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 論創海外ミステリから『終わりのない事件』を読了。
 著者のL・A・G・ストロングはミステリに限らず多ジャンルにわたって活躍した英国出身の作家で、むしろミステリの方が余技のようだ。森英俊/編著『世界ミステリ作家事典〈本格派篇〉』にはミステリ関係の著作として十作が紹介されているが、実はミステリ以外も含めると、その著作数は四十作以上にのぼる。
 わが国ではこれまで短編が幾つか邦訳されている程度だったが、本書によって初めて長編が紹介されたことになる。

 こんな話。英国はデヴィン州のとある村に、ロンドン警視庁の主任警部エリス・マッケイがやってきた。かつての同僚で今は地元警察署に勤めるブラッドストリート警部はエリスを歓迎するが、エリスは訪問の目的をあえて明かさなかった。ただ、村で何かが進行していることのみ示唆し、そしてそれに関係ありそうな村の人間を一人ずつ当たっていくのだが……。

 終わりのない事件

 先述のとおり『世界ミステリ作家事典〈本格派篇〉』でも紹介されていた作家なので、純粋な本格ミステリだと思っていたのだが、本書に関してはなかなか微妙な線を突いている。
 まあ、序盤で提示される手紙の謎など、どういう性質のものなのかはミエミエだし、全体を覆う雰囲気は間違いなく本格ミステリなのだが、実は謎解きそのものやロジックを楽しむ類の本格ミステリとはかなり趣を異にしている感じなのである

 というのも、本作には「探偵役がそもそも何を目的に捜査しているのかが明らかにされない」という大きな仕掛けがあるからである。
 この目的が本作の肝であることは間違いなく、終盤で明らかにはされるのだが、その肝心の部分にあまり謎解き的な興味が絡まないため、結果的に何か変わった本格ミステリを読まされたという印象を受けるのだろう。

 これは本格ミステリどうこう以前に、単純に物語としての面白さにも影響を与える。主人公たちが絡まないところで何やら事件らしきものは描写されるが、その事件らしきものがエリス警部の目的なのかどうかもわからず、中盤過ぎに至る結構な分量をどこかフワフワした感じで読まされる。これが許せるかどうかが評価の分かれ目だろう。
 ただ、本格ミステリだから決まり切ったスタイルで書かなければならないなどというルールはもちろんなく、著者の狙いは悪くないと思う。
 ちなみにエリス警部の目的(というか事件の真相)もかなり斜め上をいく感じで、中にはシラケける人もいるだろうが、これもミステリプロパーでないからこそ書けたことではないか。ストーリーとしては冗長なところもあるのだが、プロット自体は工夫されていて面白い。

 個人的に辛かったのは、実はそういうミステリ的な部分ではなく、探偵役エリス・マッケイ主任警部のキャラクター。
 有名な作曲家としての顔も持つ警部という設定はちょっとなぁ(苦笑)。加えて性格的にかなり軽く、初対面であってもほぼ軽口やジョークから入っていくというのもきつい。いや、いわゆる名探偵やB級ハードボイルドあたりの私立探偵だったらそういうのもアリだろうが、警官、しかも警部クラスでこれはない。

 まとめ。まあ欠点もいろいろ書いたが、全体としての仕掛けは珍しいものなので、これを捨ててしまうのはちょっと惜しい。クラシックミステリのファンなら一度は読んでおくべきか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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