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 出版芸術社の「ふしぎ文学館」から小松左京の短編集『石』を手に取ってみる。
 小松左京は日本SF界を代表する作家の一人、というか日本SF界そのもののような作家なのだが、その彼が残したホラー系の代表作をまとめた一冊である。本書のあとがきにもあるとおり、著者はテーマとしてのSFを手がけながらもその描き方にはホラーや怪談の手法を用いているという。もともと両者の親和性は高いとはいえ、そういうところを意識して描かれているというのは興味深い。
 収録作は以下のとおり。

「夜が明けたら」
「空飛ぶ窓」
「海の森」
「ツウ・ペア」
「真夜中の視聴者」
「葎生の宿」
「秘密(タプ)」
「石」
「黄色い泉」
「くだんのはは」
「保護鳥」
「兇暴な口」
「比丘尼の死」
「ハイネックの女」
「牛の首」

 石

 素晴らしい。もう圧巻である。有名な作品も多いので既読率はそれなりに高いけれども、このアベレージの高さは尋常ではない。小松左京という作家が、テーマだけでなくその語りにおいても実は相当のレベルにあることを実証するような短編集である。
 ホラーや怪談の手法を用いていると上で書いたが、いや普通にホラーとして完成度が高い。あからさまに恐怖を煽るのではなく、抑えるところは抑え、隠すべきところは隠す。その描かない部分を読者に想像させて怖がらせるのが巧いのだ。
 そういう意味では「夜が明けたら」や「空飛ぶ窓」「ツウ・ペア」のような、いったい何が起こっているのかわからない中でじわじわ迫ってくる恐怖感というのが一番怖いのかもしれない。個人的にもこのタイプの作品が好みである。

 変な話を淡々と描写していくのも著者の巧いところだろう。「真夜中の視聴者」や「葎生の宿」、「ハイネックの女」はある意味ジョークのようなストーリーなのだが、これも描写が巧いから怖い話へと転化できるのだ。

 その一方で種明かしはあるけれども、直接的に恐怖を描く「海の森」「秘密(タプ)」「石」「保護鳥」なども悪くない。こちらはネタがけっこう明らかにされるだけに映像化しても面白いだろうが、ただ「石」だけはエグすぎて映像化は無理だろうな。

 「くだんのはは」は小松左京のホラーでは最も有名な作品だろう。正統派の怪談で、設定の妙、語りの凄み等もろもろが渾然一体となった傑作。これは必読といってよい。
 また、「牛の首」はある意味、本書では最も怖い一編。詳しくは書けないがこれは「くだんのはは」とセットでぜひ読んでもらいたい一編。

 まあ、ホラーファンや小松ファンからすれば何を今更の一冊なのだろうが、普段そういうジャンルから縁遠い人間からするとこれは宝石のような作品ぞろい。いやいや堪能しました。

テーマ:幻想文学 - ジャンル:本・雑誌



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