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 十年ほど前、ポケミスがサブシリーズのような感じで「ポケミス名画座」というシリーズを刊行していた。早い話が古いミステリ映画の原作シリーズである。
 一定の評価を受けている映画がほとんどなので、原作もそれなりに面白いのは当たり前といえば当たり前なのだが、なんせラインナップはサスペンスやハードボイルド、クライムノベルといったものが中心。大作というよりはB級っぽいものがほとんどだったのだが、意外に拾いものが多くてなかなか楽しめたシリーズだった。

 本日の読了本はそんな「ポケミス名画座」からの一冊、デイ・キーンの『危険がいっぱい』である。原作は1954年刊行で、1964年に監督ルネ・クレマン、主演アラン・ドロンで映画化された。

 まずはストーリー。
 青年弁護士のマークは、ふとしたはずみで妻を殺してしまい、警察はもちろん、妻の兄である大物ギャングからも追われる身であった。かろうじてシカゴまで逃げ延び、とある救済院に身を隠したものの状態はぼろぼろ。だが、そこで金持ちの未亡人メイに出会い、運転手として雇われることになる。
 身分を偽ってメイの屋敷に移り住んだマーク。マークに気があるそぶりを見せるメイに、運命が好転したかのようにも思えたが……。

 危険がいっぱい

 おお、いいねえ。これもまた佳作といっていいレベル。警察にもギャングにも狙われている男が、身の危険を常に感じながらも逆玉に乗ろうとする物語。主人公の焦燥感がけっこう執拗に書き込まれるのだが、そんな中にあっても金や女への執着もあり、そのくせどこか人生にも醒めてしまったところもあったりと、微妙な心理状態にある主人公の危うさを巧く描いている。
 ヒロインの方もどう考えてもまともな淑女には思えず、すぐに典型的なファム・ファタールであることが明らかになるのだが、この二人の距離感や駆け引きなどもねちねち描かれていてサスペンスを盛り上げる。
 全体的な印象はハードボイルドというよりフランスのノワールに近いものがあり、フランスで人気が出て、映画化されたのも頷ける話である。

 また、描写の巧さだけでなく、ストーリーの捻りやどんでん返しもちゃんと用意されているあたりはお見事。これがまたノワールかくあるべしみたいなオチのため、想像以上にプロットなどにも気を配っているのがわかる。
 当時は量産された読み捨てのサスペンスだったのだろうが、だからといって無視するにはもったいないほどの出来である。少なくともノワールやクライムノベルが好きなら読まない手はない。

 ちなみに映画サイトなどを拝見していると、映画版では設定やストーリーがけっこう違っているものの、それはそれで面白そうだった。機会があればそちらも観てみたいものである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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