Posted in "国内作家 笹沢左保"
- Category: 国内作家 笹沢左保 07 17, 2023
- 笹沢左保『泡の女』(徳間文庫)
- 笹沢左保の『泡の女』を読む。初期の代表作の一つとして知られ、『本格ミステリ・フラッシュバック』でも紹介されている一作である。 まずはストーリー。東京地方統計局に勤務する木塚夏子のもとに、突然、茨城県警から連絡が入った。夏子の父、重四郎が大洗海岸で縊死体となって発見されたという。夏子は職場結婚した夫の達也を呼び出し、二人で茨城県へ向かった。 ところが後日、重四郎の死因に不審なところがあり、達也が殺...
- Category: 国内作家 笹沢左保 06 19, 2023
- 笹沢左保『シェイクスピアの誘拐』(徳間文庫)
- 「トクマの特選!」から笹沢左保の短篇集が出たので読んでみる。ものは『シェイクスピアの誘拐』。 少ないながらこれまで読んだ笹沢左保の短篇集では、何らかの趣向を凝らした連作短篇集の方が面白い気がする。各短篇の出来は多少低買ったとしても、全体を通した仕掛けで楽しませてくれるところがあるからだ。 本書は連作短篇集ではないので、そういう意味での仕掛けこそないものの、きちんとテーマを持たせた短篇集となってい...
- Category: 国内作家 笹沢左保 02 26, 2023
- 笹沢左保『アリバイの唄』(講談社文庫)
- 「トクマの特選!」が順調そうで何よりだが、今度は『アリバイの唄』が予定されているとのことで、ひと足お先に手に取ってみた。こちらは講談社文庫版である。 こんな話。元警視庁捜査一課の刑事だったタクシー運転手、夜明日出夫(よあけひでお)。ある夜のこと、彼がアベック客を乗せると、女性の方が三週間後に殺害される。被害者のメモから、夜明の幼馴染で逗子の豪邸に一人で暮らす大町千紗が容疑者として浮上する。しかし...
- Category: 国内作家 笹沢左保 01 25, 2023
- 笹沢左保『もしもお前が振り向いたら』(講談社文庫)
- 笹沢左保の『もしもお前が振り向いたら』を読む。作者の作品は改題が多いことでも知られているが、本作もその例に漏れず、初刊行時は『後ろ姿の聖像』という題名だったが、これが『もしもお前が振り向いたら』→『魔の証言』と変更されてきた過去がある。 そして、なんと来月発売される徳間文庫「トクマの特選!」版では、『後ろ姿の聖像~もしもお前が振り向いたら』となるようだ。まさか合わせ技で来るとは(笑)。 まずはス...
- Category: 国内作家 笹沢左保 01 07, 2023
- 笹沢左保『セブン殺人事件』(双葉文庫)
- 笹沢左保の『セブン殺人事件』を読む。新宿淀橋署の宮本刑事部長と本庁の佐々木警部補の二人を主人公にした連作短篇集である。 収録作は以下のとおり。「日本刀殺人事件」「日曜日殺人事件」「美容師殺人事件」「結婚式殺人事件」「山百合殺人事件」「用心棒殺人事件」「放火魔殺人事件」 宮本刑事部長と笹木警部補、二人の刑事を主人公にしたところがミソ。二人は年齢も見た目も刑事としてのキャリもまったく正反対である。...
- Category: 国内作家 笹沢左保 11 30, 2022
- 笹沢左保『結婚って何さ』(講談社文庫)
- もうすぐ「トクマの特選!」から笹沢左保の『結婚って何さ』が復刊されるというので、積ん読から掘り出してひと足早く読んでみた。 こんな話。上司の嫌がらせに怒って会社を辞めた遠井真弓と疋田三枝子。やけ酒とばかりにハシゴを続けるうち、行きずりの男と意気投合して最後は旅館に泊まって酔い潰れる。ところが翌朝、起きてみると男は絞殺死体となっていた。怖くなった二人は警察に届けず、そのまま逃げようとするのだが……。...
- Category: 国内作家 笹沢左保 11 28, 2022
- 笹沢左保『アリバイ奪取 笹沢左保ミステリ短篇選』(中公文庫)
- 笹沢左保の短篇集『アリバイ奪取 笹沢左保ミステリ短篇選』を読む。笹沢左保は長編のみならず短編も数多く書いてきた作家で、短篇集だけでも百冊以上の著書があるという。本作はそんな短篇集から初期の傑作をセレクトしてまとめたもの。最近、マニアックなミステリ短編集を出している中公文庫、しかも編者は日下三蔵氏ということで、期待できる陣容である。 まずは収録作。「伝言」「殺してやりたい」「十五年は長すぎる」「お...
- Category: 国内作家 笹沢左保 07 29, 2022
- 笹沢左保『他殺岬』(光文社文庫)
- 笹沢左保の他殺岬』を読む。管理人の手持ちは古本で買った光文社文庫版だが、少し前に「トクマの特選!」でも新装版が発売されたばかり。誘拐ものの代表作として知られる一作である。 美容業界の大物・環千之介が自殺した。さらにその後を追うようにして、後継と目されている娘の環ユキヨも足摺岬から身を投げる。 きっかけは女性週刊誌のスクープ記事だ。彼らの詐欺的な美容商品がすっぱ抜かれ、そこから過去の不祥事も明るみ...
- Category: 国内作家 笹沢左保 03 29, 2022
- 笹沢左保『真夜中の詩人』(角川文庫)
- 笹沢左保の『真夜中の詩人』を読む。なんと誘拐もので、『本格ミステリ・フラッシュバック』にも取り上げられていた著者の代表作の一つ。誘拐ミステリにはなんとなく佳作傑作が多い気がするが、本作もその例に漏れない。 こんな話。老舗デパート「江戸幸」社長の孫・三津田和彦が誘拐されるという事件が起こる。和彦はまだ生後十二ヶ月ほどの幼児。しかし、犯人からの連絡はあったものの、なぜか身代金などの要求はなかった。程...
- Category: 国内作家 笹沢左保 03 20, 2022
- 笹沢左保『暗鬼の旅路』(徳間文庫)
- 笹沢左保の『暗鬼の旅路(『暗い傾斜』改題』)』を読む。以前コメント欄でくさのまさんからお勧めいただいたもの。 こんな話。太平製作所の若き女社長・汐見ユカは、素人発明家の三津田に二千万円を投資し、空中窒素の固定化を研究させていた。ところが株主総会で研究が失敗だったことが明らかになり、ユカもその責任を取らざるを得なくなる。悪いことに、二千万円はユカが個人的に大株主の矢崎から借りたものであり、さらには...