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  ネットのあちらこちらで年末の新刊情報などを目にすることも多いが、今年は気になる本がずいぶん多い。ミステリに関してはクラシックは国産・海外、現代ものは海外の興味あるものだけに絞って買っているのに、それでも今年は多すぎてうれしい悲鳴である。
 ちなみにこれから年内に出る新刊で、買おうと持っているのが以下のあたり。ちょっと自分の買い物メモ代わりに記しておく。

ジョエル・ディケール 『ハリー・クバート事件(上・下)』(創元推理文庫)
夢野久作『定本 夢野久作全集』 第1巻(国書刊行会)
戸川安宣 『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)
江戸川乱歩 『明智小五郎事件簿7 吸血鬼』(集英社文庫)
海野十三 『深夜の市長』(創元推理文庫)
西條八十 『あらしの白ばと 第二部・悪魔の家の巻』(盛林堂書店)
フランシス・M・ネヴィンズ 『エラリー・クイーン 推理の芸術』(国書刊行会)
シャーリイ・ジャクスン 『鳥の巣』(国書刊行会)
奥田実紀『図説 英国ファンタジーの世界』 (河出書房新社)
シャーリイ・ジャクスン 『処刑人』(創元推理文庫)
マージェリー・アリンガム 『クリスマスの朝に キャンピオン氏の事件簿』(創元推理文庫)
ピエール・ボアロー 『震える石』(論創社)
保篠龍緒『保篠龍緒探偵小説選Ⅱ』(論創社)
ファーガス・ヒューム 『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』(国書刊行会)
レジナルド・ライト・カウフマン 『駆け出し探偵フランシス・ベアードの冒険』(国書刊行会)
『このミステリーがすごい! 2017』(宝島社)
甲賀三郎『甲賀三郎探偵小説選Ⅱ』(論創社)
ハリー・カーマイケル 『ラスキン・テラスの亡霊』(論創社)

 ううむ、夢野久作だけは値段と置き場所を考えるとスルーかなぁ(苦笑)


 読了本は先週に引き続き『正木不如丘探偵小説選』、その第二巻である。『〜I』がデビューの1923年から1930年までの作品を集めたものに対し、本書『~II』では1930年から1948年の作品を集めている。この二冊で正木不如丘の探偵小説的な作品はほぼ網羅されていることになる。
 まずは収録作。

『血の悪戯』
「千九百三十一年」
「精神異常者の群」
「細菌研究室(マイクの前にて)」
「殺人嫌疑者」
「血液型は語る」
「細菌は変異する」
「生理学者の殺人」
「遺骨発見」
「ペスト研究者」
「原始反応」
「赤血球の秘密」
「果樹園春秋」

 正木不如丘探偵小説選II

 全体的な印象としては『~I』とそれほど変わらないのだが、後期の作品ということで多少はこなれてきたか、破綻した作品はやや減っている感じである。ただ、完成度が上がったかといわれればそんなことはなくて、相変わらず探偵小説としては物足りなさは残る。
 本業が医師ということで、もちろんその方面のネタが多いのはかまわないのだけれど、医学ネタに頼りすぎているのも困りもの。当時は珍しかったにせよ、血液型のネタとかこんなに使い回されてもなぁ。
 そこから探偵小説として話が膨らめばいいのだけれど、なかなかそうもいかないのが残念だ。

 そんななかで本書の目玉といえるのは、やはり唯一の長編探偵小説『血の悪戯』が収録されていることだろう。
 ダンスホールで数々の男と浮名を流す売れっ子ダンサーの山野はるみ。彼女は恋人をチフスで亡くしていたが、実はその恋人の治療にあたっていた医師による殺人ではないかと疑っていた。しかもその医師は、その前の恋人でもあったのだ。
 山野はるみを情報屋として利用していた警視庁刑事の大平八郎は、密かに捜査を進めることにするが……という一席。
 主人公がほぼ単独行動のせいもあって、あまり刑事という雰囲気はなく、むしろ私立探偵や新聞記者を主人公としたサスペンスという感じである。だが、意外に解くべき謎は多く、殺人の謎はもちろん、ヒロイン?山野はるみにまつわる秘密などもあって、当時であればなかなか興味を引っ張ったのではないか。残念ながら医学知識を謎の中心にもってきたせいで、今読むと経年劣化が相当に激しく、真相に気づかない主人公にイライラするほどである。まあ、主人公も論理的に推理を進めるタイプではないので余計にきつい。

 ということで『〜I』と合わせ、論創ミステリ叢書のなかでもなかなか厳しいタイトルになってしまったが、前回の記事でも書いたように、これもまた探偵小説を読む楽しみのひとつ。探偵小説が進化していく過程、探偵小説史の1ページを紐解いているのだと思って、お勉強のつもりで(苦笑)ぜひどうぞ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 五日の土曜日、数年ぶりに神田古本まつりを見てまわる。以前は会社が神保町にあったものだから、期間中は昼休みにほとんど毎日のぞいたものだが、会社が移転して二駅ほど離れただけであっという間に足が遠くなってしまった。最近は以前ほど古書にも執着しなくなったというか、新刊でクラシックが山ほど出てくれるので、本当に必要なものだけ買う程度である。
 それでも久々に時間をかけてまわったので精神的にはだいぶ満足(苦笑)。期間が六日までなので、どうせ大したものは残っていないだろうとは思っていたが、多岐川恭、石沢英太郎、陳舜臣あたりで縁がなかった本がいくつか拾えたのはよかった。


 本日の読了本は論創ミステリ叢書から『正木不如丘探偵小説選I』。
 正木不如丘は本業が医師で、結核療養について深く研究していた人である。同時に学生時代から文学にも興味をもち、医師となってからは医学に関したエッセイで商業デビューを果たしている。その後も医師として勤務しながら同人活動を続けていたが、その活動を通じて小酒井不木と知り合い、探偵小説にも手を染めるようになったらしい。
 作家として活躍した時期としては主に1920~1940年あたり。特に20年代は活発だったようだが、探偵小説プロパーではないので、ミステリ以外の著作も多く、基本は医学をネタにした大衆小説をであり、エッセイ、ノンフィクション系も少なくない。
 本書と続刊の『正木不如丘探偵小説選II』では、そんな不如丘の探偵小説として発表された短編長編はもちろん、その周辺的な作品もすべて網羅しているということで、相変わらずの徹底ぶりがありがたいことである。

 正木不如丘探偵小説選I

「法医学教室」
「剃刀刑事」
「椰子の葉ずれ」
「天才画家の死」
「夜桜」
「赤いレッテル」
「吹雪心中」
「髑髏の思出」
「県立病院の幽霊」
「警察医」
「本人の登場」
「手を下さざる殺人」
「保菌者」
「青葉街道の殺人」
「最後の犠牲者」
「殺されに来る」
「指紋の悔」
「うたがひ」
「通り魔」
「1×0=6,000円」
「湖畔劇場」
「お白狐(びゃっこ)様」
「生きてゐる女」
「背広を着た並びに」
「常陸山の心臓」
「美女君(ヘル・ベラドンナ)」
「紺に染まる手」
「蚊―病院太郎のその後」

 収録作は以上。ぶっちゃけ探偵小説としてはかなり低レベルである(苦笑)。
 作品自体はいくつかアンソロジーで読んだことがあって、それほど印象にも残っていなかったのだが、こうしてまとめて読むとその弱点がまざまざと浮かび上がってくる。
 トリックが弱いとか、プロットが粗いとか、ストーリーがいまひとつとか、そういうレベルではない。もっと根本的なところが問題。不如丘はもしかすると探偵小説の肝というか面白さを理解していなかったのではないかという気がするのである。
 「なぜ、そんなところで終わる?」、「なぜ、説明をしない?」、「なぜ、テーマを途中で変える?」、読んでいてここまで釈然としない探偵小説はなかなか久し振りである(苦笑)。とにかく読者が探偵小説に求めるものをまったくわかっていないといえばいいか。まだ探偵小説そのものがはっきりと定着していない時代ということもあるだろうが、乱歩や不木、雨村などは当たり前のようにツボは押さえていたしなぁ。これは探偵小説音痴といってもいいのかもしれない。
 評論家の中島河太郎も「本質的に探偵作家ではない」とか「探偵小説的構成からみたら脆弱」とか「腰砕けに終わっている」とか、過去に散々なコメントを残しているが、これは特に氏が辛口なのではなく、実際そんな感じなのだからしょうがない。

 そんななか多少なりとも印象に残ったものを挙げると、「県立病院の幽霊」と「殺されに来る」。
 「県立病院の幽霊」はタイトルどおり病院に出没する幽霊をめぐる物語。マスコミの攻撃や動揺する職員に真っ向から対立する院長の存在が面白く、真相もまずまず。ただ、ラストで院長にかけられるトラップの意味がまったくわからないのは困りもの。こっちが読み落としている可能性もあるが、いや、これは著者の説明不足だよなぁ……。
 「殺されに来る」は、年に一度村へやってくる薬売りが実は、という設定がうまい。村の男とは違い、垢抜けて口も上手い薬売りである。村の娘から慕われるが、村の男どもは当然それが面白くない。しかも薬売りにはどうやら裏の顔もありそうで、という辺りまでは実に引っ張る。ただ、これも途中から方向性が怪しくなって、真相はけっこう面白いのだけれど、その驚かせ方の段取りがぐだぐだ。もう少しストーリーを練れば、これは悪くない作品になったはずだ。

 ということで、かなり否定的な感想になってしまったが、こういうのも含めてクラシックの探偵小説を読む楽しみである。腐してはいるが同時に面白がって読んでいる自分もいるわけで、傑作ばかりが読書ではないよね、というのが本日のまとめ。

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