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 スティーグ・ラーソンの『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士(下)』を読む。これにてミレニアム・シリーズはすべて完了である。

 ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士(下)

 『〜2火と戯れる女』の続編というよりは、『〜2火と戯れる女』が全然終わっていなくてそのまま話が続いている体でスタートしたこの物語。つまりのっけから物語が大きく動いている状態だけに、これまでの作品で感じた前半がややもたつくという弱点は、まったく気にならなかった。むしろ疾走感やテンポの良さという面ではこれまででも最上の部類で、敵味方の虚々実々の駆け引きが堪能できる。
 ただ、その駆け引き自体はそれほど凝ったものではなく、安易な方に流れているかなという印象もやや受けるのだが、とりあえずサービス精神はかなりのものだ。リスベットをはじめとするキャラクターの魅力、スウェーデンにはびこる社会問題への提言など、このシリーズの魅力はいくつかあるが、もしかすると最大の持ち味はこのエンタメ性にあるのではないかと思うようになってきた。

 本シリーズの最大の魅力はリスベットというキャラクターにあることにはまったく異論がない。ただ、そこだけに目を奪われていると、ラーソンのエンターテインメントに対する意識の高さ、そして、それを具現化するための小説の巧さを見逃してしまいがちだ。
 例えば、よくいわれることだが、ミレニアム・シリーズはミステリのジャンルを横断しているという大きな特徴がある。『〜1ドラゴンタトゥーの女』では本格ミステリ、『〜2火と戯れる女』ではサスペンス小説あるいは警察小説、そして本書ではスパイ小説あるいはリーガルミステリという具合。
 形だけならその辺のミステリ作家でも可能だろうが、ラーソンはそのすべてを相当な水準で書き上げているのが素晴らしい。それまではミステリプロパーでも何でもなかった彼だが、ミステリを読み込んでいることは疑いようがなく、かなりのプランをもってこの三部作に臨んだことがうかがえる。おそらく彼はこれを狙ってやっていたはずだ。

 また、そういう全体の構成を成立させるため、各ジャンルに主人公に相当するキャラクターを配置しているのも巧い手だ。リスベットやミカエルだけでなく公安警察や警察、弁護士などもに光るメンバーを配し、それぞれにしっかりした背景をもたせて事件に絡ませる。若干、冗長になる場面もないではないが、物語がより豊かになる側面は認めざるをえない。
 まあ別段、珍しい手ではないのだけれど、それぞれに独自の魅力が生まれ、実に効果的である。もともとスケールの大きい物語ということもあるだろうが、おそらく著者の頭のなかには、将来的なシリーズの派生ということもあったのではないだろうか。

 というわけで概ね満足できるシリーズではあったのだが、実をいうと『〜3眠れる女と狂卓の騎士』については娯楽性が強すぎて、個人的には『〜2火と戯れる女』の火傷しそうな熱さ、あるいは『〜1ドラゴンタトゥーの女』での暗さの方が好みだ。『〜3眠れる女と狂卓の騎士』では、本シリーズ最大の弱点「リスベットのハッカー技術による何でもあり」の部分がより際だつのも不満である。とはいえかなりハードルを上げての意見なので、十分楽しめることは保証できる。
 リスベットのスーパーウーマンぶりが納得できないとか、スウェーデン人の性意識がルーズすぎて感覚的にだめとか(苦笑)、そういう人以外には諸手を挙げてオススメする次第である。


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 昨日はDVD『SHERLOCK(シャーロック)』のシーズン1が届き、本日は論創ミステリ叢書53巻の『大下宇陀児探偵小説選II』を購入。以前に比べると欲しいものをだいぶ絞ってはいるのだが、この辺は仕方ないよね>って誰に言ってるのか?
 ただ、論創ミステリ叢書は新装開店してからすっかりペースが速くなって嬉しい悲鳴状態。次回は蒼井雄ということだが、これまた嬉しいところを。



 論創ミステリ叢書も読みたいのだが、今はひとまずラーソンのミレニアム・シリーズを消化中。ようやく最後の作品『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士』にとりかかり、本日、上巻を読み終える。

 ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士(上)

 なんせ『ミレニアム2火と戯れる女(下)』の解説で、「2と3は続けて読むべし」みたいなことが書かれていたわけである。1と2は一応独立した作品だが、3は2の完全な続編、したがって2と3はイッキ読みがおすすめなのだ云々。いや、表現は勝手に変えているが、だいたいこういう内容のことが書かれていたのである。
 本当は口直しに別の本でワンクッションを入れたかったのだが、そういうことなら仕方あるまい。と、手に取ってはみたものの、いやあ、これって続編どころか、2が全然終わってないじゃん(笑)。
 『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士』の上巻というより、『ミレニアム2火と戯れる女』の第3巻目を読んでいる感じなのだ。それぐらい普通にストーリーが続いているのである。これでは知らずに3から読んだ人がいたら、何のことやらさっぱりではなかろうか。

 というわけで普段なら粗筋めいたものを書くところだが、3の話をすると必然的に2のネタバレになりかねないゆえ、本日はここまで。感想は下巻読了時に。


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 現代的社会派の衣をまといつつ本格ミステリの香りも漂わせた『ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女』から一転、アクションとサスペンスを全面に押し出し、警察小説の味わいも備えた『ミレニアム2火と戯れる女』。まずはたっぷりと堪能させていただきました。

 ミレニアム2火と戯れる女(下)

 ミカエルとリスベットのダブル主人公、いや7対3でミカエルの物語といってもよかった前作だが、本作は圧倒的にリスベットのための物語である。
 優れた情報収集能力と映像記憶能力を持つ天才的ハッカー。そればかりか数学においても非凡な才能を有し、おまけに格闘術やドライブテクニックにも長ける。だが感情表現やコミュニケーションについては極度に苦手で人との交わりを嫌う。それがリスベット・サランデル。
 このとてつもないスーパーウーマンぶりによって、逆に感情移入できないとか現実離れしすぎているといった批判があるのはわかる。本作でもハッカーの能力が活かされすぎて、御都合主義的に進むところも少なくないのだ。
 だが、社会問題を扱ったり、語り口がリアルなだけに勘違いしやすいのだが、このシリーズはもともと虚構性が強く、ケレンたっぷりの物語なのである。何よりもまずエンターテインメントなのだ。巨悪を炙り出すシステムとして、リスベットは必要欠くべからざる存在であり、彼女の強い個性なくしては物語を淀みなく(しかも魅力的に)流すことは難しかったのではないだろうか。スーパーウーマン、けっこうではありませんか。

 とはいえ、本作がケレンだらけの爽快感溢れる物語なのかというと、決してそんなことはない。それらもひとつの魅力ではあるけれど、本作における最大の謎はリスベットの過去である。人間としての彼女に迫ることこそが最大の読みどころなのだ。
 ただし、真実は苦い。あまりに苦い。感情移入こそできないかもしれないが、我々はリスベットの体験を通して、人間の業の忌まわしさを受け止め、そして結局はスウェーデンの抱える問題について考えざるを得ない。社会から個へ、個から社会へ。

 少し注文をつけておくと、中盤では警察、ミカエル、アルマンスキーの三竦みでリスベットを追う展開になるのだが、この捜査競争が軸になるのかと思いきや、それほど大した流れにならないのは物足りなかった。結局はいつでもリスベットが先を行くというパターンで、警察が無能扱いにされるのはともかく(苦笑)、三竦みによるドキドキハラハラ感にはもっとスポットを当てても良かったのではと思う次第。

 ラストはあっけないというか、いささか唐突に幕を下ろす。解説によるとどうやらこのまま『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士』になだれ込むようなので、次は他の本を間に挟むことなく、一気に取りかかったほうがよさそうだ。


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 スティーグ・ラーソンの『ミレニアム2火と戯れる女』を、とりあえず上巻まで読了。

 天才的ハッカーでもある警備会社の女性調査員リスベット。彼女の後見人に指名された弁護士ビュルマンは、かつてその地位を利用してリスベットを暴行したが、逆に徹底的な報復を受け、生きる気力をなくしていた。だが、ある出来事をきっかけに再びリスベットへの憎悪が燃え上がり、復讐の計画を練り始める。
 そんな頃、月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルたちは、スウェーデンにはびこる人身売買問題を大々的に取りあげる決定を下していた。その企画の中心として活躍するジャーナリストのダグと恋人ミアは、調査の中で「ザラ」という謎の人物の存在を知り、さらなる調査も進めていた。
 一方、長期の旅行に出ていたリスベットは、偶然ダグの調査を知り、独自に「ザラ」の調査に乗り出していく。だが、そんな彼らを狙う者たちの姿があった……。

 ミレニアム2火と戯れる女(上)

 ほほう。前作『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』は、登場人物や設定は現代的なれど、意外なほど謎解きやクラシック要素の強いオーソドックスな作品だったが、本作はガラリと趣向を変えてきている。謎解き要素は影を潜め、徹底的にストーリーの面白さとサスペンスで押す現代的な作風である。
 前作では第三者的に事件に絡んだリスベットが、本作では完全に渦中の一人となり、彼女を中心に動くのも大きな変更点。キャラクターの特徴を考えれば、確かにこういうタイプの作品の方が、その魅力は最大限に活かせるだろう。

 ただ、これは前作と同様の不満点だが、事件が動き出すまでの助走が長すぎである。事件そのものは上巻の終盤でようやく動き始めるのだが、そこからの展開がいいだけに、なんともバランスが悪い。書き込みが悪いわけではないのだけれど、ラーソンの場合、出てくる人出てくる組織すべてを説明しないではいられないところがある。通行人Aを通行人Aとすることに対し、我慢ができないのかも。とにかくいろいろな意味で饒舌なのである。
 とはいえ、上で書いたように上巻終盤からの展開が一気に盛り上がるので、それはこの際、目をつぶろう。下巻に期待。


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 ううむ、ほんとに最近は夜に弱くなってしまった。寝る前の読書もそうだが、午前様まで飲んでいると、いっそうそれを痛感する。それほど飲んだわけではないのに、結局、本日の午前はつぶれて使いものにならず。昼に武蔵野うどんを食いにでかけ、ようやく復活する。

 ようやくといえばスティーグ・ラーソン『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女(下)』もやっと読了。
 上巻では少々まどろこしかった展開も後半に入って徐々に動き出す。事件の糸口が掴め、少しずつ見えてくる事件の様相。そしてその過程において、二人の主人公、ミカエルとリスベットがついに出会うことになる。そこから先はまさに怒濤の急展開。驚愕の真相が明らかになり、さらにはミカエルとリスベットがそれぞれ抱える問題にも、ひとつの決着がつけられようとする。

 ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女(下)

 うむ、面白い。エンターテインメントとして十分に魅力的だ。当時の年末ベストテンを賑わせたのも当然と思わせる作品である。
 ただ、同じベストテンにランクインするような他の作品と比べ、圧倒的に差があるわけではない。むしろ気になる部分もいろいろと感じられ、世界的ベストセラーとなった理由までは正直わからん(苦笑)。

 まあ思いつくままにポイントを挙げてみよう。
 まずミステリとしての趣向をいろいろ盛り込んでいるところは、やはり評価されていい。
 嵐の山荘パターン、見立て殺人、暗号など、ミステリ好きを惹きつける手として効果的なのはもちろんだが、これは事件を様々な角度から考えさせることになるし、ストーリー的な伏線としても巧いやり方をとっている。ただ、ひとつひとつがそれほど凝ったネタとはいえず、アッと驚くほどのトリックがないのは残念。
 ミステリという部分では、むしろ一枚の写真をベースにしてそこから想像と推理を広げ、次々と手がかりを連鎖させてゆく展開に感心した。この辺りはさすがジャーナリストの面目躍如といったところか、手がかりをひとつひとつ検証しつつ駒を進めるといった趣で、知的スリルもあり、非常にワクワクさせてくれる。
 そのくせハッキングでストーリーに関わる重要なネタを入手したりというのは、あまりに都合主義的でいただけない。これはミステリ要素だけでなく、小説の要素としてもかなり痛い部分だ。これがジェフリー・ディーヴァー辺りであればハッキングで得た情報をさらにひねったりするところだが、残念ながらそれはない。
 リスベットというスーパーウーマンのキャラクターは非常に魅力的なのだが、あまりに特殊能力を与えすぎたのは著者の失敗だろう。これによってストーリーが安易に流れすぎている個所は意外に多い。

 ミステリから離れたところでは、やはりスウェーデンが抱える社会問題を告発している部分は見逃せない。巧いなと思ったのは、経済や報道の在り方といったソーシャルな問題はミカエル、差別や薬物問題といった個人の抱える問題はリスベット、メインの事件ではまた別のテーマというように切り分け、主要な登場人物とリンクさせてテーマを掘り下げていく部分。
 ただし、狙いはいいが、それほどこなれていないのが惜しい。それぞれのテーマにまつわる展開が独立しすぎており、非常にちぐはぐな印象を与えるのである。テーマ自体は上巻でけっこうしっかりと書き込まれている。それがストーリーが進むにつれ融合していくのが理想なのだが、結局のところミカエルはミカエル、リスベットはリスベットでそれぞれの問題を追求するにとどまり、互いに干渉することはない。この平行線は最後まで続くのだが、もともとそういう狙いなのか、それとも盛り込んだはいいが、まとめきれなかっただけなのか。
 それが最もストーリーに悪影響を与えているのが、いわゆる後日談的ストーリー。事件が一応の解決をみたあとが長すぎるのである。余韻を味わう暇もあらばこそ、ミカエルとリスベットそれぞれのテーマに通じる内容がけっこうな分量で入ってしまい、本来の事件の意味合いが薄れてしまうのである。しかもストーリーをメールのやりとりで見せるなど、あまり意味のない演出がわずらわしい。

 ううむ、なんだかケチの方が多くなってしまったが、最初に書いたようにトータルでは十分面白いので念のため。真相は驚くべきものだし、基本的なストーリー展開も面白い。キャラクター設定もテーマも悪くない。スウェーデンという馴染みの少ない国についての実情も知ることができるなど、情報小説としての価値もある。読み物としては十分な出来なのである。
 ただ、それらの評価も、ミステリというよりは、やはりエンターテインメントとしてのものだという気はする。
 近いうちに2も読み始める予定だが、こちらは1以上に評価が高いそうなので一応は期待しておこう。


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 遅まきながらスティーグ・ラーソンの『ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女』にとりかかる。
 いうまでもなく、最近はやりの北欧ミステリの火付け役。古いところではペール・ヴァール&マイ・シューヴァル、最近ではヘニング・マンケルとか、これまでも大きく評価された北欧のミステリ作家はそれなりにいたのだが、スティーグ・ラーソンがここまでブレイクし、他の北欧作家の紹介にまで大きく影響するとは誰も予想できなかったのではないだろうか。
 もともと版元の仕掛けはけっこう強気だったけれど、映画化、文庫化、映画のリメイク、DVD化と話題が途切れなかったのも大きい。なわけで、ここにきて、ようやく管理人も読んでおこうかという気になった次第である。

 雑誌「ミレニアム」の発行責任者であり有名ジャーナリストでもあるミカエル。彼は大物実業家ヴェンネルストレムの不正行為を暴露する記事を発表したが、名誉毀損で訴えられ、有罪判決を宣告される。
 「ミレニアム」を離れる決意をしたミカエルだが、そんな彼を密かに調査する者たちがいた。大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルである。ヘンリックは弁護士フルーデを通じ、ある警備会社にミカエルの身辺調査を依頼し、リスベットという女性調査員がその任にあたった。
 ミカエルが信頼に足る人物だと確信したヘンリックは、さっそくミカエルを呼び出し、ある仕事を依頼した。内容は二つ。表向きの依頼は自伝の執筆協力、そして真の依頼は、四十年前に姿を消した孫娘ハリエットの失踪事件の調査であった……。

 ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女(上)

 上巻まで読んだところでは、ほとんど動きらしい動きはなし。ミカエルがハリエット失踪事件の謎にとりかかってはいるが、まだ大きな糸口は掴めず。エピソードを重ねつつ、主要な登場人物の人となりを紹介するといった趣きである。やや詳細に過ぎるのではというまどろっこしさも感じないではないが、語り口は悪くなく、基本的に人物造形などはうまい。
 特に気になる人物としては、まずミカエル。著者自身がジャーナリストだったこともあって、ミカエルを著者の分身というふうにとらえるのは容易いが、むしろ著者の考えるジャーナリストの理想像と見てもいいかもしれない。
 もちろんリスベットは言うに及ばず。北欧社会の抱える問題を一心に受けもつ存在であり、彼女がどういうふうに事件に関わり活躍するのか興味津々である。その他ではセシリアというヘンリックの姪が面白い存在か。

 とりあえず本日はここまで。続きは下巻読了時に。


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