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 本日の読了本はアメリア・レイノルズ・ロングの『死者はふたたび』。先月に読んだ本邦初紹介の『誰もがポオを読んでいた』に引き続いての一冊。

 私立探偵のダヴェンポートは、「溺死した夫の名前を名乗る男が現れたので調査してほしい」という依頼を受ける。死亡したはずの夫は映画俳優のブルース。依頼人は妻のリンダである。
 指定されたホテルに赴いたダヴェンポートだったが、リンダはそこで「男はやはりブルースだった」と話し、依頼を取り下げられてしまう。納得のいかないダヴェンポートだったが、夫妻をよく知るキンケイド医師から思いもよらない秘密を打ち明けられる。実はブルースの生死は彼の遺産の行方が大きく影響するため、ブルースを名乗る男はそのために雇われたのではないかというのだ。
 あらためてキンケイドによって依頼を受け、調査を再開するダヴェンポートだったが、遺産相続に関係する女性と車にいるところを襲われ……。

 死者はふたたび

 『誰もがポオを読んでいた』の解説で、著者は“貸本系アメリカンB級ミステリの女王”である、みたいなことが書かれていて、思わず納得するぐらいの面白さはあったが、本作もけっこう頑張っている。

 前作とは一変して、こちらでの主人公は私立探偵。しかも軽ハードボイルド調の一人称というスタイルである。したがってストーリーとしては一本道ながら、名乗り出た映画俳優が本物かどうかという興味に加え、殺人事件の犯人探しもあるため、決して単調な感じにはならない。むしろプロットは意外に凝っていて、しっかり構成されているという印象である。
 ラストはスレたミステリマニアなら予測の範囲内だろうが、うむ、貸本をメインに書いていた作家さんがこれだけやってくれれば十分でしょ。

 惜しむらくは軽ハードボイルド調というそのスタイル。“軽”という但しは付くにしても、文章が平易すぎること(つまりキザさが足りない)、主人公の言動がけっこう日和っていることについては、ハードボイルドとしてはかなり不満が残る。ハードボイルドは内面も重要だが、実はスタイルこそ第一義だったりするわけで、そういう意味では残念である。
 まあ、この点についても貸本系B級ミステリということであれば、そこまで目くじら立てることではないのだけれど。

 ということで不満もあるが、全体としてはよくできた作品である。他の作品も紹介されれば、ぜひ続けて読んでみたいところだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 アメリア・レイノルズ・ロングの『誰もがポオを読んでいた』を読む。
 本作が本邦初紹介となるアメリア・レイノルズ・ロングだが、本格黄金期のちょい後ぐらいにデビューした本格ミステリの書き手である。もちろん読むのは初めてになるのだが、面白いのは解説に書かれた「貸本系アメリカンB級ミステリの女王」というキーワード。
 日本でも1950年代(昭和三十年前後)に貸本文化が栄えた時代があり、それ専門で活躍する作家も少なくなかったのだが、なんと英米でも1930〜40年代にかけて貸本が流行し、同様に貸本中心で活躍する作家がいたらしい。当時、英米の貸本小説で流行っていたミステリは、連続殺人やオカルト趣味、猟奇殺人などセンセーショナルなものが中心だったようで、このあたりはけっこう日本とも共通するところがあるかもしれない。
 まあ、そんな業界事情の中、人気を誇っていたのがアメリア・レイノルズ・ロングであり、本作もまた不気味な連続殺人を扱う内容となっている。

 こんな話。フィラデルフィア大学大学院でエドガー・アラン・ポオをテーマにした文学セミナーが行われることになった。ポオの研究者として名高いルアク教授のもと、聴講生として集まったのは現役院生ばかりでなく、ミステリ作家や教師、音楽家、図書館員など多彩な面々。
 そんなある日、教授はあるとき聴講生の一人がポオ直筆の詩「ユーラルーム」の完成稿の写しを偶然発見したことを知り、大学で買い取らせることにする。ところが写しが偽物ではないかという噂が流れたばかりか、それが盗難にあい、さらには殺人事件まで発生し……。

 誰もがポオを読んでいた

 大学を舞台にした連続殺人で、趣向はすこぶる魅力的だ。ただの連続殺人ではない。なんとポオの作品をネタにした見立て殺人である。「アモン・ティラードの酒樽」、「マリー・ロジェの謎」、「モルグ街の殺人」……という具合で、これにポオの手稿の盗難事件も絡めてくるあたり、興味をつないでいくテクニックはなかなか上手いものだ。

 もちろんポオの諸作品を読んでいるとより楽しめることは確かだが、基本的には見立て殺人と認識することが重要なので、必ずしも各作品をすべて読んでいる必要はない。ポオというモチーフを使ってはいるが文学的アプローチのようなものではなく、あくまで演出のための材料という感じである。ポオの手稿が本物かどうかというネタにしても、けっこう軽い処理だったりするし、そこは逆にちょっと残念なところでもある。

 こういったアプローチのライトさは他の点でも同様である。ミステリとしても本格とはいえガチガチのロジカルなものではないし、連続殺人を扱う割には語り口も全然シリアスではなく極めてライト。ひと昔前のアメリカの青春映画のようなノリといえばわかりやすいか。
 要はかなりライトな通俗ミステリなのである。これは別にけなしているのではなく、そういった意味ではまさしく貸本小説の王道だし、過度な期待さえしなければ、充分に楽しめる一冊といえるだろう。
 論創海外ミステリではすでにもう一冊、著者の本が出ているので、こちらも近いうちに。


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