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 ロバート・クレイスの『約束』を読む。警察犬マギーと警察官スコットの活躍と友情を描いた前作『容疑者』の続編。だが、本作はスコット&マギーのシリーズというだけでなく、同時に著者もうひとつのシリーズキャラクター、私立探偵エルヴィス・コール&ジョー・パイクが登場するダブル主演作でもある。

 こんな話。
 スコットと警察犬のマギーは逃亡中の殺人犯を追跡していた。しかし、ある住宅地で容疑者と思われる死体と大量の爆発物を発見してしまう。
 時を同じくして、私立探偵コールもまたその住宅地を訪れていた。失踪した会社の同僚を探してほしいという依頼の調査のためだったが、スコットッたちの捜査する現場から逃げ出した男を追いかけようとしたことで、警察からいらぬ疑惑の目を向けられてしまう。しかし、失踪事件の陰に大きな犯罪があることを感じていたコールは、あくまで独自に調査を続けようとする。
 一方、現場から逃げ出した男を直前に目撃していたことから、スコットの身には危険が迫っていた……。

 約束(クレイス)

 ずいぶん上からの言い方になってしまうが(苦笑)、ロバート・クレイスもいつの間にかすっかり巧い作家になったものだ。著者が複数のシリーズを融合させるという手法も、最近ではそれほど珍しいものではなくなってしまったが、それでもやはり難しい作業であることにに変わりはないだろう。
 特にクレイスの場合、シリーズの主人公がそれぞれパイクとマギーという相棒を連れていることから、よけいやりにくいはずで、それを案外さらりとやってのけているのが見事。
 単に事件解決までを描くだけではなく、描写の配分という問題もあるだろうし、クレイスは比較的強いメッセージ性を込める作家だから、そういう部分の盛り上げも考えると、これは相当にレベルの高い作品なのである。

 『容疑者』に比べると本作は事件そのものも魅力的だ。
 ストーリーはエイミーという女性化学技術者の失踪事件が軸になるのだが、関係者の多くが隠し立てをする状況。そのなかでコールはパイクやジョン・ストーン、そしてスコット&マギーらの協力を得て、ひとつずつ新たな事実を確かなものにしていく。そのなかでエイミーという女性の本当の姿も明らかになっていくのは、常套手段といえば常套手段だが、そこからさらに捻って、この失踪事件の様相そのものが揺らぐような展開にもっていく。
 簡単に物事が進みすぎるきらいもないではないが、こういうストーリーの出し入れというか緩急というか、適度な焦燥感と爽快感の混じり具合もクレイスの巧いところだ。

 ただ、『容疑者』のような犬と人の感動友情ストーリーは今回さすがに抑え気味だ。毎度毎度あんな感動的な出来事が同じ当事者に起こるわけがないので、まあ、そこは致し方あるまい。
 とはいえマギーの見せ場や犬好きには堪えられないシーンもちゃんと用意されているし、場面ごとのクオリティはいささかの劣化もない。前作が気に入った人なら本作も必読である。

 今後はシリーズキャラクターをいろいろ取り混ぜた展開もあるようで、ますます楽しみになってきたクレイスの作品。積ん読も少し消化していくべきかな。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ロバート・クレイスの『容疑者』を読む。『もう年はとれない』に続き、年末ベストテンから気になるものを読んでみようシリーズ第二弾。おそらくこれが今年最後の読了本である。

 ロス市警のスコット刑事は相棒のステファニーとパトロール中、銃撃戦に巻き込まれる。ステファニーは死亡、スコットも重傷を負うが、事件は未だ解決の目処すら立っていなかった。
 一方、アフガニスタンで爆発物探知犬として従軍していたシェパードのマギー。マギーもまた任務中に相棒を亡くし、心身ともに大きな傷を負っていた。
 やがて両者はロス市警の警察犬隊でパートナーとして出会うことになるが、折しもスコットを襲った忌まわしい事件に新たな展開が……。

 容疑者

 おお、今年最後の一冊にこんな素晴らしい作品と出会えるとは。犬と人の友情を描いた感動的警察小説だ。

 相棒を失った者同士、過去の悔恨を引きずりながらも、新たな道に踏み出そうとする犬と人。両者が信頼関係をどのように作り上げ、新しい相棒となっていくかがメインテーマであり、事件と平行してその過程が描かれていく。
 展開はありがちといえばありがちなのだが、やはり描写の巧さが光る。特にマギーの視点を含めた犬の描写が非常に抑えた感じで絶妙。感動を誘おうとして極端に犬を美化したりするのではなく、あくまで犬の生態をきちんと踏まえたうえで物語にしているのが好ましい。
 果たしてこれが人間同士だとここまで感動的になったかどうか。最初の相棒と別れることになる序盤のエピソードから、心温まるラストシーンに至るまで、犬好きには堪らない描写満載。もう犬好き必読と言っておこう。

 ただ、ミステリとしてはやや弱いのが惜しい。事件の真相は一応ひねってはいるものの、正直かなり手垢がついたパターンなのは否めない。
 あまり贅沢は言えないけれど、ここがこちらの予想を一枚超えていれば、この十年でのベストテン級になったかもしれない。

 ちなみに最近ではもっぱらノンシリーズの作品ばかり刊行されるクレイスだが、もともとは私立探偵エルヴィス・コールのシリーズで日本に紹介された。
 いわゆるネオハードボイルドの一人であり、時期的には後発の部類だろう。作りは意外にオーソドックスながら、LAらしいというべきかライトな雰囲気が新鮮で、管理人も四冊ほど読んだものだが、いつのまにかこちらは翻訳も止まってしまった。
 とはいえ本国は今でもシリーズが続いており、スピンオフのジョー・パイク・シリーズも人気だそうな。この作品を機にエルヴィス・コール・シリーズも再評価されてもいいのにね。


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