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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

二本松嘉瑞『宇宙大怪獣ギララ』

 こじらせてしまった夏風邪がいっこうに回復しない。ピークは越えたようなのだが、この週末も最低限の家事や買い物を済ませた後は、ほとんど家でダウン。仕事中は気合いで乗り切っているけれど、そのツケが休みで一気に出る感じ。


 で、ダウンしながら肩の凝らない特撮映画をダラダラと消化。ものは『宇宙大怪獣ギララ』。公開は1967年、監督は二本松嘉瑞。
 ゴジラで怪獣映画が人気を博した昭和三十年代。とはいえ特撮は非常にコストもかかり、他の映画会社もそう簡単には参入できなかった。しかし、テレビでも『ウルトラQ』のような特撮ドラマが放映されるようになると空前の怪獣ブームが沸き起こり、ようやく他の会社も怪獣映画に乗り出していく。大映は既にガメラを送り出していたが、日活はガッパ、そして松竹は本日紹介するギララを生み出した。

 火星へ向かう宇宙船が謎の未確認飛行物体と遭遇し、行方不明となる事件が頻発していた。富士宇宙開発局は新たな宇宙船AABガンマー号を送り出し、謎の解明を急ぐが、またしても謎の飛行物体の襲われてしまう。しかしクルーの活躍によって何とか危機を脱し、機体に付着した奇妙な発光物体を持ち帰ることに成功した。
 だが喜びも束の間、謎の発光体は研究室から消え失せてしまい、後には三本指のような足跡が残されていた。その翌日、富士宇宙開発局の基地付近で怪獣が出現する。
 ギララと名づけられた怪獣は、エネルギーを求めて発電所を狙っていた。自衛隊の攻撃は通用せず、エネルギーを吸収して巨大化するギララは、さらなるエネルギーを求めて街を破壊し続けるが……。

 宇宙大怪獣ギララ

 実はこれが二回目の視聴になるのだが、初めて観たのはもうン十年前になる。そのときはそれなりに楽しんだ記憶があるのだが、いやあ、あらためて観るとこんな微妙な映画だったのか(笑)。
 宇宙を舞台にしているシーンも多く、全体的にSF的な味つけが濃厚な作品である。科学考証のためにSF作家の光瀬龍まで参加しているおかげか、基地や宇宙船などのディテールは割ときちんとしている。何よりギララの宇宙怪獣然としたフォルムが恰好いい。
 でもいいのはそこまで。何というか、結局、特撮怪獣映画を作り慣れていないのか、詰めが甘いというか粗いというか。未確認飛行物体が何ものだったのか最後まで説明はされていないし、ストーリー上で重要な場面が省かれていることも多い。ギララの動きも怪獣というよりは猿っぽくて、前に観たときは気にならなかった部分がいちいち引っかかってしまう。

 ただ、特撮から少し離れてみると、主人公とヒロイン二人の三角関係が意外なくらいしっくりとストーリーに溶け込んでおり、変なところで感心してしまう。ただ、ここでも微妙なところがあって、主人公が見るからにガテン系の和崎俊也が演じており、失礼ながらこれがなんとも似合わない(笑)。
 例えば東宝なら、ここに宝田明とか佐原健二とか軽めの二枚目あたりを配するはずで、こういうところにも松竹の経験不足がうかがえる。

 どう考えても凡作ではあるのだが、怪獣映画ファンにはやはり見逃せないオンリーワン的な一作。


金子修介『ガメラ3 邪神覚醒』

 平成ガメラの第三作=完結編『ガメラ3 邪神覚醒』を観る。監督は前二作と同様、金子修介。公開は1999年。

 奈良県明日香村で親戚に引き取られて暮らす二人の姉弟がいた。二人は四年前のガメラとギャオスの戦いによって両親をなくし、そのため中学生の姉、比良坂綾奈はガメラを激しく憎んでいた。その頑なすぎる言動から周囲に溶け込むこともできず、同級生との度胸試しに応じて、古くから「柳星張」が眠ると伝えられている祠へ入ってゆく綾奈。彼女はそこで不思議な卵状のものを発見する。
 そんな頃、渋谷で二匹のギャオスが出現した。かつてガメラはレギオンを倒すため、地球の生命エネルギー”マナ”を大量消費したが、それによって地球環境のバランスが崩れ、世界各地でギャオスが大量発生する兆しがあったのだ。二匹のギャオスは追いかけるようにして現れたガメラによって駆逐されたが、渋谷の被害は甚大で、政府や世論はギャオス以上にガメラを危険視するようになる。
 一方、絢奈の見つけた卵からは奇妙な生物が生まれていた。絢奈は以前に飼っていた愛猫の名前からイリスと名付けたが……。

 ガメラ3 邪神<イリス>覚醒

 シリーズの掉尾を飾る作品であり、映像やCGなどは三作中でもピカイチ。ガメラの造型ももっとも迫力があり、怖い怪獣映画ということであれば文句なし。日本の怪獣映画もここまできたかと思わせる作品である。
 だが、その一方で、シリーズ全体の整合性やストーリーの決着をつけるため、明らかにネタを詰め込みすぎ。本来、この作品でもっとも大きく謳いたいのは、正義の味方である怪獣が敵と戦うことで実はより大きな被害を与えているのではないかというもの。それを体現するヒロインがガメラを憎みイリスを生み出した比良坂綾奈である。
 だが本作には、他にもギャオスの謎を追う鳥類学者の長峰真弓、ガメラの存在意義について考えるガメラの巫女たる草薙浅黄、内閣情報調査会所属で巨大生物被害災害審議会メンバーの朝倉美都、三名のヒロイン格の女性がおり、それぞれにドラマがあるような状態。個々のネタは面白いのに、それぞれが消化不良になってしまっている。
 特に朝倉美都とそのブレーンの男のドラマは、ギャオスとガメラを生み出した古代文明に直結する話で、それだけで一本映画が撮れるネタだけに実にもったいない。

 圧倒的な好評をもって迎えられた平成ガメラシリーズ。そのラストを締める作品ということで、スタッフとしてはやれるだけのことはやりたかったに違いない。だが、ストーリー的に空回りの感じは否めず、ビジュアルがいいだけに何とも惜しい一作であった。個人的にはこの三作目のガメラで一作目を観たかったなぁという気持ちである。


金子修介『ガメラ2 レギオン襲来』

 『ガメラ2 レギオン襲来』をブルーレイで視聴。先日、購入した『ガメラ トリロジー 平成版ガメラ3部作収録 Blu-ray BOX』の一本で、平成ガメラシリーズの第二作。監督はもちろん金子修介。公開は1996年。

 前作から一年後。北海道に流星群が降り注ぎ、その隕石のひとつの落下現場が発見されたにもかかわらず、その場から隕石が発見できないという不思議な事件が起こる。
 一方、札幌市青少年科学館の学芸員である穂波碧は、流星群と同じタイミングで北海道に現れたオーロラの調査を進めていた。やがて隕石を調査する自衛隊の渡良瀬佑介二等陸佐らと出会い、彼女は隕石が自力で移動したのではないかという仮説を披露する。その目的地は札幌。
 その仮説を立証するかのように、札幌の地下鉄で全長三メートルはあろうかという巨大な虫の大群が出現。同時に高さ数十メートルもある奇怪な草体が発生した。
 流星群の正体は判明したが、事態はさらに深刻化する。虫と植物は共生関係にあることが判明し、虫はシリコンを餌として、その分解過程で発生した高濃度の酸素で草体を育てている。その高濃度酸素の環境下では、地球の大部分の生物は生存することができない。さらに驚くべきことに、草体は種子を宇宙に放って繁殖するものと推測されたが、その際の爆発力は札幌を壊滅させるほどのパワーを持っているというのだ。
 草体を一刻も早く爆破しなければならない。自衛隊の準備が進む中、三陸沖では海中を移動する巨大な物体が確認された……。

 ガメラ2 レギオン襲来

 第一作の『ガメラ 大怪獣空中決戦』もよかったが、これも実によろしい。自衛隊が怪獣という災害(ガメラも含め)に対し、どのように対処していくのかという、大人のためのファンタジーをきっちりと作り上げている。
 「ガメラは正義の味方」という、怪獣映画としてはどうなんだ?という大前提に対しても、前作のとおり古代文明によって生まれた地球を護るための超生物兵器という設定が効いているし、そこを踏まえた上でなおかつ人間とガメラの対立構造も描いているので、とにかくフォローがしっかりしている。
 もちろん細かい矛盾やアラはいくらでも突けるのだが、それは怪獣映画に限った話ではないのでまあ許せる範囲。実をいうとファンタジーをファンタジーとして捉えぬまま、馬鹿正直に怪獣映画をやりすぎると三作目の『ガメラ3 邪神覚醒』のようなことになってしまうのだが、それはまた別の機会に。


金子修介『ガメラ 大怪獣空中決戦』

 本日より年末年始の休暇。せいぜい本と映画でリフレッシュする予定だが、忘年会続きだったので酒は少し控えるかな(苦笑)。

 本日はBlu-rayディスクについて少々。
 何をいまさらの話なのだが、Blu-rayというのはDVDと違って、リージョンコードが日本と北米では同じことを知っているだろうか。つまりDVDとは異なり、アメリカで発売されたBlu-rayが日本でもそのまま再生できるということだ。
 そして、ここが大きなポイントだが、アメリカではBlu-rayが日本に比べて圧倒的に安い。この北米版は日本でもAmazonなどで簡単に買えるため、日本版よりそっちを買った方が断然お得なのだ。
 でも英語が苦手な人には、日本語字幕がなかったら意味ないじゃん、ということにはなる。その点もご心配なく。北米版は最初から数カ国語の字幕が用意されているものが多く、日本語字幕もけっこうな割合で対応しているのである。さすが人種のるつぼアメリカ。
 また、邦画そのものが北米で発売されているケースも意外とあるようで、こちらはそもそも字幕自体が必要ない。だから特典とか吹き替えにこだわりがないなら、こういった北米からの輸入Blu-rayがもっともお買い得ということになる。厳密なところはわからないが、ざっと見た印象ではだいたい三分の一程度の価格で購入可能のようだ。中古ショップより安いじゃん。
 何を今頃そんな当たり前のことを言っているのだと、笑わば笑え(笑)。確かBlu-rayが出始めの頃はそんな話を聞いたような記憶もあるのだが、なんせこちらは遅れてきたBlu-ray者。こういう素敵な手段があることを今さらながら知って、有頂天になっている今日この頃である。


 そんなわけで購入したのが『ガメラ トリロジー 平成版ガメラ3部作収録 Blu-ray BOX』。もちろん北米盤。これがなんと1500円だものなぁ。日本版は特典映像もたっぷりついているとはいえ12000円もするので、この差がどこからくるのか知りたいものである。
 で、さっそく平成ガメラシリーズの第一作『ガメラ 大怪獣空中決戦』を観る。1995年、金子修介監督作品。

 ガメラ 大怪獣空中決戦

 太平洋上で発見された謎の巨大珊瑚礁。しかもその珊瑚礁は潮の流れにのって日本へ接近しているた。さっそく調査隊が現地へ向かうが、そこで謎の石版と大量の勾玉を発見する。
 同じ頃、九州の姫神島でも奇怪な事件が発生していた。島民が「鳥が!」という無線での言葉を最後に、消息を断ってしまったのだ。現地に向かった警察と鳥類学者の長峰は、そこで人を捕食する巨大な怪鳥を発見する。しかも三匹。長峰は危険を訴えるが、政府は貴重生物であるとして鳥を生きたまま捕らえることを決定、福岡ドームに誘い込み、囲い込む作戦を実行に移す。
 その作戦のさなか、太平洋上の巨大漂流珊瑚礁が正体を現した。カメの姿に似たその巨大生物は、怪鳥のいる福岡ドームを一直線に目指していくが……。

 要は平成版『ガメラ対ギャオス』ではあるのだが、平成ガメラの優れたところはほぼ言い尽くされているので、管理人があまり付け加えることもない。
 主なポイントをまとめておくと、人間視点でのカメラアングルの多用、構成や色遣いにもこだわった映像美、怖さを前面に打ち出した怪獣本来の姿、報道や政府、自衛隊の対応におけるリアリティの追求といったあたりで、まあ実によくやってくれている。
 これはひとことで言えば、大人の鑑賞に耐えうる怪獣映画になっているということであり、平成ゴジラシリーズが失ってしまっていたものを改めて確認させてくれた映画なのである。管理人も本作を初めて観たときは、ちょっと背中のあたりがゾクゾクしたものだ。
 予算があまりに少なかったため、場面場面で安っぽいところがあるのはご愛嬌。むしろその制限の中で怪獣映画の本質を追究した金子監督に敬意を表したい。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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