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 昨年からぼちぼちと読んできた『ミステリ映画の大海の中で』をようやく読み終える。
 著者の小山正氏がこれまでミステリ雑誌や映画雑誌に発表したミステリ映画についての原稿をまとめ、大幅に改稿したものである。ボリューム、質ともにミステリ映画のガイドブックとしては文句なしの一冊。

 ミステリ映画の大海の中で

 ガイドブックとは書いたけれど、これはそこらのガイドブックとは少々ものが違う。普遍的な名作をひととおり並べましたという一般的なスタイルは取らず、著者の好みを反映させた独特の基準で作品を選び、詳細なデータを加えて紹介するといった形である。
 要はアンケートなんかで最大公約数を取らず、著者が好き勝手に選びましたということ。ただし、その紹介は実に詳しくてわかりやすく、かつ熱い。ここ重要である。ここがしっかりしていなければいくらマニアックでも誰も喜ばない。

 だからといって変な作品ばかりを選んでいるのかというとそんなことはない。もちろん変な作品も多く紹介されてはいるけれど(苦笑)、ポイントはその切り口だろう。とっかかりが映画寄りではなく、あくまでミステリ寄りであることが大きい。
 つまり普通のガイドブックが監督や俳優、ジャンル等でまとめるところを、本書では作家あるいはテーマ別としている。例えば作家であればレイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルド、ジム・トンプスン、ジョン・ル・カレなどなど。チャンドラーなら原作の映画化作品はもちろん、ハリウッドでシナリオに関わった作品も残らず網羅、その紹介はテレビドラマにも及んでおり圧倒的な情報量である。

 これがテーマ別になると、密室トリックとかミステリ系ウェスタンとか『そして誰もいなくなった』とか、ますます縛りが個性的になり、持ち上げ方が上手いこともあってさらに引き込まれる。
 だいたい『そして誰もいなくなった』の映画化作品にインド版やイタリア版、ロシア版があったことも初耳なのに、ましてやアメリカではポルノ版もあるなんて。ちなみにポルノつながりでいうと、密室トリックの項では今をときめく滝田洋二郎監督のピンク映画時代の作品も採り上げられている。おお、これも気になるな(笑)。

 ともあれ今後は本書抜きにしてミステリ映画は語りにくい。それぐらい良書である。以後の人生においても相当な時間をミステリ映画に使いたいし関わりも濃くしたい、という人は間違いなく買い。ううん、ちょっと重いか(苦笑)。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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