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 乱歩関連の書籍がこの一、二年でずいぶん出版された。2016年に乱歩の著作権がフリーになった影響が大きいのだろうが、2017年以降でも、集英社文庫の『明智小五郎事件簿全十二巻』の完結や岩波文庫での『江戸川乱歩作品集I〜III』があり、なかには意表を突いてまんだらけから出版された変わり種『吸血鬼の島 江戸川乱歩からの挑戦状―SF・ホラー編』なんていうのもある。
 さらには小説だけでなく、関連書が多いのも乱歩ならでは。同じく2017年以降に出たものをざくっとリストアップしただけでも以下のようなものがある。

『怪人 江戸川乱歩のコレクション』(新潮社 とんぼの本)
内田隆三『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』(講談社選書メチエ)
中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』(集英社)
平山雄一『明智小五郎回顧談』(ホーム社)
中相作『乱歩謎解きクロニクル』(言視舎)
多賀新 『江戸川乱歩 幻想と猟奇の世界』(春陽堂書店)

 評論はもちろん、ビジュアル系に二次創作と実に幅広い。管理人は乱歩マニアというわけでもないが、それでもこのあたりは面白そうだからすべて買っているわけで、やはりミステリファンにとって乱歩の魅力は抗いがたいものがある。
 先日、ようやく明智小五郎ものの再読がひと区切りついたので、今度はこちらのノンフィクション系もぼちぼちと読み進める予定である。

 乱歩と正史

 とりあえず今回はその中から内田隆三の評論、『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』をチョイス。
 著者はミステリの評論もいくつか書いているが、本業は社会理論や現代社会論ということで、本書でのアプローチもやはり普通のミステリ評論とは少々異なる。自身の専門である社会論を活かし、乱歩と正史が活躍した戦前から戦後の社会的な背景を踏まえて、それが作品にどのような影響を与えていったかという形で展開する。
 昭和に入り、都市が発展していくというのはどういう意味をもっていたのか、そこから人々の生活様式や興味がどのように移り変わっていったのか、そして乱歩と正史はそういう変化をどのように作品の中に取り込んでいったのか。そういった分析を著者は主要な作品をとりあげて論考する。

 結果的には作品論として成立する一冊だが、さすがに目新しい解釈は少ないものの、作品ひとつひとつに対するアプローチは力が入っており読みごたえは十分。
 なかでも乱歩による「経済学の視点」、一方の正史は「民族誌の視点」という解釈などは面白く、正史の作品が「家」や「習俗」といった要素との関係で語られたり、「死者の意志」による犯罪云々というのはなるほどという感じである。ミステリという観点からやや離れたところで語られるというのは、乱歩はまだしも、正史はけっこう珍しいのでその意義は小さくない。ファンなら一度は目を通しておいて損はないだろう。
 ただ、総じて乱歩にページが割かれすぎであり、正史の戦前作品や後期の作品群にあまり触れられていないのは残念だった。タイトルからすると、日本が誇る探偵小説界の二大巨頭を対比することも目的のひとつなのだろうから、構成のバランスの悪さは惜しいところだ。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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