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 またまた論創海外ミステリの話題で恐縮だが(別に関係者じゃありませんので念のため)、この叢書、本格クラシックミステリだけでなく、最近では刊行年がそこそこ古いミステリならもう何でもありの路線である。おかげでこれまでまったく縁のなかった作家を読むことも多くて、本日の読了本、ロイス・ダンカンの『殺意が芽生えるとき』もそんな一冊。

 さて著者のロイス・ダンカンだが、これまで縁がなかったのも道理で、彼女はジュヴナイルがメインの作家である。日本初紹介というわけではないのだが、シリーズものは手掛けておらず、日本で紹介が遅れた理由もそういうところにあるのだろう。
 ただし、MWAの最優秀ジュヴナイル賞の候補には何度もなっており、その実力は折り紙つき。本書はそんな彼女が書いた数少ない大人向けミステリでもある。

 夫を事故で亡くし、幼い子供二人と暮らすジュリア。しかし、彼女にはその悲しみに浸る間もなかった。このところ立て続けに子供が危険な事故に遭っていたのだ。大事には至らなかったものの、不安は募る一方。そして遂に自宅が何者かに放火され、息子が大火傷を負ってしまう。
 ジュリアはかつての恋人ロジャーの仕業だと考え、母や妹に相談するが、なかなか信じてはもらえない。ジュリアはロジャーの真意を確かめるべく彼の訪れるが、そこで見たものはロジャーの屍体だった……。

 殺意が芽生えるとき

 ストーカー系の恐怖で押してくる前半は、正直かなりしんどい。
 主人公がストーカーなどに一方的に攻め込まれる設定が、個人的に苦手なこともあるのだが、主人公たちの言動にも説得力がいまひとつ。サスペンスの盛り上げという意味はあるのだろうが、主人公たちが最善手を打てない理由付けはやや弱く、そこはきちんとフォローしてほしかったところだ。

 ただしジュリアたちをつけ狙っていると思われるロジャーが殺されることで、まったく新たなサスペンスが生まれ、そこからは一気に引き込まれる。
 ベースはあくまでサスペンスながら、犯人当ての興味もある。プロットもしっかりしており、家族というテーマもしっかり盛り込まれ、物語としてのバランスも良い。切ない真相ながら希望の光を灯すラストもよし。
 それほど期待していなかっただけに、これは思わぬ拾い物といっていいだろう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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