最近、仕事の都合で飲みの席が増加し、金曜日は午前様になることもしばしば。基本的にアルコールは好きだし、それほど弱くもないけれど、年のせいか翌日にダメージが残るようになってきたのは無念である。
というわけで今週はあまり読書も捗らず、本日は盛林堂ミステリアス文庫から出た『戦後 春陽文庫 資料集成 β版』でお茶を濁す。

本書は題名のとおり、戦後に刊行された春陽文庫の資料集。その中身はというと、フルカラーの装画も併せて掲載した文庫目録と思ってくれればよく、それ以上でもそれ以下でもない。また、“β版”ともあるようにまだ完全な資料ではない。
それでも本書の価値が非常に高いのは、ちょっとしたミステリマニアなら簡単に理解できるところだろう。なんせ春陽文庫といえば、版元であってもその全貌を説明するのが不可能なほど、何がどうなっているのかわからない恐ろしい文庫である。絶版や品切れの状況もわからなければ、巻末の目録も信用できない、いや目録どころか奥付の信憑性も疑わしい。同一本の装画違いなんて当たり前で、活字の組みまで違うものもあるらしい。なんにせよ誰の何という本が、本当に出たのか、それだけでもスッキリすればよいのになぁと思うわけである。
ともあれ現時点でここまで春陽文庫の装画を集めた本はなく(管理人の知るかぎりだが)、本書は今後の春陽文庫コレクションのための貴重な一冊として重宝されることだろう。まさに古書店店主ならではの会心の一冊。
なお、別にマニアでなくとも、当時の探偵小説や娯楽小説の装画を眺めるだけでも楽しい本なので、興味があるなら今のうちにこちらでどうぞ。→
書肆盛林堂「戦後 春陽文庫 資料集成 β版」