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 エリック・キースの『ムーンズエンド宗の殺人』を読む。初めて読むアメリカの作家だが、店頭で見たときに帯のコピーがあまりにも奮っていた。こんな感じである。

”山荘に孤立した探偵学校の卒業生。不気味な殺人予告どおりに、密室殺人や不可能犯罪で殺されていく……雪の山荘版『そして誰もいなくなった』”

 正直、大きく出過ぎている感じがするし、とんでもない地雷のような予感もあったが(笑)、まあ、これだけ煽られたらさすがに見過ごすことが出来ず、ついつい買ってしまった。

 ムーンズエンド荘の殺人

 ストーリーは帯のコピーのまんまなのだが、まあ一応。
 探偵の養成学校の同窓生が校長に呼ばれ、山奥の別荘に集合する。そのまま探偵になった者もいるが、今では作家や司祭、用心棒など職業もさまざま。一見、旧交を温め合う彼らだったが、実は互いに秘密を持ち、それぞれがある思惑をもって集まっていた。
 だが、肝心の招待主である校長が姿を見せないどころか、やがて死体となって発見される。そして、外界とつながる手段がことごとく遮断されるにいたり、同窓生たちは真の招待主の目的が、別にあることを知る……。

 当然ながら『そして誰もいなくなった』を意識しながら読んでしまったわけだが、本家がそうであるように、本書もまた本格というよりはサスペンスものといった方が適切だろう。
 著者は本職がゲーム会社のパズルデザイナーということで、その経験が活きているのか構成は緻密である。細部まで矛盾が出ないようまとめる手際は素晴らしい。だからといって本格としてフェアかどうかというところは、これまた本家がそうであるように、いろいろと弱点を抱えている。確とした主人公を設けず、さまざまな登場人物の視点で語らせるから、そもそもフェアにやること自体かなりハードルが高いわけで、合理的な決着を求める結果として、意外に密室や不可能犯罪、真相に至るまでそれほど驚きがないのは残念。正直、トリックにそれほど見るべきところはない。

 ただ、先に書いたように、サスペンスとしてはなかなかよくできている。探偵学校の同窓生という設定に、やや痛いものを感じはしたが、登場人物たちは決してミステリマニアの学生などではなく(苦笑)、いたって年相応の大人として描かれているのがよろしい。
 登場人物がぞくぞくと集まってくる序盤こそ若干のもたつきを感じたが、事件の背後にある因縁が明らかになるにつれてテンポもアップ。一人また一人と倒れてゆく展開は予想どおりではあるが、なかなか緊迫感を感じさせて悪くない。

 まあ長所短所いろいろある作品ではあるが、これがデビュー作ということで、合格点は十分あげられるだろう。現在のアメリカでこの手の作品がどれだけ受けるのかわからないが、二作目もぜひ頑張ってほしいものである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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