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 L・P・ハートリーの『ポドロ島』を読む。著者は英国の怪奇小説の名手であり、アンソロジー等ではよく見かける名前である。日本での著書はこれ一冊のようだが、予想以上に面白いというか変わった味わいの短編集でなかなか楽しめた。
 収録作は以下のとおり。

Podolo 「ポドロ島」
The Travelling Grave「動く棺桶」
Feet Foremost「足から先に」
A Change of Ownership「持ち主の交代」
The Thought「思いつき」
The Island「島」
Night Fears「夜の怪」
The Killing Bottle「毒壜」
A Summons「合図」
W.S.「W・S」
The Pampas Clump「パンパス草の茂み」
Pet Far L'Amore「愛し合う部屋」

 ポドロ島

 基本的には怪奇小説といっていいのだが、ミステリ系あり奇妙な味ありで、実は一概にはこういう作風だといいにくい作家である。
 その理由は収録されている作品をいくつか読めばすぐに理解できるはず。

 たとえば表題作の 「ポドロ島」 の場合、小島にゴンドラでやってきた夫婦と案内人の話なのだが、途中で捨て猫らしきものを見かけた奥さんが、何者かに襲われ命を落とす。夫と案内人は必死で逃げ帰るのだが、この妻がいったい何者に襲われたのか実は最後まで明らかにされない。
 これが島に隠れていた殺人鬼であればミステリやサスペンスと読めるであろうし、あるいはモンスターなら怪奇小説というふうに捉えられるだろう。それを明示せず、そのまま読者を煙に巻くようなことを、この著者は本作にかぎらず頻繁にやるわけである。

 ストーリーを読者の想像に委ねる、あるいは著者の狙いを絞らせない。一作や二作ならともかく執拗にこの種の書き方にこだわるハートリーは、おそらく相当な技巧派である。とにかく何を描くかというより、読者をいかにして不安にさせるかということの方が重要で、ある意味、読者に対して仕掛ける心理小説といってもいいかもしれない。
 そのための仕掛けが絶妙にブレンドされており、数作読めば、相当いい感じに酔えることは間違いない。反面、度数が高いので口に合わない人も多そうだが(苦笑)。

 最後にマイ・フェイヴァリット。上で紹介した「ポドロ島」 、殺人マシーンの存在がむしろ滑稽に思えてそれこそ著者の狙いがぴんとこない「動く棺桶」 、分身ものでありメタフィクションでもある名作「W・S」 、幻想小説らしさではイチ押しの「愛し合う部屋」 あたりか。
 このレベルならもう一冊どこかで短編集でも組んでくれると嬉しいのだが。ううむ、古い作家だから難しいかな。


テーマ:幻想文学 - ジャンル:本・雑誌



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