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 ヴェラ・キャスパリの『エヴィー』を読む。
 著者は映画化もされた『ローラ殺人事件』で知られているが、おそらく知られているのはそれ一作ぐらいではなかろうか。一応、邦訳は小学館文庫の『愛と疑惑の間に』もあるけれど、日本で人気があるとはお世辞にもいえない作家である。

 こんな話。広告代理店でコピーライターとしてばりばり働くルイーズ。モデルなどをこなしがら気ままな暮らしを送るエヴィー。タイプの違う二人だがなぜか気はあい、お互いのプライバシーには決して干渉しないことを不文律として、二人でフラットを借りて同居していた。
 あるときルイーズはエヴィーに新しい恋人ができたことを知るが、その名前は教えてもらえず、ルイーズもまたいつものとおり、あえて聞くことはしなかった。ところがある夏、ルイーズが旅行に出ている間にエヴィーが殺害されるという事件が起こる……。

 エヴィー

 物語はルイーズの一人称で語られる。前半は主にエヴィーとルイーズの生活に焦点があてられ、事件が起こった後半はエヴィーの新しい恋人は誰なのか、事件の犯人は誰なのか、そして恋人と犯人は同一人物なのか、という興味で引っ張ってゆく。
 まあ表面的にはオーソドックスなサスペンスという結構ではあるが、著者の書きたいのはおそらくそこではない。
 ルイーズを通してエヴィーや事件を語りつつ、実はルイーズ自身のライフスタイルや心情をこそ描きたいのである。
 物語の舞台は1920年代のシカゴ。まだ性差別も色濃く、女性の社会進出はまだまだ難しい時代である。そんな旧弊な時代にあって、自立する女性の仕事との向き合い方、恋愛、そして家族との関係など、ルイーズは常に悩み迷う。すべてに答を出せる自立した女性にはなりたいが、もちろん現実はそう簡単ではない。そんな葛藤するルイーズの内面を著者は丹念に描いてゆくのである。
 そういう意味では力作であるし、また、1960年代に書かれた作品にしては驚くほど現代的な内容なのも見事だ。

 だが、正直、これがきつかった。まずは単純にミステリとして弱いという面がひとつ。結末が全然意外じゃないとか、恋人の正体が案の定だとか、そういった弱さである。だが、それらはこの際ガマンする。そんなレベルのミステリは今までも嫌というほど読んでいる。
 むしろ辛かったのは中盤で事件が起こるまで、いやいや事件が起こった後ですらも延々と描かれていく、ルイーズの内面描写である。ボリュームがもともとある作品なので、ルイーズに共感できるとかの思い入れが湧かないと相当厳しい。
 もちろんそういう小説が読みたい人には迷わずおすすめするが、残念ながら管理人としては、もう完全に好みの圏外であった。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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