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 ワールドカップ開幕。ああ、また寝不足の日々が……。


 論創海外ミステリの功績は今さら言うまでもないだが、個人的な最近のヒットはジョン・ブラックバーンの魅力を再確認させてくれたことだ。ホラー系ミステリという枠では収まらない作風、ジャンルの「混合」(融合ではなく)によるオフビートな構成が特徴で、これが思いのほかツボであった。創元の三冊もン十年前に読んではいるのだが、当時はこの面白さがピンと来なかったんだよなぁ。
 本日の読了本は『闇に葬れ』、『刈りたての干草の香り』に続く『壊れた偶像』である。

 英国はマインチェスター。その町外れの川辺で売春婦と思われる女性が死体で発見された。当初はありふれた殺人事件に思われたが、実はその女性がかつてスパイだったことが明らかになり、英国外務省情報局長カーク将軍が捜査に当たることになる。しかし、たまたまカークは長期休暇に入るところで、部下のマイケルとペニーが一足先に現地へ向かう……。

 壊れた偶像

 著者本人が意識していたかどうかはともかく、ジャンルの「混合」による面白さはブラックバーンならではのものだ。本作でも序盤はオーソドックスな警察小説の形で始まり、それがスパイ小説風になり、そして中盤からはオカルトスリラーへと変化する。
 ただし、全体を包むテイストは神秘的ながら、超自然現象は今回はなし。そのせいか既刊二作ほどの馬鹿馬鹿しさはないのだけれど、この程度では妙におとなしく感じてしまって少々物足りなさは残る。
 とはいえそれは前作があまりにぶっとんでいたためで、普通にサスペンスとして読むなら、ストーリーの展開や場の盛り上げ方などは達者なもので、飽きさせることはまったくない。ただ、カークの部下の勇み足が多く、そこだけは無理矢理サスペンスを盛り上げようとする意図が露骨で気になった。

 というわけで良いところ悪いところも「混合」した本作。総合では前二作に劣るものの、ブラックバーンのファンならやはり押さえておきたい一作である。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 先月読んだ『闇に葬れ』で、あらためてその実力と魅力を再認識したのがジョン・ブラックバーン。モンスターパニックをはじめとした題材の面白さやストーリー展開もいいのだが、最大の目ウロコ的重要ポイントは、ホラーやSF、本格ミステリなどの複数ジャンルを(融合ではなく)混合させたスタイルという部分であった。
 とはいえその題材やスタイルを面白がる物好きが果たしてどこまでいるのかという話である。一般的なミステリファンにアピールできる作家なのかと訊かれても、若干言葉に詰まる程度には好き嫌いの出る作家であることは間違いない。幸いにもすでに論創海外ミステリからは三作が訳出されているが、しばらく間が空いているので、これっきりの可能性も高そうだ。管理人としてはせいぜい普及に努めるべく、感想を上げることにしよう。

 そんなわけで本日の読了本はジョン・ブラックバーンの『刈りたての干草の香り』。

 ソ連のある村が軍隊によって焼き払われ、住民は全員収容所に入れられたという情報が流れた。英国外務省情報局長のカーク将軍は事実の解明に乗り出し、ある研究所の若き科学者を呼び出す。
 一方、ソ連から急遽、国外退出を命じられたイギリスの貨物船は軍艦と接触して沈没。かろうじて沿岸に上陸した船員たちは、そこで奇怪な状況に遭遇する……。

 刈りたての干草の香り

 本作はブラックバーンのデビュー作なのだが、既にホラーミステリとして十分な完成度に達しているのが素晴らしい。いや、キングなどの傑作と比べると全然小粒だし、書き込みも薄く、そりゃ確かに分は悪い。
 ただし、エッセンス、特にモンスターパニックとか怪獣小説などといったジャンルにおけるツボは完璧に押さえており、その点はまったく遜色がない。

 加えてストーリーの展開が見事。それほどボリュームもないこの小説でここまで内容を膨らませ、きっちりまとめあげる手腕はもっと評価されるべきだろう。以前にTwitterで『ウルトラQ』や「コルチャック」が好きな人ならおすすめみたいなことを呟いたのだが、正直、ストーリーとしての面白さはそれ以上で、むしろ比べるべきはB級の傑作モンスターパニック映画あたりだろう。実際、本作も映画化するとなれば、よけいな脚色は不要なぐらい展開が見事なのである。
 本作で主人公格といえるのは、事件究明を依頼された若い科学者とその妻だ(シリーズキャラクターとしてはカーク将軍だが)。彼らが政府に出動を要請されるくだりを中心としつつ、ソ連で奇怪な事態に直面する船員たち、そして事件の原因となった過去の出来事、やがて覚醒することになるであろう被害者の様子、これらが渾然一体となって進む前半は圧巻の一語である。
 そのときどきで展開されるエピソードによって、本格ミステリっぽくなったり、スパイ小説のようになったり、ホラーのようななったりするのももはやお馴染み。普通ならバランスの悪さが気になるところだが、おかしなものでブラックバーンの場合、次はどうくるのかという趣向への興味が優先する。もちろんファンゆえの贔屓目ではあるが。

 強いてマイナス部分を挙げるなら、中盤のSF的な解釈が早めに出ることでモンスターパニック小説としての魅力がやや失われてしまうことだが、この点もラストでの盛り上がりがあるので、まあチャラということでよしとしますか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 このところ購入した新刊。まず論創社からは『新羽精之探偵小説選I』、A・K・グリーン『霧の中の館』、M・R・ラインハート『レティシア・カーベリーの事件簿』の三冊。先日『鯨のあとに鯱がくる』を読んだばかりの新羽精之にも驚いたが、A・K・グリーンとラインハートのHIBK(もし知ってさえいたら)派の固め打ちにもビックリである。
 創元からはクリスチアナ・ブランド『領主館の花嫁たち』、エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿V』、カーター・ディクスン『殺人者と恐喝者』。『殺人者と恐喝者』は原書房版の文庫化ではなく新訳ということでゲット。出版の経緯が知りたいところである。
 文芸社からは天瀬裕康、渡辺玲子による渡辺啓助の評伝『カラスはなぜ啼く、なぜ集う』。これも探偵小説好きには見逃せない一冊。
 忘れた頃にとんでもない本を出してくれる作品社からはバロネス・オルツィ『隅の老人【完全版】』。隅の老人ものの全三冊をコンプリートした衝撃の書。この形でホームズのライヴァルたちを根こそぎ出してくれると嬉しいなぁ(笑)。


 買った本の話ばかりでもアレなので、読んだ本の話も。ものはジョン・ブラックバーンの『闇に葬れ』。

 十八世紀の画家であり詩人のレイルストーン。彼の遺体が収められている納骨堂には、彼の知られざる多くの作品も一緒に残されていると噂されていた。その納骨堂を掘り起こし、世に出すべきだと主張する集団もいたが、その裏ではダム建設計画が進み、納骨堂も水の底に沈められようとしていた。
 そんななか、一人の男が納骨堂に潜入するが、中からは不気味な笑い声が。そして……。

 闇に葬れ

 ブラックバーンの作品は、今でこそいわゆる伝奇ミステリという言い方もできるのだろうが、創元で『リマから来た男』や『小人たちがこわいので』が刊行された当時は、まずその売り方に苦労したのではなかろうか。本格の要素もあり、ホラーでもあり、SFでもある。そのいろいろな要素がクロスオーバーされ、独特のブラックバーンならではの味となる。

 先に伝奇ミステリとは書いたが、実は伝奇ミステリとも若干違う。これについては解説で宮脇孝雄氏がうまいことを書いているのだが、ブラックバーンは本格やホラーといった要素を融合するのではなく、混合させているというのである。つまり途中まで警察小説だったのが突然ホラーになったり、ホラーが急に本格ミステリになったりするのである。
 バランスの悪さは当然にあるが、これを勢いに任せて持っていくのがブラックバーンの魅力である。
 本作ではいかにも典型的なホラーといったスタイルで始まるが、途中でミステリ的な味つけが入りつつ、後半は一気にモンスターSF。風呂敷の広げ方がすごくて、どうやって収拾をつけるのかと思っていると、意外にきれいにまとめるところはやはり侮れない。

 バカ話と言えばバカ話なので好き嫌いはあるのだろうが、もともと怪獣映画等が好きな管理人には全然許容範囲、というかむしろ大好物。同好の士は騙されたと思ってぜひお試しください。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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