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 先日読んだ『新・冒険スパイ小説ハンドブック』の影響で久々にガチガチの冒険小説が読みたくなって、D・A・レイナーの『眼下の敵』を手に取る。『新・冒険スパイ小説ハンドブック』でも紹介されており、何を今更の古典中の古典だが、恥ずかしながらこれが初読である。
 ちなみに映画化もされており、こちらも傑作の誉れ高い作品、っていうか世間的には映画の方が有名だろう(こちらは視聴済み)。

 ストーリーは実にシンプルである。連合軍の暗号情報を入手すべく、大西洋を南下する独軍の潜水艦U121。その動きをレーダーに捉えた英国の駆逐艦ヘテカは追跡を始める。追いつくことができれば両者の一騎打ちは避けられないが、ヘテカの艦長は戦時中でも滅多に遭遇できないその機会に、むしろ気持ちが高まるのを抑えられなかった……。

 眼下の敵

 いやあ、これは素晴らしい。ボリュームはコンパクトながら、ほぼ全ページにわたって駆逐艦とUボート(独海軍の保有する潜水艦)の対決がみっちりと書き込まれており、その戦術や駆け引きを純粋に楽しむ作品といってよいだろう。
 Uボートは機動性に富み、魚雷で駆逐艦を攻撃する。かたや駆逐艦は先手を打ったことの有利さ、ソナーでの探知脳能力に加え、爆雷でUボートを狙う。艦長同士はほぼ同等の能力を有しているという設定であり、その虚々実々の駆け引きがたまらない。両艦の位置関係や航路を示す図が挿入されていたり、作戦の成功失敗が理詰めで説明されていくので、こういう愉しみは本格好きにも通じるところがあるかもしれない。

 興味深いのは、この手の内容であれば普通は人間ドラマもがっつり盛り込みたくなるのに、あえてそれを排除しているところ。実際、映画では騎士道精神をかなり打ち出して、両軍の友情(映画では米軍だったが)というところまで描いているのに対し、原作では非常に淡白。
 それが最大に表れていたのがラストの扱いだろう。映画はご存知のかたも多いと思うが、非常に後味のよい、いわば人間賛歌。一方、原作は人間の愚かさを皮肉った、ギャグとも思えるようなシーンとセリフで幕を閉じる。この違いは相当面白いので、興味あるかたはぜひ原作も読んでいただければ(現在、創元推理文庫版、元になったパシフィカ版ともに絶版だが、古書なら手軽に入手可能です)。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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