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 ここ数年は以前ほど熱心にのぞくこともなくなったのだが、本日より「神田古本まつり」である。タイミングがいいのか悪いのかわからないけれど、明日はちょうど会社に出て少し片づけなければならない仕事がある。なんとか早めに切り上げて、久しぶりに雰囲気だけでも楽しんでこようかな。


 読了本はジョセフィン・ベルの『断崖は見ていた』。おなじみ論創海外ミステリからの一冊だが、これが通しナンバー14、奥付を見たら2005年の刊行だから驚いた。論創海外ミステリは一応全部買っていて、できるだけ若い番号から消化しているつもりなのだが、それでも個人的に馴染みの薄い作家や興味の薄い作品は知らず知らず後回しにしてしまっていたようだ。

 とりあえずストーリーから。
 イングランド南部の町レディング。その郊外に建つ屋敷で一人の資産家リリアン・メドリコットが危篤に陥っていた。時を同じくしてメドリコットの遺産相続者の一人、キースが崖から転落して絶命し、遺産はすべてバーナード・スコットの手に渡る。
 しかし、自分が犯人として疑われていることに悩むバーナードは、同地にいた素人探偵として知られる医師ウィントリンガムに調査を依頼する。そして調査を開始したウィントリンガムは、ここ最近、メドリコットの一族に不可解な死が続いていたことに気づく……。

 断崖は見ていた

 著者のジョセフィン・ベルは過去にポケミスから一冊出ているだけの、ほぼ日本においては幻の作家。過去の紹介記事、活躍した時期や作風から察すると、何となくクリスティの亜流かなともイメージしていたのだが、まあ当たらずとも遠からじといったところか。
 ただ、残念ながらその出来は少し物足りなく、クリスティと比べるのは少々荷が重いようだ。体裁としては一応本格探偵小説なんだけれど、全体的に緩いというか詰めが甘いというか。

 プロットは悪くない。遺産をめぐる殺人というのはありきたりだが、発端となる事故が殺人ではないかと疑われ、調べていくと他の一族の者も実はことごとく殺害されていたのでは、という設定は実にスリリングである。
 ところがいざ読んでみると、これが思ったほどスリリングでなく、おそらく原因は探偵役ウィントリンガムの捜査法や語り口にも問題があるのだろう。特に捜査法については、聞き込みの繰り返しに終始し、読み物としても弱い上に、そこから先に挙げたような疑惑になぜかいきなり到達してしまうのが苦しい。本格なのにロジックの面白さがそれほど前面に出ていないのである。
 ラストの意外性はそれなりにあるが、本格探偵小説として読むと肩すかし、そんな一冊である。

 ただ、それほど好評価はできなかったが全然だめというわけでもないので、これ以外の作品はもう一冊ぐらいは試してみたい気がする。ダメ元で論創社さんがもう一冊だしてくれないかな?


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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