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 近年、旧作の発掘や復刊がすっかり定着した感のあるミステリ業界だが、そのムーヴメントを引っ張っているのはやはり論創社だろう。国産ものにしても海外ものにしても、あのラインナップでよくここまで続けられるものだと素直に感心する。採算が合わなければ続けられるはずもないのだから、当然利益は出ていると思うのだが、いや、それにしても凄いわ。
 ただ、あれだけ出しているのにもかかわらず、正面切ってその功績や全体像を取りあげる媒体がほとんどないのは残念だ。けっこうな巻数になっているし、そろそろどこかの雑誌や評論家ががっつりまとめてくれんものかな。いや、既に誰かがやっていて、こっちが知らないだけかもしらないが。

 それはともかく、単なる一読者としては、読むペースが追いつかないので、正直少しペースダウンしてもらってもよいのだが(笑)、そういうネガティヴな意見はこの際封印しておこう。どこまで続くかわからないけれど、まずは買い続けること。それが一番の応援だろう。

 ちなみに二番目の応援としてはこうして本の感想をアップすることか。
 本日の読了本は論創海外ミステリからドロシー・ボワーズの『命取りの追伸』。

 ボワーズは本格黄金期にデビューした作家。長篇五作を著したのち、わずか四十六歳で亡くなったが、当時はセイヤーズの後継者とも言われたらしい。 とはいえ日本ではほぼ無名の存在。さほど期待せずに読み始めたが……。

 ロンドン郊外のとある屋敷で病気療養中の老婦人コーネリアが死亡した。一族の財産を一手に握るコーネリアには二人の孫娘がいたが、その遺産の行方が注目されていた矢先の出来事であった。主治医のフェイスフル医師は診断の結果、薬物の大量投与が原因であると知り、警察に報告する。
 事件はロンドン警視庁のバードウ警部に託され、さっそく捜査が始まるが、コーネリアが頻繁に遺言状を書き換えていたことや関係者に怪文書が出回っていたことが明らかになる。

 命取りの追伸

 毒殺事件で幕が開き、警察の関係者への訊問、次々と明らかになる新事実、警察の推理、そして発生する第二の悲劇……。黄金期のフーダニットかくあるべしというぐらい様式に則った展開と構成だ。 
 現代の尺度でみれば設定やストーリーは地味目である。とりわけ関係者への訊問が続く前半は、人によってはかなり退屈な印象も受けるだろうが、文章に変なクセはないし、描写も丁寧、変な蘊蓄もないので、初期のヴァン・ダインやクイーンよりははるかに読みやすい。
 トリックも大技炸裂とかではないけれども、小さな手がかりや伏線をうまく重ねて、ラストもまずまず。しっかり計算された、オーソドックスで手堅い本格という印象である。

 惜しむらくはその手堅さゆえか、作品としての強烈な個性に乏しく、そういう面での物足りなさは残ってしまう。とはいえこの時代このスタイルのミステリとしては完成度も高く、割と楽しく読める方だろう。
 森英俊氏の『世界ミステリ作家事典 本格派篇』によると、五作目のノン・シリーズ作品が最も楽しめるということなので、この際だから論創社は五作すべてを出してくれんものかな。もちろん全部買いますよ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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