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 お馴染み(?)ミステリ珍本全集から高橋鐵の『世界神秘郷』を読む。恥ずかしながらほとんど知らなかった作家だが、戦後間もない頃から性科学や性風俗の分野で活躍し、その方面では多数の著書も残している御仁。
 その高橋鐵が性科学関係で名を馳せる以前、戦前に残した数少ない小説が、なんと秘境小説や幻想小説の類だ。本書はその業績をほとんど網羅した、ほぼ高橋鐡幻想小説全集である。

 世界神秘郷

PART 1 世界神秘郷
「孤島の瞳人」
「明笛魔曲」
「氷人創世記」
「太古の血」
「天童(アンジェロ)殺し痛恨記(コンヒサン)」
「野獣園秘事」
「メディア媛の触手」
「夢のアトガキ」
「自ら謎語をつぶやく」
「嗜眠舞」

PART 1 南方夢幻郷
「蕃女の涙石(タンギワイ)」
「浦島になった男」
「怪船「人魚号」」
「神聖植物(ボタン・デ・メスカル)」
「聖(サン)パウロの冥婚」

PART 3 単行本未収録短編集
「交霊鬼懺悔」
「去脳人間」
「「滝夜叉」憑霊(デモニャック)」
「輪切りの人体」
「空に臥る女」
「幻のモーター・ボート」
「聖・黄金仏(マモン)」

 収録作は以上。二つの短編集を丸ごと収録したうえに、単行本未収録作品も七作という豪華版である。 『世界神秘郷』は比較的、入手が容易なのだそうだが、その他は相当なレアどころらしく、相変わらず徹底的な編集がまず嬉しい。

 さて肝心の中身だが、悪くはないのだが、食い足りなさも残るといったところか。
 この時代、この類の小説にしては予想以上に読みやすいのは高ポイント。これは文章が平易で、ストーリーもオーソドックスなことが影響しているのだろう。
 また、 秘境小説といえばだいたいがアフリカやアマゾンといった熱帯が舞台になることが多いけれども、高橋鐵の場合はまんべんなく世界中を舞台にしており、そういう意味でのバラエティには富んでいる。全体的にはとても戦前の秘境小説とは思えない、スマートな印象なのである。
 ただ、そういったスマートさの裏返しというか、アクが少なく、刺激やケレンに欠けるのが惜しいところだ。橘外男や小栗虫太郎あたりの秘境小説と比べれば一目瞭然で、良い意味での熱にうなされたかのような狂気成分が足りない。個人的には最近、橘外男のメチャクチャな作品(苦笑)を読んでいるせいで、余計にその感が強くなったかもしれない。

 しかしながら単行本未収録作品の方は若干、印象は異なる。こちらは科学的なアプローチによる幻想小説で、早い話が海野十三や蘭郁二郎を彷彿とさせるSF作品なのだ。「去脳人間」や「輪切りの人体」あたりはバカだなぁと思いながら読んだが(いや、褒めているんですよ)、こういうセンスが秘境小説のほうでも発揮できていれば、ここまで幻の作家にはならなかったかもしれない。

 珍本全集には珍しさだけでなく、そういった内容的な破天荒さも期待してしまうので、やや辛めの評価にはなってしまったが、いや、毎度書いていることだけれども、出してくれるだけで十分感謝でありますよ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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