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 原口隆行の『鉄道ミステリーの系譜』を読む。「2017年度第17回本格ミステリ大賞」の評論・研究部門にもノミネートされた、鉄道ミステリーに焦点を合わせた評論・エッセイ集である。

 鉄道ミステリーの系譜

 鉄道ミステリー縛りという内容がやはり新鮮で、これまでありそうでなかったジャンル研究本である。著者はベテランの鉄道ジャーナリスト、版元も鉄道・交通系の専門出版社・新聞社ということで、ミステリにどこまで寄せた内容なのか気になるところだったが、これが予想以上にミステリ寄りで驚いてしまった。まあ、確かにそうでなければ本格ミステリ大賞にノミネートされることもないだろうから、当然といえば当然か。

 だが、十分にミステリ寄りではあるのだけれど、「交通新聞社新書」という新書で出たことからもわかるように、内容はそれほど濃いものではない。その中身は、古今東西の鉄道ミステリのあらすじ紹介でほぼ占められており、ミステリ者からするとそれなりに便利は便利なんだけれど、特別驚くほどの話はない。
 著者と版元が見据えているのはやはり鉄道・交通ファンであり、その人たちに新たな鉄道の楽しみ方を提案しているというのが、本書の本質だろう。鉄道には撮り鉄とか乗り鉄とか、マニアにもいろいろなスタイルがあることは知られているけれど、さしずめ本書は“鉄道ミステリによる読み鉄のススメ”といったところだろう。

 だから、本書についてはあまりミステリ側からどうこう言う本でもないと思うのだが、個人的に惜しいなと思う点をふたつほど挙げておこう。
 まずは紹介する作品が古今東西とは書いたが、やや時代的に狭いところ。海外ものは黄金期、日本ものは西村京太郎どまりなので最近のものはほぼ扱っていない。そのかわり日本ものなどはけっこうマニアックなものもあって(先日読んだばかりの丘美丈二郎とか)、このバランスが不思議である。著者の好みかな?
 もうひとつの注文は、鉄道がミステリのなかでどういうふうに活かされているのか、その分類ぐらいはほしかったところ。
 単に雰囲気を盛り上げるギミックなのか、それともアリバイなどのトリックに用いられているのか、鉄道ミステリといっても作品によってその扱いはさまざま。そこで読者の興味も大きく分かれるところなので、そういう解説はガイドブックの類であったとしても必要だったのではないだろうか。

 まあ、そんな感じで注文はあるけれども、こういう本が出ること自体は好ましいので、次はぜひミステリ側からも企画されることを期待したい。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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