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 ミステリ珍本全集から宮崎惇の『21世紀失楽園』を読む。
 宮崎惇は日本SF黎明期に登場した作家である。かの伝説的SF同人誌『宇宙塵』にも初期から参加しており、商業デビューを果たしたあとは少年ものや時代物でも活躍したが、1981年に四十八歳という若さで亡くなった。
 ミステリ珍本全集とはいいながら、実際はエンターテインメントの珍品なら何でもありのこの叢書。今回は完全にSF畑ということで、それほどSFに強くない管理人などは正直ありがたみがあまり実感できていないのだが、まあ、それはおいといて(苦笑)、まずは収録作。

PART1 『21世紀失楽園』
「γ博士のロボット」
「愛」
「かわいそうな火星人」
「火星人になった男」
「3と2」
「理科の実験」
「お出迎え」
「バイオリンはお好き」
「声」
「動物園」
「顔」
「忍者」
「21世紀失楽園」
「どれい」

PART2 『金毛九尾秘譚』
「幻の八百八町」
「金毛九尾秘譚」
「役行者」
「忍者猿異聞」

PART3 単行本未収録作品集
「チンクルチンクル」
「珪素生物」
「もしもしどなた」
「お化けの行列」
「人を食う家」
「緑の霧」
「望郷」
「合成人間(アンドロイド)東京に死す」
「地球が喪服を着るとき」
「砂地獄悪魔教」
「幻花吸血境」

 21世紀失楽園

 本書はごらんのとおり三部構成。著書もそれなりにあり、ソノラマ文庫の『ミスターサルトビ』などは比較的知られているはずなので、レア度はそれほどでもないのかと思っていたが、やはりそれなりに濃い。
 なんせPART1の『21世紀失楽園』、PART2 『金毛九尾秘譚』は著者が初期に作った私家版をそのまま収録、PART3は章題どおりこれまで単行本に収録されていなかった作品を集めている。

 日本SF黎明期に書かれたことが影響しているのだろうか、内容的には想像以上にきちんとしたSFである。短いものが多く、多少はトリッキーだが、結末はある程度予測できてしまう。しかし、その結末から立ち上る余韻にこそ著者の持ち味があるように思う。
 その余韻はたいていの場合、憂いや悲しみを伴っており、ときにそれが美しさにまで昇華する。特にPART1 『21世紀失楽園』に収録された作品はその辺りが心地よく、素直に味わえる。

 一方、 PART2 『金毛九尾秘譚』は時代ものとSFの融合であり、当時のアイディアとしても抜群だろうし、何より物語が軽快で楽しい。考えたら、これらの作品は後に流行したSF伝記小説のはしりと捉えることもでき、個人的にはこのPART2が最も気に入った。

 PART3の単行本未収録作品集では、小品ながらミステリ的味わいのある「珪素生物」やホラー系「人を食う家」が好み。この手の作品があるなら、もっと読んでみたいものだが。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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