バンクーバー冬季オリンピックが始まりましたな。こういうスポーツイベントは根っから好きなので、時間があれば見る方だが、昨日はとりあえず開会式を堪能。
で、冬季の開幕式でたまにあるのが、ショーの演出が変にアートに走りすぎる場合(こんなこと思ってるの俺だけ?)。スポーツイベントに過度に意味を持たせすぎる悪い例なのだが、こういうときは往々にして盛り上がりに欠け、見ていても全然わくわくしない。今回はフロアや客席までスクリーンとして使うなど、立体的な演出が多くて、シンプルな構成ながらもスケール感があって良かったんではないかな。ちなみに草原を駆け回っていた少年の演技や表情にすごく感心したんだけど、彼は俳優? モデル?
選手の入場行進も楽しみのひとつ。一見退屈そうなんだけど、個人的にはこれがイチ押しだったりする。ユニフォームのデザインや着こなしも見どころだけど、入場時の選手たちの態度にお国柄がすごく顕れ、比較しながら観てるとむちゃくちゃ面白い。また、それに対する観客の反応もけっこう興味深い。選手個々は特殊な才能を持ったアスリートたちなんだけど、集団になるとやっぱり国民性がすごく出る。縮図だよなぁ。
寝る前にベッドでぼちぼち読んでいた『横溝正史探偵小説選III』をようやく読み終える。『~I』『~II』に続いて本書も単行本未収録作が山ほど収録されており、そのボリュームは圧巻。収録作は以下のとおり。
■創作篇―推理小説
三津木俊介・御子柴晋の事件簿
「鋼鉄魔人」
「まほうの金貨」
「のろいの王冠」
「寄木細工の家」
「げんとうどろぼう」
「地獄の花嫁」
■創作篇―時代小説
智慧若捕物帳
「雪だるま」
「とんびの行方」
「幽霊兄弟」
「神変龍巻組」
「奇傑左一平―怪しき猿人吹矢の巻」
「白狼浪人」
「秘文貝殻陣」
「まぼろし小町」
「蝶合戦」
犯人さがし捕物帖「お蝶殺し」
■評論・随筆篇
探偵小説への饑餓/探偵小説と療養生活/
『蝶々殺人事件』の映画化について/映画にしたい探偵小説/
探偵小説の方向/獄門島顛末/めくら蛇におぢず―翻訳誌の思出/
新しい探偵小説/探偵小説の構想/森下雨村の好意―私の処女出版/
還暦感あり/推理小説万歳/推理小説を勉強中/
探偵小説五十年/佐七誕生記/人形佐七捕物控/
私の捕物帳縁起/『ドイル全集』訳者の言葉/
御存じカー好み/怪奇幻想の作家三橋一夫氏に期待す/
過程必備の書/ガードナーを推す/「魔術師」について/
エデン・フィルポッツのこと

基本的には前の巻で収録できなかった現代物のジュヴナイル、そして出版芸術社から出た「横溝正史時代小説コレクション」全六巻からもれた時代小説を中心に編まれている。性格としては拾遺集以外の何者でもないのだが、それでも十分に楽しめる作品が多いのはさすが正史。
特に、時代物でも子供向けのものがいくつか採られており、これがまたいい味なのである。子供向けということでより派手な展開を意識したか、長篇(中編?)の「神変龍巻組」なんて大人向きにリライトしてもらいたいぐらい楽しい読み物。歴史上では処刑されたはずの秀頼の忘れ形見、国松丸を中心に、敵味方それぞれの見せ場を作りつつ、ラストは……という具合で、いやいや素晴らしい。
また、智慧若捕物帳と題した「遠山の金さん」の息子が活躍するシリーズは、けっこうしっかりしたミステリ仕立て。これもまた本格ファンをニヤッとさせる内容で満足。
横溝の時代物といえば、個人的にはこれまで『髑髏検校』や「人形佐七」といった有名どころしか読んでいなかったのだが、出版芸術社や徳間文庫から出ている作品もちゃんと読まないとなぁ。反省。