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 論創海外ミステリからルーーパート・ペニーの『警官の騎士道』を読む。既訳の『甘い毒』、『警官の証言』で、本格ミステリとしてのディープ度合いは重々理解していたが、本作はそれらの作品をさらに上回るガチガチの本格ミステリであった。

 こんな話。ナイフ収集家の元判事サー・レイモンド・エヴェレットが自宅で刺殺された。凶器は被害者のコレクション。容疑者と目されたのは、過去、エヴェレットに有罪宣告されたアルバート・カルーである。彼はのちに冤罪であることが判明し、エヴェレットに脅迫状を出し続けていたのだ。
 しかし、捜査が始まるとすぐに新たな容疑者として、被害者の姪、イーヴリンが浮上する。ビール警部はイーヴリンが犯人とは思えず、粘り強く捜査を進めていくが……。

 警官の騎士道

 あっぱれ。探偵小説としての面白さ以前に、ここまで本格探偵小説としてのスタイルを固持する、その姿勢にまず敬意を表したい。
 以前、『警官の証言』を読んだときにも感じたことだが、論理やフェアプレイへのこだわりが尋常ではない。見取り図やダイムテーブル、供述書などの小道具はもちろんだが、ストーリーの大半が尋問や推理、議論で占められるミステリが果たしてどれだけあるだろう。
 少々やり過ぎの嫌いはあるが、クラシックミステリのエキスだけを抽出したような作品はなかなか得がたいものであり、それだけでも読む価値があると言えるだろう。

 ただ、これまた『警官の証言』の感想でも書いたことだが、それが小説としての面白さに直結するわけではないことが残念だ。上質な本格ミステリという表現に嘘はないが、あまりに地味な展開に、退屈することもしばしば。被害者エヴェレットの遺言が発表されるあたりから多少は盛り上がってくるが、それまでがしんどい。
 生真面目な本格であり、好感は持てるのだが、それだけでは読者の気持ちは掴めないんだよなぁ。ううむ、複雑。

 なお、作者的には犯人の動機について引っ掛かりがあったようで、作中でも言いわけがましく説明しているが、これは現代の感覚からすると全然許容範囲。当時でもそれほど気にするレベルではないと思いのだが、こういうところにも作者の生真面目さが表れているようで興味深い。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ちょっと仕事のバタバタとオリンピックで滞っていた読書も少しずつ上向きに。本日の読了本は論創海外ミステリからルーパート・ペニーの『警官の証言』。

 雑誌の副編集長アントニー・パードンは、知人のアデア少佐の屋敷に滞在していた。その目的はなんと宝探し。アデア少佐は競売会で競り落とした一冊の古書から、ある屋敷に財宝が隠されていることを知り、その屋敷を買い取って財宝を探し出すことにしたのだ。宝探しのメンバーが集められ、やがて財宝の一部と思われるルビーが発見されたが、まもなく少佐が密室で殺害された……。

 警官の証言

 著者のルーパート・ペニーはほとんど日本で知られていない作家だろう。以前、国書刊行会から世界探偵小説全集の一冊として『甘い毒』が刊行されたが、刊行されたことは話題になっても内容自体はそれほど評判にならなかったと記憶する。
 『甘い毒』もそうだったが、本書の特徴も——つまりはルーパート・ペニーの作風と言うことになるのだろうが——論理性へのこだわりだろう。基本的に関係者への聞き込みや捜査陣の推理や議論で物語が進み、<読者への挑戦>や手がかりの一覧など、実に本格愛に満ちあふれた内容。この徹底した論理への傾倒が、ガチガチの本格好きには堪えられないのだろうが、ストーリー的には地味すぎて、もう少し動きやサプライズはあってもいいだろう。それが『甘い毒』の評価にはともかく話題性には少なからず影響したはずである。
 ただ、著者もそういう自作の長所短所は自覚していたのかだろう。本作でも事件は非常に地味ながら、密室や暗号といった魅力的要素は盛り込んでいるし、物語の一部と二部で語り手を交代させ、それが密室トリックにもつながる技を披露するところなどはさすがである。練りに練った、というのはこういうのを言うのだろう。
 そこはかとないユーモアも味つけになっており、全体的には上質なミステリである。

 欲をいえば、上でも書いたが事件自体の魅力であったり、物語の動きであったり、もう少し読ませる工夫は欲しかったところだ。探偵役ピール主任警部の個性も弱く、全体的に真面目すぎるか。
 例えばカーのようなアクの強さ、バークリーのような意地の悪さがあればなお良かったし、もっと翻訳が進んでいたのではなかろうか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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