今年もあっという間の一年間。仕事は相変わらずだし終盤はプライベートでもバタバタしており、とりわけ忙しない一年だったような。体調的にもいろいろガタがきているから、常にごまかしごまかしやっていたような感じである。
そういえば、ここのところの忘年会で特に痛感したのが夜が弱くなったこと。徹夜なんてもってのほかで、飲み会でも一時頃を回るとかなり怪しい。まあ、歳も歳なんで無理すんなってことか。
さて、年末恒例の極私的ベストテン。管理人sugataが今年読んだ小説の中から面白かったものをジャンル不問で十作選んでしまおうという企画だが、読書量はここ数年の例にもれず低調この上なし。だが中身の方はなかなかいいものに出会えたような。っていうか今年は激戦すぎて順位付けにとにかく苦労してしまった。
とりあえずベストテンを見てもらおう。
1位
梶龍雄『海を見ないで陸を見よう』(講談社)2位
ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』(ランダムハウス講談社文庫)3位
レオ・ブルース『死の扉』(創元推理文庫)4位
ブライアン・グルーリー『湖は餓えて煙る』(ハヤカワミステリ)5位
アーナルデュル・インドリダソン『湿地』(東京創元社)6位
スティーヴ・ハミルトン『解錠師』(ハヤカワミステリ)7位
幸田露伴『文豪怪談傑作選 幸田露伴集 怪談』(ちくま文庫)8位
スティーグ・ラーソン『ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女(上・下)』(ハヤカワ文庫)9位
フェルディナント・フォン・シーラッハ『罪悪』(東京創元社)10位
フリードリヒ・デュレンマット『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』(光文社文庫) 1位の梶龍雄は
『透明な季節』と
『大臣の殺人』もそれぞれよかったので、ちょっとおまけして合わせ技で(笑)。描写力の巧さがトリックにまで高められたという点(叙述トリックというわけではないので念のため)、ジャンルをまたがっているようで、実はしっかり本格なんだという点がもろにツボ。
2位もジャンルクロスオーバー気味だが、こちらは完全に文芸寄り。ただし作者の企みはミステリ作家顔負けである。日本での版元は残念ながらつぶれてしまったが、この本もこのまま絶版にするにはあまりに惜しい。
3位は久々のレオ・ブルース。期待を裏切らない出来で、待った甲斐があったというものだ。
4位、5位、6位はけっこう順位適当。最近の翻訳物の当たりの多さはちょっと異常なほどで、早川や創元といった老舗の頑張りが特に目を惹く。5位、6位は各誌のベストテンを賑わせた今年の話題作なので今さら言うこともないのだが、4位のブライアン・グルーリーは一昨年の刊行ながらもう少し話題になっても良かった気がするので、あえて上位に。
7位はお気に入りの叢書で、ほぼ期待を裏切られることはない。当たりまえっちゃ当たり前なんだけど。
8位は何をいまさらのランクイン。まあ、読んだのが今年なのでしょうがない(笑)。ただ、今年の話題作あたりと比べると、個人的にはラーソンは一枚落ちる気がする。ま、好みもあるんだけど。
9位と10位はともにドイツ語圏からのシュール&不条理な内容の短編集。続けて読み過ぎると食傷気味にはなるが、インパクトはさすが。
上でも書いたが、今年は本当にどれを入れるか悩んでしまった。泣く泣く落とした作品としてはまずパトリック・クェンティンの
『俳優パズル』。クェンティンは他にも
『迷走パズル』と
『巡礼者パズル』を読めたが、つくづくシリーズは発表順に読むべきだよなぁと再確認。
他にはマイケル・コックス
『夜の真義を』、マイクル・コナリー
『真鍮の評決(上・下)』、ネレ・ノイハウス
『深い疵』あたりは全然ベストテンでもいいレベルなんだけれど、いかんせん席が埋まってしまった。どれもエンターテインメントとしては一級品なので、すべておすすめである。
クセのあるところでは、ロイ・ヴィカーズ
『フィデリティ・ダヴの大仕事』、連城三紀彦
『暗色コメディ』、羽志主水、水上呂理、星田三平、米田三星
『戦前探偵小説四人集』も記憶に残っている。まずこれらの作家名に馴染みがある人、という前提はつくけれど、どれも楽しめる作品ばかりであった
というわけで、今年も「探偵小説三昧」そろそろおひらきの時間となります。
今年も管理人の遊びにおつきあいいただき、誠にありがとうございました。それでは皆様、よいお年をお迎えください。また、来年、素敵な本との出会いがありますように!