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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

極私的ベストテン2014

 仕事に振り回された一年がようやく終わる。この二年ほど会社が移転した影響と新事業にいろいろと関わってきたことが相まって、読書ペースが乱れに乱れた。ここ半年ほどはやや落ち着いた感じもあったのだけれど、年明けにはまたいろいろあって、さらに振り回されそうな予感もあるので万全とはいかないだろうが、まあ、来年もぼちぼちやっていくつもりなので、どうぞご贔屓に。


 それはともかく年末恒例の極私的ベストテンを発表したい。管理人が今年読んだ小説の中からベストテンを選ぶというもので、刊行年海外国内ジャンル等一切不問である。
 この数年、年間読了本が百冊にも満たないという体たらくだったが、今年は何とか百冊弱まで盛り返したので(いや、結局百冊には届いてないわけだが)、多少、選びがいはあった気がする。
 ではベストテンどうぞ。

1位 連城三紀彦『黄昏のベルリン』(講談社文庫)
2位 ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫)
3位 ロバート・クレイス『容疑者』(創元推理文庫)
4位 トーベ・ヤンソン『ムーミンパパ海へいく』(講談社文庫)
5位 バロネス・オルツィ『隅の老人【完全版】』(作品社)
6位 ヘレン・マクロイ『逃げる幻』(創元推理文庫)
7位 レオ・ブルース『ミンコット荘に死す』(扶桑社ミステリー)
8位 梶龍雄『ぼくの好色天使たち』(講談社文庫)
9位 アンドリュウ・ガーヴ『殺人者の湿地』(論創社)
10位 ジャック・リッチー『ジャック・リッチーのあの手この手』(ハヤカワミステリ)

 実は今年は圧倒的に抜きん出た作品に出会えず、順位選びにかなり苦しんだ。候補を二十作ぐらいに絞ったものの、そこから先がとにかく悩んだ。
 結局1位は『黄昏のベルリン』。二年連続で連城三紀彦となってしまったが、実はできるだけ多くの作家を入れたいため、今回は泣く泣く短編集『宵待草夜情』を外している。実はこれが1位でもいいぐらいなので、合わせ技で文句なしの1位とした。
 今年の各種ランキングを賑わせた『その女アレックス』は2位。確かに面白いし管理人も好きだけれど、これが1位のベストテンってどうよ?という思いもあり、あえて2位で。この人の真価はシリーズの他の作品も読まないと語れない気がする。
 3位『容疑者』は管理人の犬好き補正がかかっているけれど、エンターテインメントとしては文句なしの一冊。
 4位はミステリファンにも読んでもらいたいムーミンシリーズから最もハードな一冊をチョイス。"大人が読んでも面白い"のではなく、最初から大人を意識して書かれた辛口ファンタジーの良作である。アニメのイメージは捨ててよし。本書に関してはミステリ的仕掛けがあるのも楽しい。
 5位は内容もさることながら本としての価値を高く評価したい。論創ミステリ叢書などもそうなのだが、研究者(プロアマ問わず)の努力なくしては成り立たない本なので、もっともっと関係者は継続させる土壌を作ってあげるべきである。
 6位、7位は個人的に絶対外せない作家である。新刊が読めただけでも幸せなのだが、内容もその期待をまったく裏切らない。
 8位の梶龍雄もここ数年のお気に入り作家。こつこつ古本で読んでいる作家だが、『ぼくの好色天使たち』も代表作のひとつだけあり、読み応え十分。戦後の闇市をここまでミステリの要素として取り込むだけでもあっぱれだよなぁ。
 9位は職人芸が冴える逸品。管理人もあらためてガーヴの実力を再確認できた作品であり、これは読んでおいて損はない。趣向は異なるが『その女アレックス』が好きな人ならなおのこと。
 10位も職人芸が堪能できる短編集。オチやキレだけではない、ジャック・リッチーならではの独特の味わいが楽しめる。

 駆け足ではあるが、以上が今年の探偵小説三昧版ベストテン。
 他にもベストテンには漏れたが気に言った作品はまだまだある。
 マイクル・コナリー『ナイン・ドラゴンズ(上・下)』ネレ・ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』ダニエル・フリードマン『もう年はとれない』はハードボイルド&警察小説の佳作として読んで損なし。
 また、論創海外ミステリではV・L・ホワイトチャーチ『ソープ・ヘイズルの事件簿』エドマンド・クリスピン『列車に御用心』はよくぞ出してくれましたの味わい深い逸品。B級グルメではあるがジョン・ブラックバーン『刈りたての干草の香り』も個人的には大好物である。
 そして忘れちゃいけないのが戎光祥出版のミステリ珍本全集。ベストテンかと言われれば言葉には詰まるが(笑)、輪堂寺耀『十二人の抹殺者』栗田信『醗酵人間』大阪圭吉『死の快走船』は読めただけで大満足である。

 うむ、最初に今年は抜きん出た作品と出会えなかったとは書いたが、アベレージとしては悪くない一年だったか。ただ、ミステリの範疇にとどまってしまう作品が多かったきらいはあるので、来年はもう少し変わったものにも手をつけてみるか、などと考えているうちにもうすぐ今年も終わりである。

 さてさて今年も管理人の趣味におつきあいいただき、ご訪問いただいた皆様には本当にありがとうございました。来年も仕事に影響が出ないよう(苦笑)、ゆるーいペースで更新していきますので、何卒よろしくお願いいたします。
 それでは皆様、よいお年を!

プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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