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 先日、予約注文しておいた『天野喜孝 乱歩幻影画集』が届いた。
 その昔、といっても八十年代後半だから三十年ほど前のこと。講談社から「江戸川乱歩推理文庫」が刊行された。今でもミステリマニアにはコレクション入門編みたいな扱いをされているから、ご存じの方も多いだろう。今でこそ光文社文庫版の全集もあり、当時に比べるとその価値もやや落ちてはいるが、貴重な作品も採られており(同時にいろいろな問題もあったのだが、それはまた別の話)、非常に人気の高い全集だったのだ。
 本書はそんな「江戸川乱歩推理文庫」のカバー絵をまとめたものである。

 天野喜孝乱歩幻影画集

 イラストを描いた天野喜孝については今さら説明するまでもないだろうが、念のため書いておくと、もともとはアニメ制作会社のタツノコプロダクション出身。『タイムボカン』なんかも彼のキャラクターデザインである。イラストレーターとして独立後は、その繊細で妖艶なタッチを活かしSF誌などで活躍。ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズのキャラクターデザインで大きくブレイクし、広く一般にも知られるようになった。
 彼が「江戸川乱歩推理文庫」のカバー絵を請けたのは、正に「ファイナルファンタジー」の仕事を手掛けているときのこと。この二つの大きな仕事を天野喜孝は同時に進めていたわけである。

 さて肝心の内容だが、カバー絵を集めたものなので、基本的にはそれ以上でも以下でもない。とにかく大きな判型であの妖しい絵の数々を見せてくれるのだから、ひとまずの役目は果たしたといえる。
 とはいえ、それだけではさすがに芸がないというわけで、プラスαもなかなか頑張っている。描き下ろしが二点にラフや未発表イラスト、著者インタビューがそれ。ただし、お値段やページ数を考えると、それでも正直きついかなぁというレベル。もちろん乱歩だけでなく天野喜孝に思い入れがあるかどうかで価値は変わるだろうが、個人的にはぎりぎりセーフぐらいか。

 個人的注目はやはりインタビュー記事。これまで知らなかったエピソードもあり興味深い。それだけに見開き2ページ程度で終わらせず、せっかくだから全作品についてひと言ずつでもいいからコメントはほしかった。
 インタビュー中で面白かったところでは、やはり制作秘話。天野喜孝の乱歩体験はごくごく一般的なレベルどまりで、子供の頃の少年ものや、大人になってからのテレビドラマのイメージがほとんど。装画を請けるにあたり、あらためてすべてを読む時間もないことから、完全に作品のタイトルだけでイメージを膨らませて描いたという。しかもイメージが定まらない場合、二種類の絵を描き最後にセレクトするということもやったそうだから、天野喜孝の制作におけるスタンスがうかがえて面白い。
 上でも書いたように、本書にはそんな没になった絵も含まれているので、違いを比べてみるのも一興かと。

 ちなみにカバー絵は描き下ろし。女装バージョンの小林少年である。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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