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 論創海外ミステリはいつのまにか当初のごった煮B級感が影を潜め、本格系クラシック一色に染まりつつある。それはそれで悪いことではないが、クラシックは他社でも十分やっているのだし、もう少し犯罪小説やハードボイルドも取り上げてほしいのだが。
 本日読んだ『灼熱のテロリズム』は、そんな本格系クラシックが多勢を占めつつある中で刊行された、数少ないハードボイルド系クラシックである(『 魔王の栄光』というとっておきもあるが、それはまた後日)。

「金曜日までに金を支払わなければ、グランドセントラル駅を爆破する」
 ニューヨーク市長のもとに届いた脅迫状の差出人は「ブラックパワー」。人種的平等を訴えると言えば聞こえはいいが、手段を選ばぬ過激派黒人運動団体でもある。だが問題は駅の破壊だけではなかった。この事件が黒人の仕業だとすれば、過激な愛国団体の白人たちもまた手を挙げることは必至。おそらくはアメリカ全土に人種間の抗争が勃発することは間違いない。新聞コラムニストのピーター・スタイルスは、ある黒人の殺人事件をきっかけに、この未曾有のテロ事件に関わることになったが……。

 おお、なかなか良いではないか。駅爆破のタイムリミットによるサスペンス、人種間の抗争による緊張感など、とにかく全編を通して流れるピリピリした雰囲気が心地よい。
 加えて主人公のピーターや検事長のマーシャル、黒人運動団体のボスなど、印象に残る人物も多い。利害立場の反する男たちが、それぞれの強い信念をもってぶつかり合う。背負っているものが大きいからこそ、自分の主義主張は譲れない。だがやがてはお互いがお互いの心に何かを残し、認め合う瞬間が生まれるのだ。映画などにしたら、さぞや映えるシーンが多かろう。
 唯一気になったのは、ヒロイン役の存在。途中で唐突に登場してきて重要な役どころを振られるのだが、大した説明がないために、なぜ彼女がそんなに重要な存在なのかイマイチ納得できない。おそらくは彼女もシリーズキャラクターの一人で、作者が説明不要と判断したのだろうが……。その点が残念。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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