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 『岩田賛 空想科学小説集』を読む。盛林堂ミステリアス文庫からの一冊。クラシックミステリのマニアをも唸らせる魅力的な本を次から次へと出してくれる盛林堂ミステリアス文庫ではあるが、この本も相当きている。
 岩田賛は戦後間もない頃に登場した本格探偵小説の書き手である。鮎川アンソロジーなどをはじめとして意外にアンソロジーには多く採られているが、探偵小説のほとんどはデビューから三、四年の間に書かれたもので、それ以後はほぼ児童向けに移行している。どういう心境の変化だったのかは知らないが、その結果、岩田賛の著作は大人向け探偵小説より、児童向けの探偵小説、冒険小説、SF小説の方が多いらしい。
 本書『岩田賛 空想科学小説集』は、そんな児童向けの中からSF系のものをセレクトした一冊である。どうせ出すなら大人向けの探偵小説にしてくれよとは思ったが、考えたらそちらは論創社で刊行予定があるらしいので、これはこれでありか。

 岩田賛 空想科学小説集

「ロケット衛星アン・ブレーク」
「水星人(マーキュリアン)第7号」
「夜光人ガニメーデ」
「飛行魔人」
「5万年後の世界へ」
「カメレオン島の秘密」
「月船の不思議な乗客=百年後の宇宙旅行=」
「地底の火星人」
「消えた火星ロケット」
「宇宙船ただいま発進」

 収録作は以上。「カメレオン島の秘密」のみ長編で、あとはすべて短篇である。
 昭和二十年代後半から三十年代半ばにかけて発表されたもので、比較的異星人の侵略モノが多い。枚数も短いものばかりで、物語を盛り上げようにも紙面の関係上なかなか難しいとは思うのだが、それでもワンアイディアで強引にまとめているのはえらいものだ。突飛な出来事に関して、とりあえずすべてを説明しておこうという著者の真面目なスタンスも好感が持てる。

 まあ、逆にこのぐらいの短さだから、今でもそれなりに楽しんで読めるというのはある。本書中、唯一の長編である「カメレオン島の秘密」はかなりのボリュームで、正直きつかった(苦笑)。
 「カメレオン島の秘密」は、原子力の戦争利用を恐れた科学者たちが密かに原子力の研究を続けているカメレオン島が舞台。そこに案の定、原子力を悪用しようとする悪人組織がやってきて……という一席。
 児童向けゆえ、山ほどあるツッコミどころはとりあえず脇に置いておくとして、カメレオン島でのドンパチが終わったのに、結局、悪党が逃げてしまって、他の場所で再びドンパチが始まり、それを二度三度と繰り返されるのはさすがに閉口した(苦笑)。

 しかし、岩田賛の大人向け探偵小説のほうをそもそも三、四作ぐらいしか読んでいないのに、ジュブナイルのSFを先にこんなに読んでいいものだろうか。どう考えても脳内イメージが変な方向に固まってしまいそうなので、こうなれば論創社さんには一刻も早く『岩田賛探偵小説選』を出してもらいたい。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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