たりにするうちに深い敬愛の念をもつようになり、二人で幾多の事件に立ち向かうことになる……というお話。
 もちろんミステリ的な興味で読む話ではなく、主眼はあくまで人間である。本作でもぶたぶたを狂言回し的に使うことによって、親子関係というテーマについて掘り下げていっている。二重三重に構築されたそのパターンに、読者は嫌でも自分の親子関係について考えるに違いない。著者の企みはなかなか巧みであり、そして相変わらずの面白さ。
 ただ、どうなんだろう。長編ゆえか著者がぶたぶたのキャラクターに踏み込みすぎているのが気になった。あまりやりすぎると、せっかくの「ぶたぶた」という存在が醸し出すミステリアスな空気が薄れ、単なる受け狙いのキャラクターものに成り下がる危険も孕んでいるのではないか。余計なお世話かもしれないが、個人的にはもう少し控えめなぶたぶたが希望である。


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 矢崎存美『ぶたぶた』を読む。
 数年前にはネット上でも少し話題になっていた本だが、なんせ徳間デュアル文庫というハイティーン向きのシリーズだし、主人公がぶたのぬいぐるみだしということで、当時はそれほど興味をそそられなかった作品である。別にそういうジャンルが嫌いとかいうわけではないのだが、可愛らしさを全面的に押し出した装丁などからわざとらしさを感じ、敬遠してしまったのかもしれない。けっこう前のことなのでもうはっきり覚えちゃいないのだが。
 で、今回はたまたまブックオフで見つけ、たまたま読んだわけだが、想像していたよりははるかに面白かった。いや、面白いというよりは、やっぱり和むというべきだろう。
 まず感心するのは、生きている「ぶたのぬいぐるみ」=「山崎ぶたぶた」の扱いや作中人物との距離感である。ぶたぶたの不思議(なぜ生きているのか、食事をどうやって食べているのか等々の疑問)に対しては作中でさらっと流すほか、主人公を人間側においたり、ぶたぶたを狂言回し的に使うことで、ファンタジー色を意識的に抑えている感じだ。これによってドラマがより自然に浮かび上がり、結果としてハートウォーミングな物語にありがちなあざとさも抑えられ、意外にも大人のための物語に仕上がっている(まあ、設定だけでも十分にあざといという話もあるが)。
 ただ、狂言回しとは書いたが、ぶたぶたの存在感はそれでも十分に大きいし、ストレートにぶたぶたが主人公になるような話もある。しかし控えめな中年のおじさんと思しき設定がかなり効いており、この性格設定がなければ、ここまで癒しの力は生まれなかっただろう。
 連作短編集という形も成功した理由のひとつか。ひとつひとつの話はワンパターンといえばワンパターンだ。ぶたぶたと偶然に知り合った人たちが、自然体で生きるぶたぶたと交友することによって、自分の生き方もちょっぴり素敵な方向に軌道修正していくという流れがほとんど。単品でも十分にいけるが、各作品に微妙につながりをもたせることで、ラストの話がいっそう効果的になっている。
 ちなみに本書を読んで、フィービ&セルビ・ウォージントンの『○○やのくまさん』シリーズを思い出した。これは「郵便屋さん」や「パン屋さん」に扮したくまのぬいぐるみの一日を著した絵本のシリーズで、もしかしたら著者はこのシリーズをどこかで意識していたのかもしれない。気になった人はだまされたと思って、そちらも読んでみてください。きっと気に入るはず。


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