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 台風の影響で大雨の中、衆院選の投票に出かける。たった十五分ほど外出しただけで靴も靴下もぐちゃぐちゃ。今日のテレビは開票速報だらけだが、台風の災害などが出たら政府もテレビもちゃんと対応できるんだろうか?

 本日の読了本はマーガレット・ミラーの『雪の墓標』。論創海外ミステリからの一冊である。まずはストーリーから。

 クリスマスが間近に迫るアメリカの田舎町アルバナで殺人事件が起こった。被害者は建設業を営む既婚者のマーゴリス。容疑者はその不倫相手の独身女性ヴァージニア。痴情のもつれかと思われたが、泥酔していたヴァージニアは当時の記憶がなく、それでいて犯行は強く否定していた。
 さっそく弁護に駆り出されたのが地元の弁護士ミーチャム。しかし、過保護に育てられたせいかまったく協力する姿勢も見せない我儘な態度に、ミーチャムも手を焼く始末。そこへヴァージニアの母親ミセス・ハミルトンがやってきて場をかき乱し、遂には自ら犯人を名乗る青年が現れて……。

 雪の墓標

 マーガレット・ミラーの作品はラストのサプライズも魅力ではあるのだが、やはり心理描写の巧さとそれに比例するサスペンスの盛り上げが大きな特徴だ。
 本作『雪の墓標』はそんなミラーの特徴がとりわけ発揮された一作といえるだろう。弁護士ミーチャムが探偵役として進行を務め、彼の目を通して、何やら複雑怪奇な人間模様が描かれてゆく。ヴァージニアとハミルトン親娘はもちろんだが、そのほかの事件関係者の思惑や心理もこってり盛り込んで、ミラーの人間観察の確かさと、そして意地の悪さがひしひしと伝わってくる。
 犯行方法こそショッキングだが、事件そのものはいたって地味で、ストーリーのうねりにも乏しい。正直、ほかの作品と違って、異常者というほどの人物も出てこない。それでも惹きつけられてしまうのは、やはり上で述べたような人間描写のうまさがあるからだろう。ごくごく普通の人のなかにある悪意を作者は巧みに拾い上げてくる。とにかく絶妙なのだ。

 解説によると、乱歩は本作について「成り行き探偵」「平々凡々のみ」となかなか辛口だったようだが、まあ当時の乱歩はミステリの啓蒙という意識が強かったから、この手の作品の評価はどうしても低くなりがちだったのかもしれない。
 確かに『殺す風』とか『まるで天使のような』ほどのパンチはないのだけれど、作者の持ち味自体はしっかり出た佳作といってよいだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 久々にサスペンスの女王、マーガレット・ミラーの作品を読んでみた。創元推理文庫から二年ほど前に出た『悪意の糸』である。

 夏のある日の午後、女性医師のシャーロットのもとへ訪れたヴァイオレットと名乗る若い女性。彼女は夫ではない男の子供を身ごもってしまい、中絶を依頼する。
 だが正当な事由がないのに処置をしてしまうのはもちろん違法。シャーロットはヴァイオレットの頼みを拒絶したが、混乱の激しいヴァイオレットは、シャーロットの話を最後まで聞くこともなく、途中で姿をくらませてしまう。その様子があまりに気にかかり、シャーロットはヴァイオレットの住まいを訪れてみたが……。

 悪意の糸

 ミラーの傑作といわれる『殺す風』や『鉄の門』、『狙った獣』あたりは、ほぼ40年代から50年代にかけて発表されており、本作はほぼその時期のど真ん中に書かれた作品。つまりミラーがノリノリの時期に書かれた作品と言えるわけで、本作もなかなか悪くない作品に仕上がっている。
 まあ、内容的にはそれほど大掛かりな作品でもないので、それらの傑作に比肩するところまではいかないけれど、質的に安定しているというか、ミラーの良さは楽しむことができる。

 ではミラーの良さって何かという話だが、これは管理人があえて説明するまでもなく、もちろん心理サスペンスを盛り上げる巧さ。ストレートにびっくりさせる怖さではなく、不安を徐々に煽っていくテクニックである。
 本作では序盤こそベタベタな展開だが、中盤を過ぎる頃になると、今までの主人公に忍びよる危険がどうやら表層的なものに過ぎないことがわかってくる。このさじ加減が見事。そもそも主人公も含めてあまり感情移入しやすい登場人物がおらず(苦笑)、全員の一挙一動がとにかく胡散臭い。そういった人間たちの絡みによって主人公の日常が綻びをみせ、不安がさらにつのっていくという按配。

 もうひとつミラーの良さを挙げるとすれば、サスペンスに頼るだけではなく、ミステリとしてのケレンがしっかり意識されているところか。ただ、描写が巧いとかストーリーが盛り上がるとかではなく、サプライズの部分もしっかり忘れてはいないのがありがたい。
 本作もその点で抜かりはないが、まあ今読むとそこまでの驚きはない。ただ犯人の真の姿が明らかになる過程の描写は実にスリリングで、やはりミラーならではだろう。

 ともあれ全体には手堅い印象。個人的にはロマンス成分の強さがやや鼻についたけれど、まあ、それは好みの問題なのでよしとしよう。『殺す風』等の傑作群にはやや劣るが、決して読んで損はない作品である。


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